概要
胎児期のPCBs及びダイオキシンへの暴露により、健康な幼児のT-細胞リンパ球の数が変化する。これらの変化が幼児期以降も続くのかどうか、及び、PCBs及びダイオキシンへ暴露したことが就学前児童の感染症あるいはアレルギー性疾患の罹患率、及び体液性免疫質と関係があるかどうかについて調査した。
調査対象はオランダの健康な母親とその子ども207組である。胎児期のPCBs及びダイオキシンへの暴露については、母親の血漿中のPCBs 118, 138, 153, 180 の総合計量で、また授乳中の乳児については 母乳中のダイオキシン、プラナー、及びモノ-オルトPCB等価毒性(TEQ)レベルによって推定した。42月齢では血漿中のPCBにより推定した。
感染症及びアレルギー性疾患の評価については、両親へ質問票を出し、また予防接種後の流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、麻疹(はしか)、風疹に対する抗体レベルにより体液性免疫質を測定した。子ども85人のグループでは、リンパ球の免疫監視マーカー分析を行った。
胎児期にPCBに暴露すると、就学前児童のリンパ球、T-細胞、CD3CD8+(細胞毒)、CD4+CD45RO+(メモリー)、T-細胞受容体(TcR) β+、CD3+HLA-DR+(活性)T-細胞の数が増大し、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)と麻疹(はしか)の抗体レベルが低下する。胎児期のPCBへの暴露は呼吸障害(ゼイゼイいう息切れ)にはほとんど関係ない。
現在の体内のPCB負荷は、中耳炎や水痘の罹患率を高めるが、アレルギー性反応にはあまり関係がない。
ダイオキシンの等価毒性(TEQ)が高いと、咳、胸部充血、痰(たん)に関する罹患率が高くなる。
結論として、オランダの就学前児童については、 周産期にPCB及びダイオキシンに暴露すると幼児期まで影響があり、感染症への罹患率が高くなる。早い時期に通常の感染症にかかるとアレルギーになることを防ぐので、PCBに暴露してもアレルギー性疾患を引き起こすことはない。
(訳:安間 武)
キーワード
アレルギー性疾患、抗体レベル、授乳、感染症、白血球数、PCBs, PCDDs, PCDFs.
allergic diseases, antibody levels, breast-feeding, infectious diseases, leucocyte (sub)populations, PCBs, PCDDs, PCDFs.
報告者
Nynke Weisglas-Kuperus,1
Svati Patandin,1
Guy A.M. Berbers,2
Theo C.J. Sas,1
Paul G.H. Mulder,3
Pieter J.J. Sauer,1
HerbertHooijkaas,4
- Department of Paediatrics, Division of Neonatology, Erasmus University and University Hospital/Sophia Children's Hospital, Rotterdam, The Netherlands
- Department of Clinical Vaccine Research, National Institute of Public Health and the Environment, Bilthoven, The Netherlands
- Institute of Epidemiology and Biostatistics, Erasmus University,Rotterdam, The Netherlands
- Department of Immunology, Erasmus University and University Hospital, Rotterdam, The Netherlands
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