「シップリサイクルシステム構築に向けたビジョン(案)」に関する
当研究会意見(パブリックコメント)


化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
安間 武
掲載日:2009年3月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/iken/2009/090321_shiprecycle_comment.html

 国土交通省パブリックコメント 「シップリサイクルシステム構築に向けたビジョン(案)」に対する当研究会の意見をに提出したので掲載します。

当研究会意見(pdf版)
■参考資料

「シップリサイクルシステム構築に向けたビジョン(案)」についての意見


国土交通省海事局船舶産業課国際業務室 御中
化学物質問題市民研究会
安間 武
〒136-0071 東京都江東区亀戸 7-10-1 Z ビル 4階
電話:03-5836-4358
ac7t-ysm@asahi-net.or.jp
1.意見公募の期間と時期に関する意見

(1) 行政手続法によれば原則として30日以上の意見提出期間を定めて広く一般の意見を求めるとなっているのに、本件意見提出期間は3月10日〜3月22日の13日間ときわめて短い。このような短期間では国民が意見公募を知り、意見提出のために対象を十分に検討することはできない。特に問題のあるシップリサイクル条約(案)の検討は、13日間では到底できない。

(2) IMOのシップリサイクル条約が本年5月採択予定であるにもかかわらず、わずか2ヶ月足らず前に、条約の採択とその発効前後までに集中的に対応すべき課題を整理した「短期的ビジョン」の意見を求めており、意見公募の時期をこの時期まで遅らせた理由が理解できない。

(3) このような短い意見提出期間と条約採択間際の意見募集時期から判断すると、国は国民に対する情報提供と国民の意見の政策への反映をまじめに考えているとは思えない。短い意見提出期間と条約採択間際の意見募集の理由を明確に説明願いたい。

2.シップリサイクルシステム構築に向けたビジョン(案)に対する意見

2.1 解撤現場の労働者の健康と環境の保護を第一とすべきこと

 解撤現場の労働者の生命、健康、安全及び環境の保護は、産業権益の保護よりもはるかに重要であり、解撤国の産業構造及び管理能力の如何にかかわらず、すべてに優先させるべきである。そのためには労働者の生命、健康、安全及び環境に有害影響を及ぼす可能性のある要因をその源から除去することが必須である。
 途上国の貧しい人々に、貧困を選ぶか危険を選ぶかという選択をさせてはならない。どちらも容認できない。貧困問題は先進国及び途上国が一体となって解決すべき世界の最重要課題であるが、その解決のために人々の生命、健康、安全及び環境を犠牲にしてはならない。
 短期的ビジョンで「リサイクル条約がバーゼル条約に比して規制の実効が上がることは自明」としているが、労働者の生命、健康、安全及び環境を守る観点からはバーゼル条約の理念の方がはるかに優れている。
 下記をビジョン及び条約に織り込むべきである。

(1)労働者の生命、健康、安全及び環境を著しく脅かすビーチング方式は完全に禁止すること。

(2)汚染者負担の原則に基づき、解撤用船舶はアスベスト、PCB類、フロン類、重金属類、残渣油などの有害物質及びバーゼル条約 附属書[ A表に掲げられる有害廃棄物を事前浄化し、除去した後でなければ輸出できないようにすること。
 この事前浄化は解撤労働者の生命、健康、安全及び環境を守るためだけでなく、条約案が船舶リサイクル施設から離れた所で行うさらなる処理や廃棄は条約対象としていないので、有害廃棄物輸出とならないようにするために必須である。

(3) インベントリー作成の対象となる有害物質は、ビジョン案に掲げられた搭載禁止・制限の4物質及びその他の9物質だけでは不十分である。少なくともバーゼル条約 附属書[ A表に掲げられる有害廃棄物を含むこと。

2.2 シップリサイクルの国際的なスキームを再構築すること

 船舶解撤を全て市場原理に任せて途上国の労働者の生命、健康、環境の犠牲に依存するという現状のリサイクル市場のシステムは容認されるべきではない。安全な船舶解撤を確保するための国際的な仕組みを再構築すべきである。

(1)解撤現場の検定と監査を実施する国際的な独立機関を設立すべきである。

(2)汚染者負担の原則に基づき、船主及び船主国がコストを負担する義務的な基金メカニズムを設立すべきである。義務的な基金は、港湾手数料、義務的な保険スキーム等を通じて、船舶のIMO登録又は船舶の全ライフタイムを通じての操業に関連付けて賦課することで実現すべきである。

(3)わが国の外航船の約80%()が利用しているといわれる便宜置籍船システムは、便宜置籍船の解撤に関わる責任の所在をあいまいなものにしている。便宜置籍船国はインフラ整備、技術力、法整備、人材、資金などが十分ではない可能性があり、インベントリー作成、有害物質/廃棄物の事前浄化などを含む船舶解撤に関わる実施及び管理能力を十分に期待することは難しく、また本来、便宜置籍船システムはそのような責任を求められるシステムではないはずである。便宜置籍船のリサイクルに関する責任は実質的な船主/船主国が負うことを明確にすべきである。

:2009年3月26日の国交省との面談時における説明ではもっと多く、日本の支配外航船約2000隻のうち日本の旗艦は80隻足らずで、残りは便宜置籍船とのことである。

(4) 国内の解撤施設の整備拡充を行い、内航船だけでなく外航船の解撤も国内で実施する政策とすべきである。今後、解撤船舶量は増大するが条約が求める基準を満たす解撤場が逼迫することへの対応としても必要である。

2.3 その他ビジョン案及び条約案に求めること

 解撤現場の労働者の生命、健康、安全及び環境の保護を実現するために、所定トン数以上の全ての解撤船舶にリサイクル条約を適用すべきである。

(1) 国家自身が所有する商船以外の船舶、戦艦なども例外とすることなく、シップリサイクル条約及び本件ビジョンの対象とすべきである。

(2) シップリサイクル条約の締約国と非締約国との間の解撤を目的とする船舶の輸出入は明示的に禁止すべきである。これは、非締約国によるダンピングによるシップリサイクル条約の基準を満たさない船舶解撤を許さないとする締約国の強い意志を示すためにも必要である。

以上



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