2012年6月26日 SAICM//ICCM.3/19
新規政策課題の新たな推薦

情報源:SAICM/ICCM.3/19, 26 June 2012
New nominations of emerging policy issues

http://www.saicm.org/images/saicm_documents/iccm/ICCM3/Meeting%20documents/iccm3%2019/SAICM_ICCM.3_19_EN.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年9月12日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm3/
iccm3_new_nominations_emerging_policy_issues.html

事務局によるノート

I. はじめに

1. 国際化学物質管理会議(ICCM)の機能のひとつは、国際化学物質管理への包括的方針戦略(環境省仮訳)の24(j)に規定されているように、新たな政策課題が生じ次第、関心を集め、適切な対処を求め、協力的な活動を行うための優先事項の合意を作り出すことである。

2. 2009年5月11〜15日にジュネーブで開催された2回会合(ICCM2)で国際化学物質管理会議は、新規政策課題に関する決議 II/4 を採択した。この決議の附属書は新規政策課題の検討のための手続きを記述している。そのプロセスは、開かれており、透明性があリ、事務局により促進され、全ての利害関係者が関与することとなっている。

3. 上記の手続きに従い、管理会議第3回会合における検討用に二つの課題が推薦された。内分泌かく乱化学物質に関する意識向上、理解、行動を促進するための国際協力、及び環境に残留する医薬品汚染である(後述のIII章を参照)。

4. 2011年11月14日〜18日にベオグラードで開催された第1回会合で管理会議の公開作業部会(OEWG)は、決議 II/6の 2 (a) 項に記述されている機能にしたがって二つの推薦された課題を検討し、決議 OEWG.1/4 A 内分泌かく乱化学物質、及び OEWG.1/4 B 環境に残留する医薬品汚染を採択した(附属書参照)。

5. 内分泌かく乱化学物質に関して、作業部会はこの課題を管理会議第3回会合の暫定的議題に含めることに関する合意に達することはできなかったが、合意できなかった部分をブラケットで囲んだテキストをつけて、決議 OEWG.1/4 A を管理会議に検討用に送付することに同意した。

6. 内分泌かく乱化学物質に関する意識向上、理解、行動を促進するための国際協力に関して作業部会により検討された提案中に記述されている行動は次のようにまとめることができる。

(a) 政策決定者及び化学物質リスク管理に責任ある人々が内分泌かく乱化学物質への曝露と影響を低減することに寄与することができる潜在的な措置を特定し勧告するのを支援するために、彼等に最新の情報と科学的専門的助言を提供すること。

(b) 意識向上をはかり、情報交換とネットワーキングを推進すること。

(c) 内分泌かく乱化学物質に関連する問題を評価するために、特に発展途上国及び移行経済国における能力構築のための国際的な支援を提供すること。

(d) 研究結果をそのような化学物質を規制するための行動に反映することに関し、情報交換に役立て、討議のフォーラムを立ち上げ、相互支援を提供できるようにするために、内分泌かく乱化学物質に特に関与している科学者、リスク管理者、その他の人々の国際的なネットワークを作り上げること。

7. 決議 OEWG.1/4 B で記述している環境に残留する医薬品汚染に関して、作業部会は提案中で述べられている行動のいくつかは、新規政策課題としてみなされるべき課題の基準に合致しないと考えた。しかし作業部会は、第3回会合後の管理会議によるこの問題の更なる検討の利点を認め、この提案をさらに展開するよう提案者に促した。

管理会議による可能性ある行動

8. したがって、管理会議は、既存の新規政策課題に対する現在の作業とその作業を完了させる必要性、及び2020年までに化学物質は人の健康と環境に及ぼす著しい有害影響を最小にするような方法で使用され製造されるという目標を達成することに対するこの課題の関連性を考慮して、ひとつの新規政策課題を検討したいと望むかもしれない。

9. 管理会議は下記を望むかもしれない
(a) 公開作業部会の決議を見直し、検討すること。
(b) ここに提案された内分泌かく乱化学物質に関する意識向上、理解、行動を促進するための国際協力に関する提案を見直すこと。
(c) 国際化学物質管理への戦略的アプローチの新規政策課題として、内分泌かく乱化学物質に関する意識向上、理解、行動を促進するための国際協力に関する提案を採択すること。

II. 新規政策課題を検討するための手続き

10. 戦略的アプローチの文脈から、新規政策課題の定義は、決議 II/4 の附属書に含まれており、管理会議による新規政策課題の検討のためのプロセスを記述している。したがって、新規政策課題は化学物質のライフサイクルのどの段階にも関わる課題として定義されている。それは第一に、一般的には認識されていない、十分には対応がなされていない、又は科学的情報の現状のレベルから生じる課題であり、第二に、人の健康及び/又は環境に著しい有害影響を及ぼすかもしれない課題である。

11. 上述の手続きに従い、新規政策課題の推薦は、それが検討されるべき管理会議会合の少なくとも18ヶ月前に提出されなくてはならない。管理会議第3回会合における検討課題の推薦締め切り期限は2010年11月30日であった。この手続きはまた、この課題を支持するために提出される最初の情報は、なぜそれが新規政策課題とみなされるべきかを説明し、その課題を推進するための提案される行動の記述を含めるべきであることを規定している。可能性ある行動は、決議 II/4 の附属書の4(b)項に提案されている。

12. 管理会議の第2回会合の後に事務局は、推薦手続きの詳細、新規政策課題の推薦に使用されるべき質問票、新規政策課題の検討に管理会議が従うべき措置の概要を含むガイダンスを準備した。

13. 新規政策課題を推薦するときに、提案者は決議 II/4 の附属書の2(b)項にリストされている基準を含む質問票を完成させる事になっている。これは下記を含む:
(a) 脆弱な集団及び、どのような毒性学的及び曝露データのギャップをも考慮して、問題の程度と人の健康と環境に及ぼす影響。
(b) その課題が他の機関により、特に国際的レベルで対応されている程度、及びそれがどのように関連付けられ、補足し、又はその作業が重複していないか。
(c) その課題について理解するにあたり、既存の知識と認識されているギャップ。
(d) その課題の分野横断的特性の程度。
(e) その課題への行動から得られる期待される成果に関する情報。

III. 推薦される新規政策課題

14. 管理会議第3回会合で新規政策課題の検討のために二つの課題が推薦された。

(a) 内分泌かく乱化学物質に関する意識向上、理解、行動を促進するための国際協力(国連環境]計画(UNEP))
(b) 環境に残留する医薬品汚染(環境のための国際医師協会)

15. 各提案者は、なぜそれが新規政策課題であると考えられるのかを記述しつつ、推薦した課題に関する質問票を完成させた。質問票は、提案書の見解ではいかにそれが新規政策課題の基準に合致しているかを説明しつつ、課題に関する短い記述を含んでおり、決議 II/4 の附属書の2(b)項に規定されている基準に対するその課題の評価を容易にすることを意図した情報を提供した。それぞれの提出書類はまた、推薦された新規政策課題を先に進めるときに考慮されるべき、提案される協働行動、又はそのような行動のオプションを、いかに提案された行動が推薦された課題に対応するかの根拠を含みつつ、述べていた。

16. 事務局は、推薦が合意された定義と基準に合致していることを確認し、戦略的アプローチ利害関係者は2011年4月30日までに推薦に関するコメントを提出するよう要請された。コメントは、3カ国の政府(マアガスカル、メキシコ、アメリカ)、ひとつの国際機関(世界保健機関(WHO))、及びひとつの非政府組織(国際POPs廃絶ネットワーク(IPEN))から提出され、戦略アプローチのウェブサイト(www.saicm.org)に掲載された。

17. 内分泌かく乱化学物質に関しては受領したコメントには下記の提案が含まれていた。

(a) 提案された協働行動は、既に実施されている活動の成果、もっと最近の科学的発見、及び規制、研究支援、財政構造に関する良い事例を反映するよう修正されるべきこと。
(b) 提案と包括的方針戦略とを関連付けること。
(c) 問題の程度と、子どもの脆弱性への影響について、彼等の脆弱性の特殊性をもっと正確に反映するよう磨きをかけること。
(d) WHOとUNEPの代理の専門家グループにより作成された内分泌かく乱物質の先端科学の世界的評価の更新を検討すること。それらは人の健康に関する更新された情報(WHOによる)、環境に関する問題(UNEPによる)、及び曝露についての情報(WHOとUNEP共同)を含むであろう。

18. 環境に残留する医薬品汚染に関して、受領したコメントには下記の提案が含まれていた。

(a) この課題は新規政策課題として含まれるべきこと。
(b) そのような医薬品汚染が環境媒体で生じるレベル及び、提案が議論した(例えば、混合物への曝露の累積影響、及び脆弱な又は過敏な集団の意図しない曝露など)あまりよく知られていない要素について検討されるべきこと。
(c) 世界行動計画に活動を追加するための別のプロセスに注意が払われるべきこと。
(d) 『飲料水中の医薬品に関する2011年WHO技術報告書』が検討されるべきこと。

19. 両方の提案に二つの政府が一般的なコメントをした。ひとつは管理会議によるさらなる検討を支援することを表明し、もうひとつは、現在リソースが限られているので、新たな課題を取り上げるより、既存の新規政策課題への作業を継続し完成させることに焦点を当てることがもっと適切であるというものであった。

20. 提案者らは、コメントを見直し、適切な場合には提出書類を修正した。利害関係者らは、2011年委開催されたSAICM地域会合の間に両方の推薦課題を議論し、両方はアフリカ地域会合及びラテンアメリカ・カリブ海地域会合で了承された。中東欧地域会合の利害関係者らは、他の地域と討議中であり、その立場を保留したが、彼等は原則として公開作業部会の第1回会合でこれらの課題を討議することに反対ではないと述べ、内分泌かく乱物質には懸念があると言及した。あるものは、管理会議第2回会合で特定された4つの新規政策課題に関する作業と調和を図ることを優先すべきであると述べた。新規政策課題の検討は戦略的アプローチ実施のための多くの重要な措置のひとつであり、新しい新規政策課題は他の戦略的アプローチの取り組みのリソース要求に注意を払って選定されるべきであることが示唆された。

21. 二つの推薦された新規政策課題に関する情報は、公開作業部会第1回会合の直前の2011年11月14日に開催されたテクニカル・ブリーフィングで提供された。新たに推薦された新規政策課題のための二つの提案を公開作業部会が検討した後作業部会は、内分泌かく乱化学物質に関する決議 OEWG.1/4 A と、環境に残留する医薬品汚染に関するる決議 OEWG.1/4 B を採択した。

22. 内分泌かく乱化学物質に関する提出書類の最終版は、SAICM/ICCM.3/INF/23である。


附属書(Annex)

決議 OEWG.1/4: 新たな新規政策課題
A
内分泌かく乱物質


公開作業部会は、

 パラグラフ23に記述されている通り、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを確実にするという持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画[1](外務省仮約)の包括的な目標に留意しつつ、

 国際化学物質管理への戦略的アプローチの非拘束的、自主的、及び多様な利害関係者という特性に留意しつつ、

 内分泌かく乱物質の人の健康と環境への潜在的な有害影響を認めつつ、

 とりわけ、包括的方針戦略(環境省仮訳)のパラグラフ 14 (b) で明らかにされているように、人と、生態系及び特に脆弱なその構成要素を保護する必要性を認めつつ、

 発展途上国と移行経済国の特別の必要性を考慮しつつ、

 政府間組織と民間組織、科学共同体と公益非政府組織、労働組合、医療分野を含む戦略的アプローチ利害関係者による継続的な取り組みを認めつつ、

 新たな新規政策課題として内分泌かく乱物質のための提案を検討しつつ、

1. [提案は新規政策課題の基準に合致することに同意し]

2. 情報普及と意識向上は特に適切であることを考慮し

3. 新規政策課題として内分泌かく乱化学物質と取り組むために必要なリソースを動員する時に、いくつかの諸国が直面する現在の困難を認め、

4. [国際化学物質管理会議の第3回会合での更なる討議の利点を認め、また管理会議が] [提案者が] 戦略的アプローチの利害関係者により実施されている作業を考慮して、事務局により本文パラグラフ5に含められた推薦される新たな新規政策課題オプション[2] [を考慮することを勧告する。] [を考慮するよう促す。]


B
環境に残留する医薬品汚染


公開作業部会は、

1. 新たな新規政策課題として環境に残留する医薬品汚染のための現在の提案中に記述されている活動のあるものは新規政策課題としてみなされるべき課題としての基準に合致しなかったことを考慮し、

2. 第3回会合の後で国際化学物質管理会議によるこの課題の更なる検討の利点を認め、提案者が提案の更なる展開をすることを促す。


脚注
[1] Report of the World Summit on Sustainable Development, Johannesburg, South Africa, 26 August.4 September 2002 (United Nations publication, Sales No. E.03.II.A.1 and corrigendum), chap. I, resolution 2, annex.

[2] SAICM/OEWG.1/14.



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