2012年9月24日 IISD Report
国際化学物質管理会議第3回会合(ICCM3)
概要:実施のための資金的及び技術的リソース


情報源:IISD, 24 September 2012
SUMMARY OF THE THIRD SESSION OF THE INTERNATIONAL CONFERENCE
ON CHEMICALS MANAGEMENT
17-21 SEPTEMBER 2012
Financial and Technical Resources for Implementation
http://www.iisd.ca/vol15/enb15196e.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年10月2日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm3/IISD/IISD_ICCM3_Summary_Resources.html


実施のための資金的及び技術的リソース

 実施のための資金的及び技術的リソースに関する項目は火曜日(18日)の総会で、またダニエル・ジーゲラー(スイス)とエルサ・ミランダ(インドネシア)を共同議長とするコンタクト・グループで火曜日(18日)から金曜日(21日)まで討議された。金曜日の総会で、会議は実施のための資金的及び技術的リソースに関する決議を採択した(SAICM/ICCM.3/CRP.19)。

 火曜日(18日)の総会で、実施のための資金的及び技術的リソースに関する文書(SAICM/ICCM.3/7)及びSAICMのための可能性ある長期的資金調達オプション(SAICM/ICCM.3/11)を紹介しつつ、事務局は、とりわけIOMC(化学物質の適正な管理に関する国際機関間プログラム)、UNEP、WHO により準備された関連報告書に言及した。OEWGにおける資金調達コンタクト・グループの共同議長グレッグ・フィリク(カナダ)は、化学物質管理の国家政策への主流;産業界の関与;外部基金のオプションに関する見解を強調した。事務局は、クイックスタートプログラム(QSP)の中期評価に関するQSP理事会の結論及び勧告、QSP報告書、及びQSP及びその信託基金の実施に関する報告書(SAICM/ICCM.3/8, SAICM/ICCM.3/9, SAICM/ICCM.3/23)を含んで、QSPに関連する文書を紹介した。QSP理事会共同議長ナゼレディン・ヘイダリ(イラン)は、ライフサイクルを通じての適切な化学物質管理を全ての関連する開発計画とプログラムで主流化することを促進する方法を検討すべきことを含んで、理事会のいくつかの勧告を強調した。

 UNEPは、UNEP事務局長の化学物質と廃棄物の適切な管理への資金調達に対する統合されたアプローチに関するドラフト提案(SAICM/ICCM.3/12)への積極的な対応に言及し;開発計画、産業の関与、及び外部資金調達への化学物質と廃棄物の主流化としての提案の3つの主要要素を記述し;UNEP事務局長のための次のステップがフィードバックを考慮し、第13回UNEP管理会議による検討のための報告書を完成させることであると会議(ICCM)に伝えた。

 地球環境ファシリティ(GEF)(訳注:外務省ウェブサイト)は、直接的貢献として関連プロジェクトに500万ドル(約4億円)、及び間接的貢献として水銀関連プロジェクト及び環境的に適切な電子廃棄物の管理に2,500万ドル(約20億円)に言及しつつ、SAICMの目的を遂行する方向への貢献を強調した。

 QSP(訳注:環境省資料)に関し、EUは適切な化学物質管理を国家開発計画の主流にすることを優先するよう求めた。長期的なSAICM資金調達に関して、彼は貴重な資金を増加させるためにGEFとのパートナーシップを歓迎し、GEFが専用の外部資金を運営するというUNEP事務局長の提案を支持した。ブラジルは、提案中の要素は外部資金調達を補うべきものであると強調しつつ、提案の中に外部資金調達と新たな資金メカニズムの創設を再び導入するよう促した。カナダは、UNEP事務局長の提案中で示唆されたような新たな統合化学物質及び廃棄物GEFフォーカル・エリアを設立することに反対した。

 IOMCは、QSPを新たな基金計画のひとつのモデルとみなすよう求めた。外部資金調達に関し、UNEP事務局長の提案の下で、基金は、2020年目標に向けての取り組みを支持する活動に特化すべきであると彼は強調した。

 GRULAC(ラテンアメリカ・カリブ海グループ)は、アフリカ及びアジア太平洋グループ、タイ、イラク、モルドバ、及びその他の諸国と共に、長期資金調達制度が運用できるようになるまでQSPを延長することを求めた。GRULAC は、QSPの実施活動の関与を許すことを支持し、理事会がプロジェクト性能と実施指標を開発することを要求した。アジア太平洋グループは、QSPが優先プロジェクトに関して発展途上国の支援に主に注力することを求めた。新たな提案(SAICM/ICCM.3/CRP.5)を紹介しつつ、アフリカグループは、主流化;化学物質管理に意味ある産業側の関与;資金調達の基盤拡大;適切な化学物質管理のための経済的手段とコストの内部化;を容易にすることを優先するためにQSPを再構築することを求めた。彼等は、資金提供者がQSPに関する討議で発展途上国の必要を考慮するよう求めた。

 GRULAC は、UNEP事務局長の提案は、モントリオール議定書の多国間基金をモデルにした基金のオプションを考慮しておらず、化学物質資金調達に関連する地域の特質に対応していないと嘆いた。日本は、主流化及び産業の関与に関してUNEP事務局長の提案を歓迎したが、国家の化学物質と廃棄物ユニットを設立する提案について懸念を提起した。

 国連開発計画(UNDP)は、 化学物質の適切な管理の開発計画プロセスへの統合のためのUNDP-UNEP パートナーシップ・イニシアティブに言及し、この作業に関する進捗報告(SAICM/ICCM.3/INF/10)に注意を向けた。

 ナイジェリアは、対応活動(enabling activities)を超えたSAICMの即座で持続した効率的な資金調達と実施を確実にするためにQSPにおける資金調達に責任ある既存の構造と制度を強化するための提案を繰り返した。エジプトは、同国政府は資金調達戦略として税金の使用を受け入れないであろうと述べた。

 スイスは、ブルンジの支持を得て、現行及び新たに承認されるプロジェクトへの基金の支払いについて提案した。彼は、2012年11月の次回のGEF理事会及び2013年2月のUNEP管理理事会を含んで、化学物質及び廃棄物管理の長期資金調達に関連する今後の会合を強調した。ノルウェーは、資金調達メカニズムに関する協議は2013年の第27回UNEP管理理事会以前に完了するよう促した。

 国際化学工業協会協議会(ICCA)は、産業の資金調達への支援とリスク管理における経験の必要性を強調した。IPENは、化学産業の拡大を挙げ、産業が”公平な分担を支払う”べき時であると強調した。

 イラクは、財政援助に加えて、技術支援と情報交換の重要性を強調した。環境毒性化学会は、SAICMの能力構築活動、特にリスク削減に貢献することの関心を表明した。

 資金的及び技術的リソースに関する討議を継続するために、ダニエル・ジーゲラー(スイス)とエルサ・ミランダ(インドネシア)を共同議長とするコンタクト・グループが立ち上げられた。

 コンタクト・グループの討議は、QSPと化学物質及び廃棄物に関するUNEP事務局長の提案に関連する多くの課題を包含した。QSP に関しては、代表者等は、寄与を受ける期間は1CCM4まで延長されるべきかどうか、その権限は実施活動を引き受けることへ拡大されるべきかどうか、そしてQSPと長期資金調達との関係についての議論を詳しく行なった。コンタクト・グループのある代表は、QSPに関する合意はUNEP事務局長の提案の討議に関連付けられるべきであり、この二つの課題は最終的にはひとつのパッケージとして採択されると考えた。

 QSPの延長に関して、ひとつの地域グループは、他のひとつのグループには反対されたが、未処理のプロジェクトを完了させることを可能とするために、寄与を受ける期限を2014年6月30日まで延長することを提案するとともに、他の代表者らがQSPの権限を拡大する要求を取り下げることを検討するよう要求した。同グループはまた、実施活動のための資金調達についての懸念を聞いたが、ある代表者らはQSPはこれにもまた関与すべきと主張した。代表者等は最終的に、QSPへの寄与の期間を1CCM4まで延長すること、及びQSPは”初期の能力構築と実施を可能とするために”活動を支援し続けることに同意した。

 UNEP事務局長の提案に関しては、代表者等はこの課題に関する討議に対応し反映する方式に意見の違いがあり、会議報告書に記載されるべきことはもちろん、討議は決議に反映されるべきとする要求があった。代表者等はまた、提案の特定の要素に関してUNEP管理会議にガイダンスを与えるかどうか、又は長期資金調達のための統合アプローチに適合する一般的文言だけを提供するのかどうかに関して意見が異なった。少数の代表者等は、要素の掲載順序について異なる意見を持ち、外部資金調達及び産業の関与は主流の前に掲載することを提案した。

 代表者等はまた、長期資金調達のための提案がすでにSAICMへの参照を含んでいるのかどうか、又は別の参照が必要なのかどうかを討議した。討議において、ある代表は提案の要素に関して本質的なコメントをする権限を持っていないことを強調した。ほとんどの代表は、提案は”公平な優先順位がSAICMに割り当てられる必要(a fair priority needs to be allocated to SAICM,)”を反映すべきことに合意したが、他の代表は、差異ある責任と拡大生産者責任(ERP)以外は参照は共通になされるべきことを求めた。二つの発展途上国地域グループは、GEFのガバナンス構造と提案されている長期資金調達メカニズムのガバナンス構造との相違に言及しつつ、GEFの役割についての懸念を表明した。いくつかの代表者らはGEFへの参照についての懸念を表明し、あるものは、GEFからの援助を要求することは、化学物質と廃棄物のための長期資金調達に関する議論を予断するかもしれないということを懸念した。同グループは、GEFにSAICMで特定されている優先事項と活動を検討するようGEFに要請することに同意した。

最終決議
 会議で採択された最終決議(SAICM/ICCM.3/CRP.19)は特に下記を記述している。

  • QSPへの寄与の期間を1CCM4まで延長し、QSP信託基金の締め切り前のプロジェクトに約束されている基金はリストにある全ての承認されているプロジェクトに支払われるかもしれないことを決議する。
  • さらに、QSP は、もし理事会が戦略的優先事項に追加的運用ガイダンスを提供しなければ、その目的に合致する初期の能力構築と実施を可能にする活動を支援し続けることを決議する。
  • SAICMの長期資金調達は、化学物質と廃棄物のための資金調達オプションに関する協議プロセスの成果文書に反映されている様に、主流化、産業の関与、及び外部資金調達、これらの全ては運用可能とするためには更なる説明が必要であるが、を含む統合アプローチの概念に基づくべきであることを認める。
  • 化学物質と廃棄物分野の長期資金調達のためのどのような統合アプローチにであっても、SAICMを重要な要素とすることを要求する。
  • UNEP事務局長は化学物質と廃棄物の適切な管理のための資金調達への統合アプローチに関する彼の提案を完成させ、UNEP管理理事会は会議議事録に反映されているように、ICCM3でなされた豊富な議論を考慮しつつ、適切な化学物質管理の資金的検討の実施を強化する必要性を考慮するようよう要請する。
  • GEFは、目的の達成を支援するときに、戦略的アプローチで特定されている優先事項と活動を考慮するよう要請する。


化学物質問題市民研究会
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