2012年9月18日 ICCM3におけるIPENの発言
資金調達
ジョー・ディガンギ(IPEN)

情報源:IPEN Intervention on Finance, 18 September 2012
given by Joe DiGangi, IPEN
http://ipen.org/iccm3/wp-content/uploads/2012/09/IPEN-Intervention-on-Finance.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年9月30日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm3/IPEN/IPEN_intervension_Finance_ICCM3.html


 議長、ありがとうございます。

 事務局及び UNEPのクイックスタートプロジェクト(QSP)理事会共同議長からの有用な報告書、並びに現在までのところ資金的に実施を支援して下さっている資金提供者に感謝します。

 IPENは、2020年目標を達成するために必要な化学物質安全のための活動規模に見合う長期的な資金メカニズムを強く支援します。他の人々と同様に、私たちは、このメカニズムのガバナンス面は明確にされ注意深く検討される必要があると信じます。国際化学物質管理会議(ICCM)は、SAICM資金調達への統合アプローチのための国連環境計画(UNEP)事務局長の提案(訳注:SAICM/ICCM.3/12)を具体化することに積極的に関与すべきです。

 先の発言者たちによリ提起された多くの点を繰り返す代わりに、UNEP事務局長の提案及び『世界の化学物質の展望(Global Chemicals Outlook)』(訳注1)の中で述べられている化学物質関連事項への資金調達のひとつの重要な面に対する私のコメントを提示したいと思います。

 『世界の化学物質の展望』は次のことに言及しています。
  • 化学物質の健康と環境への影響は深刻であり拡大している。
  • 化学物質曝露へのコストはしばしば十分に認識されていないが、莫大である。
  • 化学物質の製造、消費、及び処分に関連する人の健康のコストの大部分は化学物質製造者により負担されておらず、バリューチェーンでも分担されていない。
 これらの要素はひとつの方向を指し示しています。すなわち、これらのコストは、世界中でSAICM実施のための資金的支援のひとつの財源として化学産業から回収される必要があるということです。

 『世界の化学物質の展望』は、2010年における世界の化学産業の販売高は4兆ドル(約320兆円)以上であったと言及しています。4兆とはなんと大きな数字でしょうか? 4兆秒は12万年以上です。この巨額な金額の非常にわずかなパーセント、例えば0.1%でも、世界中の化学物質関連事項に対して40億ドル(約3,200億円)以上の資金源となります。

 一体全体、誰がこのお金を産み出しているのでしょうか? 『世界の化学物質の展望』は次のように述べています。

 OECDに拠点を置く会社が製造施設を非OECDにある会社の施設に投資しているので、世界の化学産業の拡大は、その多くが多国籍化学会社の出現により推進されている。

 この件に関する事務局長の提案は、資金調達への統合的アプローチの主要な面としての”産業の関与”を含んでいます。しかし報告書のこの部分では、産業からはお金はこないであろうという言い方で書かれています。

 特に報告書の第16項(訳注2)は削除される必要があります。この項は次のように述べています。

 ”統合アプローチへの産業の関与は、国際的な合意又はこれらの合意により確立された資金メカニズムを通じて管理することはできない。 (Industry involvement in the Integrated Approach cannot be governed through international agreements or financial mechanisms established by these agreements.)”

 このことは、産業は、どのような国際的合意に関連するどのような資金的責任からも絶対的に免除され、どのような資金メカニズムに関連するどのような責任からも全く免除されるということを言っているのです。

 事務局長の提案は資金を動員する道を見つけるということです。

 結論として:

 多国籍会社は、増大する化学物質の製造と使用の主要な金銭的受益者です。これらの会社は、主に富める国に拠点を置いていますが、一方自分達の市民と国の環境を保護するために適切にシステムを導入するために必要な財源と能力がほとんどない政府は、発展途上世界にあります。これは一方だけに利益をもたらす不均衡なシステムです。

 私たちは、産業が公平な分担を支払うべき時が来ていると信じます。

 どうぞ、私たちの見解をご検討ください。


訳注1
UNEP News Centre 2012年9月5日 化学物質により生じる増大する健康と環境ハザードを減らすために緊急の行動が必要である

訳注2
SAICM/ICCM.3/12
Integrated approach to financing the sound management of chemicals and wastes: draft proposal by the Executive Director of the United Nations Environment Programme
16. The financial resources brought by the involvement of industry to the chemicals and wastes agenda come through the relationship between each sovereign government’s use of their legal and administrative authorities and the private sector. Industry involvement in the Integrated Approach cannot be governed through international agreements or financial mechanisms established by these agreements.

参考:CONSULTATIVE PROCESS ON FINANCING OPTIONS FOR CHEMICALS AND WASTES



化学物質問題市民研究会
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