EHNニュース 2021年7月20日
論説:PFAS と汚染を浄化するための
議会の取り組みの背後にある実話

ジム・ジョーンズ
元 EPA 高官のジム・ジョーンズは、議員らが PFAS 行動法を採用
しようとしている中、「永遠の化学物質」について事実をはっきりさせる。

情報源:Environmental Health News, July 20, 2021
The real story behind PFAS and Congress' effort
to clean up contamination: Op-ed

Former EPA official Jim Jones sets the record straight
on 'the forever chemical' as lawmakers take up the PFAS Action Act
By Jim Jones
https://www.ehn.org/congress-pfas-2653852713/
pfas-pfos-no-longer-used-in-commercel

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年7月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/ehn/ehn_210720_
The_real_story_behind_PFAS_and_Congress_effort_to_clean_up_contamination.html

 米国下院が今週、超党派の PFAS 行動法(PFAS Action Act)をとり上げると、一部の議員は、法案が PFAS の一部の使用を禁止すると主張するかも知れない。

 特に、議会の一部のメンバーは、「包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)」(訳注1)の下で PFOA 及び PFOS を「危険物質」として指定すると、医療機器、半導体、リチウム電池、そしてサージカルマスクでのこれら 2つの化学物質の使用が禁止されると主張する。しかしこれは正しくない

PFAS 及び PFOS は最早商取引で使用されない

 まず、PFOAとPFOSはもはや商業的に使用されていない。

 私は EPAの長官補佐として、化学業界との 2006年のスチュワードシップ協定(訳注2)の実施に関与し、このクラスのフッ素化合物のうち、これら 2つの化学物質の使用を段階的に廃止した。 簡単に言えば、この合意の結果、PFOAとPFOSはこれらの製品で使用されなくなったり、これらの製品を製造したりしなくなった。

有害物質

 第二に、化学物質を有害物質として指定しても、その化学物質は禁止されない。

 EPAの記録を簡単に確認すると、1980年に「包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)」が可決されて以来、議会によって有害物質として指定された化学物質の 80%近くが依然として商業的に使用されていることがわかる。これは、同法(CERCLA)が製造業者に化学物質の使用をやめることを強制していないためである。商業的に最も広く使用されている化学物質のひとつである硫酸は、40年以上にわたって有害物質として指定されている。有害物質として指定されている他の多くの化学物質は、医療機器を含む多くの製品で使用されている。

 CERCLAは、化学物質の使用ではなく、化学物質のクリーンアップ(後始末)を規制する。別の法令である有害物質規制法(TSCA)は、化学物質の使用を規定する。

PFAS と PFOA をクリーンアップするための重要なステップ

 簡単に言えば、議会でも、州でも、EPAでも、法律によって PFOA と PFOS を禁止しようとしている人は誰もいない。

 では、議会が PFOA と PFOS を禁止しようとしていないのなら、なぜ超党派の PFAS 行動法がそれらを有害物質として指定しているのであろうか。

 PFOA とPFOS を有害物質として指定することは、汚染された場所、特に国防総省の施設での浄化プロセスを加速するための取り組みにおける重要なステップである。

消火泡の汚染

 PFAS は、PFASで作られた消火泡が使用された 300以上の軍事施設の地下水で確認されている。議会は、2020年にこれらの PFAS ベースの消火泡の使用を終了するように国防総省に指示したが、これらの基地での受け継がれた汚染を浄化するための努力はまだ行われていない。 PFOA と PFOS を有害物質として指定すると、国防総省がこれらの汚染物質をクリーンアップの優先事項として確実に処理する。

 それだけが議会が PFAS 行動法を制定すべき理由ではない。 EPA は現在 PFAS を優先事項として扱っているが、常にそうであるとは限らない。遅延を防ぐために、PFAS行動法は、EPA が PFOA と PFOS の全国飲料水基準を最終決定し、PFAS の空気と水への排出を制限する期限を設定している。この法案はまた、EPAが他の PFAS を有害物質としてリストするかどうかを決定する期限を設定している。

PFAS:行動を起こす時

 多くのことが危機に瀕している。 PFAS は何千もの飲料水システムで検出されており、深刻な健康問題に関連している。化学会社と公衆衛生グループが PFAS 汚染に対処するための行動を起こす時が来たことに同意するのも不思議ではない。うまくいけば、国会議員も同意するであろう。

PFAS:誰に電話べきか

編集者注:2021年の PFAS 行動法は、ミシガン州デビー・ディングル議員によって、今週中に米国下院で議論される予定である。

 事実をはっきりさせ、議員らが私たちの環境を浄化するための取り組みを議論する時に最新の科学が考慮されていないという懸念を表明するには、共和党議員のキャシー・マクモリス・ロジャースとバディ・カーターに連絡してください。

 ジム・ジョーンズは、2011年から2017年まで、環境保護庁の化学物質安全及び汚染防止局の長官補佐(アシスタントアドミニストレーター)であった。

 表明された見解は彼自身のものであり、必ずしも EHN.org 及び DailyClimate.org の発行者である Environmental Health Sciences の見解ではない。


訳注1:包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)
  • 環境用語 スーパーファンド法【米国】
     米国で1978年に起きた「ラブキャナル事件」を契機に制定した「包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)」(1980)と「スーパーファンド修正および再授権法(SARA)」(1986)の2つの法律を合わせた通称。汚染の調査や浄化は米国環境保護庁が行い、汚染責任者を特定するまでの間、浄化費用は石油税などで創設した信託基金(スーパーファンド)から支出する。浄化の費用負担を有害物質に関与した全ての潜在的責任当事者(Potential Responsible Parties:以下PRP)が負うという責任範囲の広範さが特徴的。
訳注2:包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)


化学物質問題市民研究会
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