2004年5月
ルイビル憲章:より安全な化学物質のために
革新を通じて安全で健康な環境を作るための枠組み

情報源:The Louisville Charter for Safer Chemicals, May 2004
A Platform for Creating a Safe and Healthy Environment through Innovation
http://www.louisvillecharter.org/thecharter.shtml

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年4月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/louisville/Louisville_Charter.html

なぜルイビルか?
 アメリカのケンタッキー州ルイビルは、”ゴムの町(Rubbertown)”として知られる地域にあり、そこには年間数百万ポンド(数百トン)の有害物質−ケンタッキー州の総有害物質排出量の3分の1−を大気に放出する11の産業施設がある。周囲の共同体は60%がアフリカ系アメリカ人である。2004年5月、ルイビル市は、不必要な有害化学物質への暴露から人の健康と環境を守るための化学物質政策とキャンペーンのために共に活動することを共通の目標とする団体と個人のネットワークの会議を主催した。参加者らはルイビル市に敬意を表してルイビル憲章と名づけ、国中及び世界中の共同体が有毒化学物質の汚染を終わらせることを約束した。


 子ども、労働者、共同体、及び環境を守るために、現状の化学物質規制の抜本的な改正が必要である。我々は、我々を支える健康と自然を保護するために市場と政府の行動を変えさせなくてはならない。

 まず第一に、我々は最も危険な化学物質を廃絶し、より安全な代替物質を開発し、高いリスクにさらされている共同体を保護し、有害な化学物質の生成に責任ある人々が我々の健康と環境に与えたダメージを修復するための全てのコストを負うことを確実にするために行動しなくてはならない。

 新らたなより安全な化学物質、製品、及び製造システムを設計することにより、我々は人々の健康を守り、健康で持続可能な雇用を作り出すであろう。いくつかの先導的会社はすでにこの方向に歩み出している。彼らは、クリーンで革新的な技術を使用して、安全な製品と新たな雇用を創出している。しかし、市場全体を変革するためには政策の変更が必要である。安全で健康な地球環境を作り出す第一歩は、我が国の化学物質政策を大きく変革することである。下記のような変革が必要である。

(訳注:Background Paper #1〜#6 は今後、機会があれば順次翻訳の予定)

  • より安全な代替と解決を求めることBackground Paper #1
     製造プロセスを替え、より安全な化学物質に代替し、製品とシステムを再設計し、革新に報い、製品の機能を再検証することによって有害化学物質の使用と排出を廃絶するよう求めること。より安全な代替には、公共及び民間部門に対し持続可能な化学物質、製品材料及びプロセスの研究と開発に投資する責任が含まれる。

  • 残留性、生体蓄積性、又は高い有毒性の化学物質を廃止することBackground Paper #2
     分解が遅い、我々の体内又は生物組織に蓄積する、又は人間又は環境に非常に有害な化学物質の廃止を優先すること。アメリカで廃止された化学物質は他の国に輸出されないことを確実にすること。

  • 公衆と労働者に完全な知る権利と参加を与えることBackground Paper #3
     化学物質に関する決定において公衆と労働者に意味のある参加を与えること。化学物質(chemicals)と物質(materials)を開示し、製造され、使用され、排出され、輸出された化学物質の量をリストにして示し、公衆及び労働者に化学物質の危険性、用途、及び暴露情報へのアクセスを与えること

  • 早期の警告に行動を起こすことBackground Paper #4
     未来へ配慮して行動すること。危害が存在するという確かな証拠があれば、たとえその正確な特性と危害の程度に関してある不確実性が存在したとしても、新規の又は既存の化学物質から危害を防ぐこと。

  • 全ての化学物質に包括的な安全データを求めることBackground Paper #5
     市場に出ている又は市場に出される化学物質について製造者はその化学物質についての安全情報を公開しなくてはならない。その情報は、ハザード、用途、及び暴露情報を含んでおり、人の健康と環境に対する化学物質の安全性を合理的に評価することができる十分な情報でなくてはならない。

  • 共同体と労働者を保護するために迅速行動を起こすことBackground Paper #6
     共同体と労働者が健康に害を及ぼすレベルの化学物質に暴露した時には、それらの暴露を排除するための行動を速やかに起こすことが必要である。我々はどのような人々も不均衡に化学物質の暴露を受けることがないよう確実にしなくてはならない。

 これらの改革のそれぞれを実施するための期限が設定されなくてはならない。これらの改革は全て、公衆の健康と環境を保護できていない30年前の古い化学物質管理システムの改革に向けてのの第一歩である。ルイビル宣言を実施し、より安全な化学物質とプロセスの革新を約束することにより、政府と企業はより健康な経済と社会に向かう道へと導くであろう。


ルイビル憲章賛同団体リスト(Endorsers of the Louisville Charter for Safer Chemicals



化学物質問題市民研究会
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