家電リサイクル法見直しに向けた市民意見

化学物質問題市民研究会
掲載:2007年9月27日
修正:2007年12月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/iken/2007/Recycle_Iken_070926.html


 現在、環境省及び経済産業省の合同委員会において、家電リサイクル法の見直しが行われています。
 当研究会は、他のNGOからの呼びかけに応じ、添付に示す「家電リサイクル法見直しに向けた市民意見」(pdfファイル添付)の内容に基本的には賛同できるので、賛同団体として名を連ねました。

 家電リサイクル法見直しに向けた当研究会の基本的な考え及び提案は下記の通りです。

■当研究会の基本認識

 指定4品目に関してリサイクルを促進し、廃棄物の削減と資源の有効利用を図ることを目的に制定された家電リサイクル法は、下記の点が大きな問題である。
  1. 廃家電4品目総数の半分近くが見えないフローとして法に基づく回収ルートから外れ、不法投棄や海外流出の原因となっている。
      環境省資料:現在の家電リサイクルの流れ
      http://www.env.go.jp/council/03haiki/y030-44/ref04.pdf

  2. 廃家電4品目総数の約4分の1が海外に流出している。
      環境省資料:使用済み家電のフロー推計
      http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70731a10j.pdf

  3. 廃家電やパソコンは、再使用を目的とする"中古品"であると申告すればバーゼル条約の対象とならず、"新品"と同じ輸出上の区分番号(HSコード)が振られ、機能検査が行われることもなく、途上国に自由に輸出することができる。

  4. 中古品名目で海外に輸出された廃家電が実際には再使用(リユース)されずに、劣悪な作業環境の下に、資源回収(リサイクル)されており、人の健康と環境を損なっている。
     ・中国の広東省グイユ及びナイジェリアのラゴスの例:
      バーゼルアクションネットワークのビデオ報告
      (日本語版DVD 『危害の輸出:アジアで処分されるハイテクごみ』
     ・中国の江蘇省泰州市(Taizhou)及びガーナのアクラの例:
      ナショナルジオグラフィック誌(英語・電子版) 2008年1月号
      http://ngm.nationalgeographic.com/ngm/2008-01/high-tech-trash/carroll-text.html

  5. 海外に流出している廃家電が中古品名目で輸出されても、再使用不可として貨物返送が発生している。
      環境省資料:使用済家電の不適正な輸出事例について
      http://www.env.go.jp/council/03haiki/y0311-05/mat02_4.pdf

■当研究会が提案する家電リサイクル法改正の骨子

 家電リサイクル法見直しにあたり、法に基づく回収ルートからはずれる"回収業者へのルートをなくす"ために、下記の点を家電リサイクル法に導入することを提案する。

  1. 回収の費用は、製品購入時に払う(前払い)、又は製品価格に含める(内部化)。

  2. 購入者は、購入時に一定金額を預け(デポジット)、購入者(排出者)が法の仕組みにそって排出した場合には、デポジットが戻る仕組みとする。これにより排出者から廃品回収業者へのフロー(見えないフロー)を排除し、法に基づく回収ルートへのフローにインセンティブを与えることができる。

  3. 対象廃電子電気機器を家電4品目から音響機器、OA機器、照明機器、厨房機器まで拡大する。

  4. 国内処理原則を明記する。

  5. 廃電子電気機器のリユース(中古品)基準を作成して基準を満たすもののみ中古品として認定する。基準を満たさないものは全て廃棄物と定義する。これにより透明な中古品市場を国内に確立することができる。

  6. 廃電子電気機器の輸出にあたっては、中古品基準を満たしたもの、あるいは輸出前に中古品基準と同等の機能検査を実施して合格したもののみを中古品として輸出できることとし、それ以外のものは全てバーゼル条約対象の有害廃棄物とする。

  7. 輸出中古品には新品と識別できる輸出上の区分番号(HSコード)を設ける。

 上記に示す当研究会の考えに照らし、下記の「家電リサイクル法見直しに向けた市民意見」に賛同します。



中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会家電リサイクル制度評価検討小委員会
産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会 電気・電子機器リサイクルワーキンググループ
合同会合委員各位

2007年9月26日

家電リサイクル法見直しに向けた市民意見
PDFファイル

 私たちは、廃棄物の削減と資源の有効活用に向けて活動する市民団体です。このたびの家電リサイクル法の見直しにおいて、以下のとおり、意見を申し上げます。

○ 施行に対する評価と課題
・ 製造業者、小売店、消費者らの努力で構築されてきた家電リサイクル法のシステムが、指定4品目に関してリサイクルを促進し、廃棄物の削減と資源の有効利用に貢献してきたことは一定の評価はできる。
・ しかしながら、対象品目、回収・支払い方法等について、消費者の観点から、
@ 法の仕組みから外れた廃家電が増加している
A 対象や処理方法がわかりにくい
B 3Rの優先順位にそった対策が不十分
C 透明性の確保が不十分
といった課題が残されており、その解決に向けた法改正を期待したい。同時に、限りある資源を有効活用する社会システムの構築へのたえざる努力が必要である。

○ 見直し案
A.拡大生産者責任(EPR)の徹底と抜け道の防止
A-1. 将来的に、収集運搬・リサイクル費用の支払い方法を、製品価格への内部化方式に見直すこと。そうすることにより、製品の製造業者等がリサイクルしやすい製品設計をした場合に、直接製品の価格にその成果を反映でき、かつ、環境負荷が低く、省資源型の製品設計が促進される。
また、そのような手法を採用することで不法投棄等への誘因が減り、法の仕組みに乗ってリサイクルされる廃家電の増加が見込まれる。
A-2. A-1.に加え、さらに、廃家電の回収率を高めるために、デポジット制度等の経済的な手法を導入すること。
A-3. 買い替えではなく、単純に廃棄される家電については、当面の措置としては排出者の負担により、市町村がその回収・運搬について協力する義務を負うこと。
A-4. 法54条を改正し、市町村が収集した場合、製造業者への引渡しを原則義務化すること。
A-5. 地域の小売店の負担を軽減するために、製造業者等の協力で、市町村のストックヤードの活用を可能とすること。
A-6. 回収された廃家電は国内において再資源化されることが原則である旨を明記すること。
A-7. リユースと偽った海外への廃家電の輸出防止対策を強化すること。

B.より多くの品目の家電をリサイクルすること
B-1. 法2条4項の「特定家庭用機器」の定義を変更する。具体的には、同項四号から「配達による」円滑な収集の要件を削除する、もしくは、同項四号を満たさなくても、政令で指定できるものとすること。
更に、同項五号として、「当該機械器具が廃棄物となった場合における再商品化等に係る安全性の面における影響のあるもの」を追加すること。
その上で、電子レンジなどより多くの家電を「特定家庭用機器」として指定すること。
B-2. 製造業者は、回収されたものについて一定のリサイクル率を達成する義務を負うことだけにとどまらず、販売し、廃棄されたより多くの家電について、回収・再資源化する責任を負うものとすること。

C.リデュース(発生抑制)、リユース(再使用)の促進
C-1. 目的(1条)及び基本方針(3条)に、循環型社会形成推進基本法の定める3R の優先順位に従い、リサイクルだけでなく、より壊れにくく修理もしやすい製品設計を行い、進んで再使用することを盛り込むこと。
C-2. 地域の小規模小売業者を活用するなどして、身近に修理サービスを受けられる環境を整備し、消費者が製品を長期間使用することを促すなど、各主体が採るべき施策を明記すること。

D.透明性の向上
D-1. 法52条を改正し、製造業者の主務大臣への報告を定期的に行うことを義務付すること。その上で、主務大臣は当該報告結果を公表し、必要がある場合は是正できるシステムを構築すること。

以上

国際環境NGO FoE Japan
東アジア環境情報発伝所
化学物質問題市民研究会
市民がつくる政策調査会

市民意見に関するお問合せ先
 国際環境NGO FoE Japan(担当:瀬口)
 〒171-0014京都豊島区池袋3-30-8 みらい館大明1F
 tel: 03-6907-7217 fax: 03-6907-7219 E-mail seguchi@foejapan.org



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