EPA ニュースリリース 2022年8月26日
EPA は、特定の PFAS 化学物質類を人々の健康を守るために
スーパーファンド法の下で有害物質として指定することを提案

CERCLA の下で PFOA と PFOS を指定することは、透明性、説明責任を改善し、
リーガン長官の PFAS 戦略的ロードマップの実現を果たす

情報源:EPA News Releases August 26, 2022
EPA Proposes Designating Certain PFAS Chemicals as
Hazardous Substances Under Superfund to Protect People's Health

Designating PFOA and PFOS under CERCLA would improve transparency,
accountability, and deliver on Administrator Regan's PFAS Strategic Roadmap
https://www.epa.gov/newsreleases/epa-proposes-designating-
certain-pfas-chemicals-hazardous-substances-under-superfund


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年9月19日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/epa/220826_
EPA_Propose_Designating_Certain_PFAS_Chemicals_as_Hazardous_
Substances_Under_Superfund_to_Protect_Peoples_Health.html



 【ワシントン】 − 環境不正義に取り組み、公衆健康を改善するというバイデン・ハリス政権の公約に従い、米国環境保護庁 (EPA) は、レーガン長官の PFAS 戦略的ロードマップ訳注1)の下に、”永遠の化学物質”としても知られる特定の PFAS によってもたらされる健康リスクから人々や地域社会を保護するために重要な行動をとっている。 EPA は、「スーパーファンド法」としても知られる、包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)(訳注2) の下で、最も広く使用されている 2 つの PFAS を有害物質として指定することを提案している。この規則制定は、これらの有害な化学物質の放出に関する透明性を高め、汚染を浄化する責任を汚染者に持たせるのに役立つ。

 この提案は、パーフルオロオクタン酸 (PFOA) 及びパーフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS) に適用され、それらの塩及び構造異性体を含み、PFOA 及び PFOS が人間の健康、福祉、又は環境に重大な危険をもたらす可能性があるという重要な証拠に基づいている。 PFOA と PFOS は人体に長期間蓄積して残留する可能性があり、実験動物及びヒトの疫学研究からの証拠は、PFOA 及び/又は PFOS への暴露ががん、生殖、発達、心血管、肝臓、及び免疫学的影響につながる可能性があることを示している。

 ”地域社会は、これらの永遠の化学物質への暴露に、あまりにも長い間苦しんできた。本日発表された行動は、透明性を向上させ、EPA の PFAS 戦略的ロードマップで概説されているように、この汚染に立ち向かうための EPA の積極的な取り組みを前進させるであろう”と EPA 長官マイケル・リーガン(Michael S. Regan)は述べた。”この提案された規則の下で、EPA は地域社会を PFAS 汚染から保護するのを支援し、汚染者にその行動の責任を負わせるよう努める。”

 PFAS 汚染の多くの既知及び潜在的な発生源は、すでに汚染で過負荷になっている地域社会の近くにある。最終決定がなされたなら、規則制定により PFOA 及び PFOS 放出の報告が開始され、公衆の健康を保護し、より良い廃棄物管理を促進するために、改善されたデータと、浄化を要求し浄化費用を回収する選択肢を当局に提供する。

 それはまた、EPA、州、部族国家(Tribal nation)、及び地域社会による国中の PFOA 及び PFOS 汚染の範囲と場所に関する理解を向上させ、すべての地域社会がこれらの潜在的に危険な化学物質との接触を回避又は削減するのに役立つ。

 EPA は、大量の PFOA と PFOS を製造し、環境に放出した人々の責任を追及することに重点を置いている。 EPA は、汚染によって気づかずに影響を受けた可能性のある少数当事者の公平性を確保するために、裁量権の行使及びその他の方法を使用する。 EPA はまた、提案された規則の検討中に、影響を受ける地域社会、廃水処理施設、企業、農家、及びその他の関係者から意見を聞くために、さらなる支援活動と関与を行うことを約束する。

 この指定が確定したなら、報告義務量又はそれを超える PFOA 及び PFOS の放出は、国家対応センター、州又は部族の緊急対応委員会、及び地方又は部族の緊急計画委員会に報告する必要がある。これら又はその他の有害物質の放出は、必ずしもその浄化、又は国家優先リスト (NPL) へのその汚染場所の追加、又は、責任又は強制措置の必要性につながるとは限らない。 EPA は、最終規則が PFOA 又は PFOS を取り扱う施設によるより良い廃棄物管理及び処理慣行を促進することを期待している。放出の報告は、民間資金による浄化を加速し、人間の健康と環境への潜在的な悪影響を軽減する可能性がある。

 さらに、提案された規則は、特定の状況では、EPA が潜在的に責任のある当事者から浄化費用を回収すること、又はそのような当事者に浄化の実施を要求することを許可することにより、汚染者に支払いをさせることを促進する。さらに、財産を譲渡又は売却する連邦機関は、敷地内の PFOA 又は PFOS の保管、放出、又は処分についての通知と、結果として生じたすべてのものを片付けたこと、又は将来そのようにすることを保証する誓約 (証書におけるコミットメント) を、 CERCLA 120(h) の下で要求されるように、必要に応じて提供する必要がある。

 EPA は、今後数週間以内に連邦官報に提案された規則制定の通知を発行する予定である。EPA は、発行後 60 日間のコメント期間に提出されるコメントを歓迎する。

 その後の措置として、EPA は本日の提案に対するコメント期間の終了後に、他の PFAS 化学物質類をスーパーファンド法(CERCLA)下の有害物質として指定することについてパブリック コメントを求める事前通知を発行する予定である。

 本日の行動は、バイデン・ハリス政権の PFAS 汚染対策飲料水の保護、特に EPA の 2021年 10月の PFAS 戦略的ロードマップ(訳注1)の取り組みにおける重要なマイルストーンを表している。ロードマップの下で、EPA は、PFAS の健康への影響から公衆を保護するために、機関全体で取り組んでいる。 EPA は、PFAS の進捗を実現するために、次のような多くの措置を講じてきた。

  • 4種の PFAS に関する飲料水の健康勧告を発表−利用可能な最善の科学を使用して PFAS 汚染に取り組み、公衆の健康を保護し、重要な情報を迅速かつ透明性を持って提供すること;

  • バイデン大統領の超党派インフラ法を通じて、10億ドル(約 1,400億円)の助成金を利用可能にすること;

  • 国家 PFAS テスト戦略の下で、最初の有害物質管理法 PFAS テスト命令を発行すること;

  • 浄化が必要かどうかを判断するために EPA が使用する 5 つの PFAS 地域スクリーニング及び除去管理レベルを追加すること;

  • PFOA 及び PFOS に関する水生生物の水質基準の草案を発行すること;

  • 水質浄化法で許可されている PFAS に積極的に対処するためのメモを発行すること;

  • 全吸着性フッ素排水法(total adsorbable fluorine wastewater method)の新たな案を公表すること;

  • 29 種の PFAS が国内の飲料水系で検出される頻度とそのレベルについての EPA の理解を深めるために、第5回未規制汚染物質監視規則を発行し、2022 年末までに PFAS 国家飲料水規制の提案の準備をすること;


訳注1:包括的な戦略的ロードマップ
訳注2:スーパーファンド法
  • スーパーファンド法【米国】(EIC 環境用語 作成日 | 2003.12.03  更新日 | 2009.10.14)
     米国で1978年に起きた「ラブキャナル事件」を契機に制定した「包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)」(1980)と「スーパーファンド修正および再授権法(SARA)」(1986)の2つの法律を合わせた通称。
     汚染の調査や浄化は米国環境保護庁が行い、汚染責任者を特定するまでの間、浄化費用は石油税などで創設した信託基金(スーパーファンド)から支出する。浄化の費用負担を有害物質に関与した全ての潜在的責任当事者(Potential Responsible Parties:以下PRP)が負うという責任範囲の広範さが特徴的。
     PRPには、現在の施設所有・管理者だけでなく、有害物質が処分された当時の所有・管理者、有害物質の発生者、有害物質の輸送業者や融資金融機関を含む。これにより汚染の発生防止に寄与する一方で、資金が直接の浄化事業よりも裁判や調査費用につぎ込まれ浄化が進まない原因とも指摘される。
訳注:参考情報


化学物質問題市民研究会
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