2007年7月
エンバイロンメタル・ディフェンス報告書 リチャード A. デニソン 高い望み 低い評価 高生産量化学物質(HPV)チャレンジ・プログラム 最終報告カード エグゼクティブ・サマリー他 情報源:Environmental Defense Report July 2007 High hopes, low marks: A final report card on the high production volume chemical challenge Richard A. Denison, PH.D. Senior Scientist, Health Program http://www.environmentaldefense.org/documents/6653_HighHopesLowMarks.pdf 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2007年7月27日 更新日:2007年9月17日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/usa/ed/ed_report_HPV_Challenge.html 内容 エグゼクティブ・サマリー はじめに この報告書には何があるのか HPVチャレンジの強みと限界 HPVチャレンジのいくつかの長所 HPVチャレンジのいくつかの短所 主要なHPVチャレンジの評価 HPVチャレンジ化学物質のスポンサーシップの程度 スポンサー・プログラムの約束の程度(初期及び最終) 初期の提出 最終の提出 スポンサーのつかないHPV化学物質のためにEPAが情報開発をさせた程度 EPAの初期提出のレビューの程度 スポンサーによる初期提出の品質の程度 提出された情報の公開性、修正の容易さ、利用性の程度 チャレンジを超えて:二つの重要なフォロー・ステップの状態 EPAのHPVチャレンジ・データの評価 新たに出現しているHPV化学物質 得られた教訓 チャレンジ・プログラムに対する化学産業界の人を欺く解釈 結論:チャレンジ・プログラムは成功か? 注釈 Appendix 1 Appendix 2 エグゼクティブ・サマリー 1年半前以上に完成しているべきであったのに、高生産量(HPV)化学物質チャレンジ・プログラムは約束通りに成果を引き渡すにはまだ程遠い。 このチャレンジ・プログラムは、アメリカで生産され使用されている高生産量化学物質によって及ぼされる潜在的なハザードに関し公に入手できるデータが欠如していると報告した米国立科学アカデミーの1984年の報告書をはじめとして、その後の一連の調査研究によって拍車をかけられ、1998年に立ち上げられた。これらの調査研究に対応して、また有害物質規正法(TSCA)の下で限定した権限しか与えられていないことを暗黙に自認しながら、EPAは自主的なチャレンジ・プログラムを立ち上げた。その目的は、高生産量(HPV)化学物質−アメリカで年間100万ポンド(454トン)以上製造または輸入されているもの−に関し、スクリーニング・レベルのハザード情報の”基本セット(base set)”を生成し、公に入手可能とするために製造者の協力を得ることであった。 このチャレンジ・プログラムは、市場に出ている比較的多くの化学物質に関する基本的なハザード情報を作成し、公開することを促進するための米環境保護庁(EPA)による体系的な取り組みである。このプログラムは、以前のどのような取り組みよりも短時間により多くの化学物質のための基本ハザード情報を作成し、公開しようとしており、それは、我々が広く使用している化学物質について知っていることと、知っているべきこととの間のギャップを埋めるために、アメリカでとられた最初の重要なステップである。 このチャレンジ・プログラムは自主的なものなので、製造者に化学物質のハザード・テストを実施させるのに必要なTSCA第4条の権限を行使するためにEPAが作成しなくてはならない面倒な調査を製造者が代わって実施するようなことはない。しかし、同じ理由でEPAもまた、製造者を完全に関与させるために、あるいは高生産量(HPV)化学物質のために開発されたハザード・データセットのタイムリーな提出と高い品質を確保しようとしても限定されたリソースしかもっていない。 ■ゴールに向かう進捗はノロノロしている 我々のHPVチャレンジ・プログラムの最終的な評価であるこの報告書は、化学産業が最終データ・セットを作成し提出しなくてはならない当初の2004年の期限よりも2年半以上後に、そしてEPAが全てのデータを公に入手できるようにしなくてはならない期限である2005年よりも18ヶ月後に、発表するものである。今日までに達成された進捗は認める一方で、我々の報告書はまた、チャレンジ・プログラムの完成期限に関わることだけでなく一般的に自主的な環境問題の取り組みについての設計と実行に関連する重大な欠陥と教訓(lessons learned)を特定している。 このチャレンジ・プログラムは、利用可能にすると約束したのにいまだにできていない、かなりの量のデータを背負ってヨタヨタと足を引きずってそのゴールに向かっている。しかしその中での主な成功は、高生産量(HPV)に該当する化学物質の大部分の製造者が実際に彼らの化学物質についてスポンサーとなること、すなわち、それらのハザード・データの基本セットを作成し、公に入手できるようにすることを約束することによって、このチャレンジ・プログラムを受け入れたということである。しかし、数百という多くの化学物質について、スポンサーは、これらの約束の達成の構成要素である二つの主要なマイルストーンのひとつ又は両方をいまだに満たしていない。
Figure 1 は、チャレンジ・プログラムで当初に導入された約2,800の高生産量(HPV)化学物質の状態を示している。 ■チャレンジ・プログラムの欠陥 直接的テストの代替への過大な依存 チャレンジ・プログラムの枠組みはスポンサーが、未発表のデータに依存すること及び推定手法やカテゴリー・アプローチのような新たなテストを行わない代替手法を適用することを許している。しかし、スポンサー対象化学物質の80%以上が提案されたカテゴリーに分類され、基本セットデータ要素の10%以下しか新たなテストが実施されないという、代替手法の過度な使用を行っている。 これらの提案のEPAとエンバイロンメンタル・ディフェンスのレビューは、スポンサーは代替手法に過度に依存する傾向があることを示唆している。我々の一方又は双方は、初期提出の大部分のデータのギャップを埋めるために提供されるデータ又は提案される手法について決して些細ではない懸念を抱いている。 提出データの品質低下 テスト計画とrobust study summaries の初期提出の平均的品質は、当初は非常によかったにもかかわらず、チャレンジ・プログラムの過程で、特に過去18ヶ月は、かなり低下している。 EPA レビューの遅れ EPAは初期提出のレビューが遅れおり、それがさらにチャレンジ・プログラムにおけるスポンサーの最終提出の遅れを助長している。 スポンサーのつかない化学物質のためのテスト・ルールの開発が遅い スポンサーのつかない”孤児”化学物質のためのデータ開発を強いるためのEPAのテスト・ルールの開発は極めて遅く、今日までにそのようなルールの対象となる孤児265物質のうち16物質(6%)しか開発されていない。 高生産量(HPV)データベース立上げが遅れている HPVデータの保管データベースであるEPAのHPV情報システムの開発が数年の遅れの後にやっと走りだしたが、それを定着させ、機能的にし、ユーザー・フレンドリーにするためには、なすべき多くのことが残っている。 新たに出現した高生産量(HPV)化学物質のスポンサーのつき具合が悪い チャレンジ・プログラムが立ち上げられて以来、製造量がHPVレベルに達したが600近くの新たに出現したHPV化学物質質の中で、化学産業界の延長HPVプログラム(Extended HPV Progra)を通じてわずか40%にスポンサーがついただけである。これらの化学物質について公開されるべきハザード・データの中に広範なギャップが存在する。このことは化学産業界は全てのHPV化学物質に関するハザード・データの生成と公衆のアクセスについて努力していないことを示している。 重要な次のステップの状態 EPAによってとられるべき重要な次のステップ−チャレンジ・プログラムの下に開発されたデータの品質と完成度の検証とHPV化学物質のハザードを評価するためのデータ使用−は今、始まったばかりである。初期の所見は、最終提出されるべきあるものはデータの品質上問題があり、まだデータギャップを含んでいるであろうということである。チャレンジ・プログラムの価値の最終的な測定は、もちろん、EPA、産業界、公衆がハザードとリスク削減を図るためにどの程度新たな情報を使用するかということである。 最近の数ヶ月、化学産業界の代表は残念ながら、今日までにチャレンジ・プログラムの下で達成された成功に言及し、今後なすべき相当な量の作業を認めるということではなく、むしろ、チャレンジ・プログラムの状況と、それが提供するデータがチャレンジプログラムの立上げの第一の理由であった重要な必要性、すなわこの国及び世界中で製造され使用されている数万の未評価のあるいは評価中の化学物質によって及ぼされるリスクを特定しそれに対応する社会の能力を確保すること−を満たす程度、の両方を歪めようとしている。我々の報告書の最後の節は、この調査の全体の目的チャレンジ・プログラムが何を達成し、何を達成しなかったかについての正直な評価を提供すること−を明確にしつつ、これらのチャレンジ・プログラムについての主張を論破するために向けられた。 Figure 2 は我々のチャレンジ・プログラムに対する産業とEPAの報告カードの形式での総合評価である。 FIGURE 2 高生産量(HPV)チャレンジ・プログラム報告カード
チャレンジ・プログラムに対する化学産業界の人を欺く解釈 チャレンジ・プログラムは不完全な状況であり、米国化学工業協会(ACC)は、プログラムの目的及び化学物質の評価と管理のために入手できる知識ベースを改善する方向への寄与に対する産業界の約束の遂行を立証する多くのことを今日までに成し遂げているはずであった。残念ながらACCはその代わりに、チャレンジ・プログラムが立ち上がる前及びプログラムの結果としての今日の両方に存在する知識の状態を取り囲む事実を歪曲することを選択した。 様々な形やフォーラムにおいてACCは現在、次のことを主張している。
チャレンジ・プログラムの化学物質について当初及び現在もある知識のギャップ
産業側は化学物質(HPV及びその他)が安全であると知ることが出来る十分な知識をすでに持っているというACCがほのめかす主張もまた支持することは出来ない。多くの数の化学物質を検証した政府のプログラムは、更なる評価又は管理を正当化するに十分な有害な特性を持っている多くの化学物質を一貫して特定してきた。たとえば:
結論:チャレンジ・プログラムは成功か? この報告書は、チャレンジ・プログラムの進捗は、相当な量のデータがいまだに入手可能ではなく、最終ゴールラインに向かって明らかにノロノロと進んでいる。当初チャレンジ・プログラムに含まれていた2,800近くの化学物質のうち、
さらに、
訳注(参考資料) エンバイロンメタル・ディフェンス関連資料
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