IISD 報告 2019年4月7日
国際化学物質管理会議(ICCM)に関する
公開作業部会第3回会合(OEWG 3)サマリー(抜粋)


情報源:
IISD Reporting Service, 7 April 2019
Summary of Third Meeting of the Open-Ended Working Group of
the International Conference on Chemicals Management
http://enb.iisd.org/vol15/enb15258e.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年4月10日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/oewg/OEWG3_IISD_Summary.html



化学物質の適切な管理2020年全体目標の達成に向けての進捗

2014年〜-2016年の期間の進捗報告

 4月2日(火)午後、事務局は、2014-2016年の期間の戦略的アプローチの実施の進捗に関する、全進捗報告書(SAICM/OEWG.3/INF/4)及び関連活動及び報告に関する多くの関係文書((SAICM/OEWG.3/INF/6, INF/7, INF/8, INF/17, INF/18, INF/22, INF/23, INF/26, INF/28 and INF/30)とともに、概要報告書、及び進捗の20の指標の分析(SAICM/OEWG.3/5)を発表した。ICCM5 議長ゲルトルート・ザーラーは、各国政府及び他の利害関係者からの提出が限られていたので、その進捗報告書は IOMC (化学物質の健全管理のための組織間プログラム)組織からのデータ提出のおかげを多大に被ったと述べた。。

 ザーラー議長は、進捗報告は進捗状況を明らかにし SAICM を強化するために重要であるが、彼女が地域会合で聞いた多くの SAICM 成功物語は、提出率が低いために、そのような報告書の中で十分には報告されなかったことに言及した。そのような報告は時間と労力ががかかるので、 ICCM5 に提出することが予想される 2017-2019 年期間の通例の進捗報告書の代替を検討しなくてはならないかもしれないことを示唆した。そして彼女は、活動の最新報告をするために 10 の IOMC 組織に対して OEWG3 に参加するよう招聘した。

(以下略)
新規の政策課題(EPIs)とその他の関連課題

 4月3日(水)午後、ザーラー議長は、 EPIs は長い間、 SAICM 活動の重要な要素であったと述べつつ、大部分の加盟国は、どのような2020年以降の枠組みであってもそれらが残ることに必ず同意するであろうと述べた。彼女は EPIs の進捗状況を把握するのが難しいことに言及し、それらに期限が定められていないことについて懸念を提起した。事務局は、海洋プラスチックごみ及びマイクロプラスチック、及び塗料中の鉛に関する補足報告書(SAICM/OEWG.3/INF/16 and INF/20)とともに、 EPIs 及びその他の関連ある課題に関する文書(SAICM/OEWG.3/6 and SAICM/OEWG.3/INF/9)を紹介した。ザーラー議長は、 OEWG3 は EPIs とその他の懸念ある課題に関する二つの側面に対応すべきと強調した。すなわち、今日までの進捗のレビューと 2020年以降の活動に適用するために学んだ教訓である。

 EU は、製品中の化学物質を例に挙げて、もっと大きな進捗が EPIs に関して必要であると述べた。彼女は、 EPIs に関する ICCM4 決議を実施する取り組みを強めるよう全ての利害関係者を励まし、世界的懸念の特定及び優先のための明確で詳細な基準及び、2020年以降、それらへの対応の仕方を求めた。

 アフリカ・グル−プは、 SAICM は広範な環境と健康影響にかかわる課題への行動の口火を切り、そのような懸念に対応するために 2020年以降のメカニズムについてのしっかりした議論を期待すると述べた。

 日本は、 IOMC 組織により実行される EPIs に関する活動はリソースの利用可能性に基づいて実行されるべきであり、 SAICM が”もっと積極的に”そのような作業の状況に関する情報をチェックし、広めることを要求した。

 スイスは、肯定的な事例としてナノテクノロジーに関する活動を引用しつつ、 EPIs を SAICM の中核機能として特徴づけた。彼は化学物質及び廃棄物に関連する現在及び新規の課題を特定するもっと体系的な方法、及び強化された科学−政策インターフェースを通じて、既存のそして可能性ある将来の世界的懸念の展開に関する定期的な更新を求めた。彼は ICCM5 による検討に間に合うよう、2020年4月30日までに本件に関する報告書を UNEP が提出するという第4回国連環境総会(UNEA4)の要求を歓迎した。

■塗料中の鉛

 化学物質の適正な管理についての組織間プログラム(IOMC)の代表として国連環境計画(UNEP)は、塗料中の鉛への暴露を低減する最良の方法は法律を制定することであることを研究が示しており、したがって新たな SAICM GEF プロジェクトは、関連法を制定しているさらなる 40か国の成果に向けて、また 7か国の少なくとも 35の中小塗料製造企業の製造プロセス中の鉛を段階的に廃止するための成果に向けて取り組むであろう。

 彼は 鉛塗料を廃絶するための世界同盟(Global Alliance to Eliminate Lead Paint)もまた、製造プロセスのあらゆる場所で塗料中の鉛を段階的に廃止するために企業とともに取り組むであろうと述べた。彼は諸国が法を制定する意図を述べるために OEWG3 を利用することを促した。

 IPEN は、もし厳格な法律が制定/施行されなければ、鉛塗料は広く入手可能のままとなるであろうことを参加者らに対して喚起した。彼女は、まだ規制法を立法していない国が 122か国もあるので、緊急の行動が必要であると述べた。

■製品中の化学物質

 IOMC を代表して UNEP は、中国と共同で、特に繊維製品製造者に向けて実施されている GEF 資金提供プロジェクトを強調した。彼はまた、他の GEF 資金提供プロジェクトは、政府と建築、電子機器、及び玩具の分野におけるバリュー・チェーン(価値連鎖)実施当事者が懸念ある化学物質を追跡し管理することを目指したと述べた。

 IPEN は、製品中の化学物質のデータ収集と健康リスクの低減に関する活動について述べたが、主要な障害は、民間企業が製品中の化学物質に関する情報を開示しないことであると述べた。IPEN、 EU に支援されたヘルス・ケア・ウイズアウト・ハーム(HCWH) 及びネパールのNGO 公衆健康・環境的開発センター(CEPHED)は、個々の製品のライフサイクル全体を通じて、全ての化学的成分の完全な開示が必要であると述べた。

 カナダは、サプライチェーンの透明性、能力構築、そして情報共有を支持した。ケニアは、サプライチェーンのあらゆる場所における製品中の化学物質に関する新たな国家規定を強調した。ヘルス・ケア・ウイズアウト・ハーム(HCWH)は、懸念ある化学物質のリストを作成したが、透明性がなければ、これらの化学物質を含有する製品を特定することができないと付け加えた。

■電気・電子機器製品のライフサイクル内の有害物質

 国連産業開発機構(UNIDO)を代表して国際労働機関(ILO)は、2016-2020 年の間の UNIDO 活動計画、並びにグリーン購入、環境を考慮した設計、及び製品ライフサイクルに沿った物質の追跡の推進に関する活動を述べた。

 タンザニアの責任ある開発のための環境アジェンダ(Agenda for Environment for Responsible Development of Tanzania) は、電子機器のライフサイクル中の有害物質の上流要素及び下流要素の両方を標的とするライフサイクル・アプローチへの行動を要求した。

 カナダは、特に発展途上国のための能力構築とともに、上流及びライフサイクル・アプローチに焦点を当てる SAICM の付加価値を強調した。

 コートジボアールは、非公式な業者集団にもっと厳しい目を向け、グリーン業者を励まし、国家政策を強化することを求めた。

■ナノテクンロジーと工業ナノ物質

 国連訓練調査研究所(UNITAR)は、この EPI に関して発表を行い、2009年以来なされた活動について述べ、ナノの安全に関する地域ワークショップを含んで将来の計画された活動を強調した。彼はまた、テスト・ガイドラインと、消費者及び環境的暴露を評価するための手法の開発に関する経済協力開発機構(OECD)の活動について述べた。

■内分泌かく乱化学物質(EDCs)

 OECD は、水生環境及び人の健康への有害性についてのテスト・ガイドラインを含む、この EPI に関する活動の概要を述べた。 IPEN は、 SAICM は EDCs に対応している唯一の国際フォラームであるとして、その重要性を強調し、その継続の重要性に言及した。

 ノルウェーは、将来に向けての優先事項として、知識共有、かく乱物質の特定、及び EDCs の表示要求を強調した。

 カナダは、 WHO, UNEP 及び OECD を巻き込んだ科学に関する活動の継続を強調した。

■環境残留性がある医薬汚染(EPPPs)

 IOMC を代表して WHO は、文書 SAICM/OEWG.3/6 で報告された EPPPs に関する展開を概説した。

  EU は、下記の中核的要素を含む医薬品汚染への戦略的アプローチを採択したと報告した。
  • 環境中の医薬品残留物からの潜在的なリスクに対応するためにとられるべき行動、又は調査
  • リスクに対応するための革新の奨励、及び水などの資源のリサイクルを推進することによる循環経済の促進
  • 知識のギャプの特定
  • リスクに対応するためにとられる行動は、人と動物のための主要な医薬品へのアクセスを危うくしないことを確実にすること
 環境のための国際医師協会(ISDE)は、ライフサイクル・アプローチから EPPPs に対応する必要性及び健康と環境への影響を低減するための行動を特定することを強調した。

 フランス水アカデミーは、退行性脳疾患に関連するかもしれない下水中の神経毒素の問題にもっと注目すべきことを喚起した。

 ヘルス・ケア・ウイズアウト・ハーム(HCWH)は、薬剤耐性(antimicrobial resistance )の問題を強調し、 ICCM5 が医薬品からの汚染を終わらせるためにライフサイクル・アプローチを通じて政策の選択肢を検討するよう求めた。

■過フッ素化合物((PFCs)

 OECD は、PFCs の代替物質に関するウェブナーを含んで、 UNEP と共催で世界過フッ素化合物グル−プの下に実施した活動、及び国家と地域のリスク低減措置の更新目録に関して報告した。彼は、PFCs の最近の更新リストは 4,000品目を超えるが、それらは個別ではなく、部類(クラス)として対応されるべきことが示唆されていると言及した。

  PFCs はその残留性のために、しばしば”永久の物質”と呼ばれ、ほとんどの人々が体内に PFCs を持っており、 PFC 使用は急速に拡大していることに言及しつつ、トクシック・リンク・インディアは、 部類(クラス)としてPFCs に対応するよう呼びかけた。彼は、SAICM 2.0 の下に、全ての本質的でない用途をある期限までに廃止するというような、期限目標を設定し、もしそれができないなら、本件に関する法的拘束力のある手段について協議するよう要求した。

 ノルウェーは、 PFCs の残留性、生物濃縮性、水生環境における移動性、及び高い修復コストのために、 PFCs の安全な代替物質への移行のための取り組み強化を求めた。

■非常に有害な農薬((HHPs)

 国連食糧農業機関(FAO)は、その戦略は HHPs のリスクを低減するための地域及び国家の計画に焦点を絞っていることを報告し、アフリカ及びアジア太平洋のプロジェクトについて述べた。彼女は可能性ある将来の行動は、 HHPs に関する知識ハブ及び、 SAICM 事務局と連携した HHPs に関する国際会議の組織を含むと述べた。

 農薬行動ネットワーク・インターナショナル(PAN International)は、 HHPs を主要な例として挙げつつ、 EPIs 及びその他の懸念ある問題に関する追跡のための明確なロードマップがないという懸念を強調した。彼女は、 HHPs を SAICM の主要な失敗として特徴づけ、 FAO はその問題のためのマルチステークホルダー・アプローチを組織することに失敗したと批判した。PAN ラテンアメリカは、家庭、庭園、及び学校を含んで、ラテンアメリカの至る場所での HHPs の使用を非難した。将来の世代のための環境教育協会( Association of Environmental Education for Future Generations)は HHPs に関する透明な情報が学校のカリキュラムに組み込まれ、子どもたちの保護のために法律の中で対応されることを求めた。

 ふたつの地域会合が、 HHPs に関してより深い行動と国家の立法の促進の必要性を示していたことに言及しつつ、ザーラー議長は、利害関係者らに HHPs に関する調整をもっと深め、それを持続可能な開発アジェンダと統合するよう励ました。



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