2012年9月24日 IISD Report
国際化学物質管理会議第3回会合(ICCM3)
概要:ICCM3 報告/SAICMの実施


情報源:IISD, 24 September 2012
SUMMARY OF THE THIRD SESSION OF THE INTERNATIONAL CONFERENCE
ON CHEMICALS MANAGEMENT
17-21 SEPTEMBER 2012
ICCM-3 Report and Implementation of the SAICM
http://www.iisd.ca/vol15/enb15196e.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年10月1日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm3/IISD/
IISD_ICCM3_Summary_Report.html


ICCM3 報告

 国際化学物質管理会議第3回会合(ICCM3)は、2012年9月17日(月)にケニアのナイロビで開幕した。午前中の総会に代表者等は、高官や代表者らのオープニング・ステートメントを聴くために参集した。

 ICCM3への代表者らを歓迎して、ケニアのチラリ・アリ・ムワクウェレ環境・鉱物資源大臣が適切な化学物質管理を推進するためのSAICMの実施に関し同国の約束を強調した。彼は国連環境計画事務局長の化学物質及び廃棄物管理のための資金調達に関する協議プロセスを歓迎し、国家、地域、及び国際レベルでのSAICM実施の支持を表明した。

 ビデオメッセージで、スロベニアのトマス・ガンター保健大臣及びICCM議長は、会議に参加できなかったことを残念がると共に、国連持続可能開発会議(UNCSD又はリオ+20)における代表者等による是認を含んで、適切な化学物質管理の領域で多くのことが世界レベルで達成されたが、まだ多くの課題が残されていると述べた。彼は、ナノテクノロジー及び工業的ナノマテリアルのような新規政策課題や、SAICM資金調達の将来に目を向ける必要性を含んで、議題にある重要な課題を強調した。

 国連環境計画(UNEP)事務局長アヒム・シュタイナーは、UNEPの『世界の化学物質の展望(Global Chemicals Outlook)』(訳注1)について報告し、エイズのための費用を除くアフリカの健康関連への世界の投資額を超えるアフリカの農薬中毒のための費用を含んで、化学物質の危険により引き起こされる経済的な負荷を強調した。彼はまた、GDPが高い国だけが適切な化学物質管理を達成できるという神話を払拭するよう代表者等に求めた。

 欧州連合とその27加盟国並びにクロアチアを代表してデンマークは、SAICMは化学物質管理の持続可能な面に焦点を合わせ、さらに実施報告を作成すべきであると述べた。彼はICCM3は、UNEP事務局長の化学物質及び廃棄物の資金調達に関する提案に積極的に対応するよう求めた。

 アフリカ・グループを代表してザンビアは、クイックスタートプログラム(QSP)(訳注2)は、十分に、適切に、持続可能に資金調達され、恒久的な長期資金メカニズムが確立されるまで延長されることを求め、またアフリカ地域における内分泌かく乱物質に対応する能力を構築するための援助を要求した。

 アラブ・グループを代表してエジプトは、SAICMの短期及び長期資金調達の問題を解決することの重要性、共通ではあるが差異のある責任の原則(訳注3)、及びアラブ諸国の必要に合わせた技術の移転を確実にする必要性を強調した。

 ラテンアメリカ及びカリブ海グループ(GRULAC)を代表してジャマイカは、UNEP事務局長の提案を検討し討議する機会を歓迎し、同提案で概説されているように産業の資金調達への関与をさらに検討することに強い関心を表明した。GRULAC はまた、安定した独立の長期資金メカニズムの運用が確立するまで、QSPを延長することを求めた。

 中東欧グループ(CEE)を代表してスロベニアは、SAICM は持続可能な開発とグリーン・エコノミーに焦点を合わせるべきであると述べた。同グループはまた、農業分野で使用されている化学物質に関してもっと活動することを求めた。

 メキシコは、国際協力と可能性ある新規に出現している課題のさらなる探求を強調した。中国はリソースの割り当ては、発展途上経済と移行経済国が優先されるべきであると強調した。ナイジェリアは、SAICMのための持続可能な資金調達計画の必要性を強調した。イラクは、QSPの成功が評価されなくてはならないと言及した。

 国際農薬行動ネットワーク(PAN)は、2020年までに”化学物質は人の健康と環境に及ぼす著しい有害影響を最小にする方法で使用され製造される”ことを求めた2020年目標を達成するためには不十分な行動を嘆き、この目標が達成されることを確実にするための政治的意思を強化することを強く促した。国際化学工業協会協議会(ICCA)は、全てのレベルで政府及び非政府組織(NGOs)と協力すという産業側の意思を表明した。


SAICMの実施
SAICMの実施の評価とガイダンス及びレビューと更新:
戦略的アプローチ実施の評価と進捗:


 この議題は月曜日(17日)に取り上げられた。会議はICCM2以来実施された地域会合間 作業に関する地域フォーカルポイントからの報告書を検討した(SAICM/ICCM.3/INF/36)。

 アジア太平洋グループを代表して日本は、同地域の多様性のために、共通の実施計画又は優先活動を開発することに困難が生じたが、主要なテーマについては共通の理解があると述べた。中東欧(CEE)を代表してポーランドは、同地域における化学物質法を実施するに当り、多様な能力差があることを概説した。彼は、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)実施は、同地域で最も優先順位が高いもののひとつであると述べた。

 GRULAC を代表してジャマイカは、優先的化学物質と広範な主題の作業領域を特定すること;国家及び準地域の実施計画を開発すること;及び16か国中に健康コンタクトポイントを任命することを含んで、同地域の主要な成果を概説した。

 アメリカは、ナノマテリアルについての健康と環境データの生成;過フッ素化合物(PFCs)の自主的な廃止;子どもの鉛曝露の削減;対象化学物質のより安全な代替の促進を含む実施の取り組みを概説した。

 EUは、殺生物剤の新たな規制;REACHにおける5,000物質以上の登録を含むICCM2以来の実施の取り組みを概説した。

 アフリカ・グループは、実施計画とアフリカにおける地域活動のための優先度及び援助の源を強調した。

 地域報告に続いて事務局は、SAIC実施概要(SAICM/ICCM.3/4)、ベースライン見積り報告書(SAICM/ICCM.3/INF/5)、2009年〜2010年進捗報告書(SAICM/ICCM.3/INF/6)、及びIOMCからの報告書(SAICM/ICCM.3/INF/9)、ICCAからの報告書(SAICM/ICCM.3/INF/7)、及びIPENからの報告書(SAICM/ICCM.3/INF/8)を含む、20の進捗指標に従う報告文書を紹介した。事務局はまた、会合前のテクニカル・ブリーフィングを簡単にまとめて紹介した。

 国際金属・鉱業評議会(ICMM)はSAICMの目的を満たすための23の約束を呼び起こした。EUは将来の活動の計画に定期的な実施報告の重要性を強調した。ケニアは、”時間的に古くなった”項目を修正する又は置き換えるために報告指標の見直しを提案した。

 IOMCを代表してFOAは、更新されたリソースへのIOMCガイド、ガイダンス及び訓練資料、及び化学物質管理意思決定のための新たなオンライン”ツールボックス”に言及した。

 スイスは、定期的な実施報告を恒久的にすること及び、それは効率的であり、現実的であり、2020年目標に向けた進捗を評価することに貢献することを確実にすることを求めた。IPENは、SAICM実施のペースを加速し、ICCM3 が2020年までの実施のためのロードマップを作成するよう求めた。PANは、農薬の空中散布の禁止及び制限のための現行のキャンペーン及び農業生態学的生産の促進を強調した。イラクは、報告メカニズムを簡略化することを求めた。


訳注1
UNEP News Centre 2012年9月5日 化学物質により生じる増大する健康と環境ハザードを減らすために緊急の行動が必要である
訳注2
クイックスタートプログラムへの対応について/環境省
訳注3
持続可能な開発における「共通ではあるが差異のある責任」(common but differentiated responsibility)について


化学物質問題市民研究会
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