SAICM/ICCM.2/10/Add.1 2009年4月7日
第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)
SAICM 新規の政策課題 Annex II
製品中の化学物質に関する決議案と取り決め事項案


情報源:
International Conference on Chemicals Management Second session
SAICM/ICCM.2/10/Add.1 / 7 April 2009
SAICM: emerging policy issues Annex II
Information about chemicals in product
http://www.saicm.org/documents/iccm/ICCM2/meeting%20documents/
ICCM2%2010%20Add1%20emerging%20issues%20actions%20E.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月6日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/saicm/iccm/ICCM_chemicals_in_products.html

Annex II 製品中の化学物 (訳注:ファシリテーター:スウェーデン)

製品中の化学物質についての情報

説明

1. 製品中の化学物質についての情報を改善することに関連して、戦略的アプローチの包括的方針戦略(環境省仮訳)の15(b)(訳注1)の実施を推進するために作業部会を設立することを含めて、提案する行動は、背景情報文書及び本行動提案の準備期間中に戦略的アプローチ利害関係者から受領した追加的コメントを考慮しつつ、2009年2月9日〜12日にジュネーブで開催された製品中の化学物質に関する利害関係者が必要とする情報に関する非公式なワークショップ[4]で生じた結論と勧告に基づいている。

提案される決議

製品中の化学物質についての情報へのアクセスと利用可能性を改善すること

 会議は、戦略的アプローチの包括的方針戦略とその知識と情報に関する条項、とりわけ、適切な場合には製品中の化学物質も含めた、化学物質のライフサイクル全体の情報が、すべての利害関係者たちにとって入手可能で、容易に利用でき、ユーザーフレンドリーであり、適正で適切であることを確実にすることを目的とすると述べていることを想起しつつ[5]、

 包括的方針戦略の15 (c)に規定されている条項(訳注2)にしたがって、保護されるべき商業的、産業的な秘密の情報と知識を心に留めつつ、

 地域間を輸送される製品中の化学物質を含んで国際貿易は、特別の場合には有害影響を引き起こす結果をもたらし、製造、使用、リサイクルまたは処分のような製品のライフサイクルの様々な段階で人の健康と環境に将来のリスクを及ぼし、したがって製品中の化学物質の課題は適切な国際的対応を必要とするな世界的な規模のものになるかもしれないことを認識しつつ、

 製品中の有害な化学物質についての知識と情報は、製品のライフサイクルを通じて化学物質の適切な管理にとって基本的であり、製品中の化学物質は、特定の情報を必要とする広範な利害関係者を巻き込む重要な横断的課題であることを認識しつつ、

 さらに、効果的で効率的な情報生成とアクセスビリティのために、利用可能な範囲内で、国の当局と規制にしたがい、関連するすべてのセクターと利害関係者の関与を伴った全てのレベルで共同行動が必要とされることを認識しつつ、

 ある領域で製品中の有害物質に関する情報交換に役立たせるために、政府、産業、非政府組織、及びその他によってとられる取り組みを歓迎しつつ、

 しかし、今日まで包括的な世界の行動は、化学品の分類および表示に関する世界調和システム[6]の範囲外にある製品については開発されなかったこと及び、よりよく理解されている化学物質暴露経路に関連したリスクを削減するための取り組みに比べて、どちらも詳細に開発されてこなかったことに留意しつつ、

 製品中の有害化学物質についての情報と適切で利用可能な代替を提供するための現在の取り組みと能力は、製品のライフサイクルを通じて起こるかもしれないリスクを完全に理解し、必要な場合に人の健康と環境を保護するための情報に基づく意思決定のために十分ではないということを認識しつつ、

 また、既存のシステムとの適合性を確実にし全ての関連する利害関係者に便益を最大化する一方で、調和を推進し、それにより情報システムのつぎはぎ作業を避けるために、この課題に関する国際的な共同が極めて重要であり、緊急の行動が必要であることを認識しつつ、

 情報の効率的な利用には、利用可能な情報を管理し、理解し、応用するための能力が必要であり、製品中の化学物質に関連した潜在的なリスク及び適切で利用可能な代替についての意識の向上が必要であることを心に留めつつ、

1. 適切な共同行動をとるという見解をもって、2020年までに化学物質は人の健康と環境に対する有意な有害影響を最小にする方法で使用され製造されるという戦略的アプローチの全体的目的を満たすためのさらなる行動の必要性を認識しつつ、サプライチェーンにおける及びそのライフサイクルを通じて製品中の化学物質に関する情報の利用可能性とアクセスを改善するためのさらなる必要性を検討することに同意し、

2. 既存の取り組みとその他の関連情報を見直し、製品中の化学物質に関する情報の利用可能性とアクセスを改善する必要性を満たすために適切な場合には情報システムまたはシステムの枠組みの提案を開発するために、利用可能なリソースにしたがい、本決議に対する付属書(Annex)に規定されている権限をもって作業部会を設立することを決定し、

3. 共同行動のための提案は、化学品の分類および表示に関する世界調和システムを考慮に入れるべきであり、そのシステムの下に、どのような重複をも避けるべきであるこことを勧告し、

4. 政府、地域経済統合組織、政府間組織、及びその他の国際組織、産業またはビジネス組織、非政府及び市民社会組織、及び大学研究機関が作業部会に参加するよう働きかけ、

5. 全ての政府、政府間組織、及び民間セクターを含む非政府組織は作業部会を支えるために自主的ベースで適切な人的、財政的、及び現物のリソースを提供するよう要請し、

6. 関連情報と指針を開発して利用し、戦略的アプローチのクリアリング・ハウスのメカニズムを通じて、事例、アプローチ、ツールを編集することを含んで、作業部会に支援を提供するよう国連環境計画及びその他の関心ある組織に要請し、

7. 作業部会に対し、その作業の進捗を、戦略的アプローチのウェブサイトを通じて、及び第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)に報告するよう要請すること。


原注

4国連環境計画とスウェーデンによって主催され、日本によって支援された。
http://www.chem.unep.ch/unepsaicm/cheminprod_dec08

5第1回国際化学物質管理会議(SAICM/ICCM.1/7)annex II, para. 15 (b) (i)

6化学品の分類および表示に関する世界調和システム(第2版)
Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals (second revised ed.), New York and Geneva: United Nations, 2007, ST/SG/AC.10/30/Rev.2, ISBN 978-92-1-116957-7 (United Nations publication, Sales No. E.07.II.E.5).


訳注

包括的方針のパラグラフ15(b)及び(c)
訳注1 (b) すべての関係者に対して、以下のことを確実にすること
(@)適切な場合には製品中の化学物質も含めた、化学物質のライフサイクル全体の情報が、すべての利害関係者たちにとって入手可能で、容易に利用でき、ユーザーフレンドリーであり、適正で適切であること。情報の適切なタイプは、化学物質の人の健康と環境への影響、それらの本来的な特性、潜在的な用途、防護措置と規制を含む
(A)そのような情報が、とりわけメディア、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)のようなハザードコミュニケーションメカニズム、及び国際協定の関連条項を十全に利用することによって、適切な言語で普及すること

訳注2 (c) パラグラフ15(b)に基づいて情報を入手可能とするに当たっては、商業的、産業的な秘密の情報と知識が国家の法令に基づいて保護され、又はそのような法律や規制がなければ国際的な規定によって保護されることを確実にすること。このパラグラフの文脈においては、人の健康・安全と環境に係る化学物質情報には機密性があるとみなされるべきではない


Appendix
製品中の化学物質についての情報へのアクセスと入手可能性を改善すること

提案される取り決め事項案

1. 以下の取り決め事項は、適切な場合には、下記のように述べる包括的方針のパラグラフ15 (b) の達成を推進するために、戦略作業部会が権限をもって情報システム又はシステムと行動の枠組みのための提案を開発するためのものである。

すべての関係者に対して、以下のことを確実にすること:
 適切な場合には製品中の化学物質も含めた、化学物質のライフサイクル全体の情報が、すべての利害関係者たちにとって入手可能で、容易に利用でき、ユーザーフレンドリーであり、適正で適切であること。情報の適切なタイプは、化学物質の人の健康と環境への影響、それらの本来的な特性、潜在的な用途、防護措置と規制を含む。

2. 作業部会は、利用可能なリソースにしたがい、国際化学物質管理会議の支援下に設立されるべきことが提案される。

全体的目標

3. 作業部会の全体的な目標は、戦略的アプローチの包括的方針パラグラフ15(b)及び世界行動計画の関連する活動、特に製品中の化学物質の場合に情報管理と普及の実施を推進することである[7]。

特定の目標

4. 作業グループは下記を実施すべきである。

(a) 他の関連する情報とともに、製品中の化学物質に関連する既存の情報システムを見直すこと

(b) 適切な場合には、製品中の化学物質についての情報に関して戦略的アプローチの実施を推進するために、情報システム又はシステムと行動の枠組みのための提案を開発すること

5. 作業グループは、商業的、産業的な秘密の情報に関する戦略的アプローチの包括的方針パラグラフ15(c)を考慮しつつ、その作業を実施し、下記課題を優先すべきである。

(a) リスクが発生する場合に製品グループと暴露状況を特定し優先順位をつけること

(b) 当該の有害な化学物質を化学的に確定すること

(c) 関連する利害関係者と彼らの特定の情報の必要性を特定し、どの様な情報をどのような書式で提供すべきかに関してさらに提案すること

(d) 政府と利害関係者がいかに提案された情報システムにアクセスし、どのようにそれを運用するかに関する追加的な情報を提供すること

(e) 商業的、産業的な秘密の情報のような情報に関連する潜在的な制約に加えて、情報システムを提供しアクセスできるようにするにあたり、産業、政府、及びその他に対するコストと便益を分析すること

(f) 製品中の化学物質に関する情報をすべての利害関係者に利用可能とするための適切な方法を考案すること

6. 作業部会はまた、その作業において、適切なら下記の主要な要素を検討するかもしれない。

(a) 他の関連する新規の課題の補足的な活動

(b) 持続可能な消費と生産に関するマラケシュ・プロセスを含んで、情報システムに関連する他の多国間又は国際的なフォーラムで実施されている作業及び活動[8

(c) 情報交換に役立たせるために、個々の産業セクター内及び彼らのサプライチェーンを横断して実施されている作業

(d) 能力構築の必要性、技術的及び財政的必要性、及び技術移転の必要性を含んで、途上国および移行経済国の特定の課題及び必要性

(e) 適切な場合には、中小企業及び非公式セクターの特別の必要性

7. 作業部会は、その作業を実施するにあたり、2009年2月9日〜12日にジュネーブで開催された製品中の化学物質に関する利害関係者が必要とする情報に関する非公式なワークショップ9について、そのワークショップの非公式な特性を認識しつつ、その成果を利用すべきであり、また作業部会の参加者から入手できるその他の関連情報を利用すべきである。

8. その作業を実施するにあたり、作業部会は、化学品の分類および表示に関する世界調和システムを考慮に入れるべきであり、そのシステムの下に、どのような重複をも避けるよう努力すべきである。

参加

9. 作業部会は、政府、非政府組織、公共及び民間の利害関係者など様々な利害関係者が自主的で協力的な組織であり、そこでは全ての参加者は、上述の全体的な目標を達成するために公開性と透明性がある組織的な方法で一緒に作業することに同意する。全ての国連地域を反映する地理的に公平な作業部会参加者の配分が特に望ましい。

10. 作業部会への参加はどの政府、地域の経済的統合組織、政府間組織、国際的、地域的または国の組織、産業又はビジネス組織、非政府及び市民社会組織、又は大学研究機関に対して開かれている。作業部会の効率を強化し下記に記述する作業方法を考慮するために、参加者の数は管理できるレベルに保たれることが推奨される。

11. 参加者は、少なくとも下記2分野のうちのひとつに関連する技術的課題の専門性を持つべきであることが勧告される。

(a) 関連する環境又は健康政策
(b) 関連する化学物質管理の枠組み及び協定の運営または準備

作業の方法

12. 作業部会はその仕事を会期中に、主に電子的方法及び電話会議を通じて、適切なら他の既存の会議の合間に個人と面談しつつ、その作業を実施するべきである。作業は公開性と透明性のある方法で実施されるべきである。

13. 作業部会の言語は英語とすべきである。

14. 議長は部会の全体的調整をはかるために参加者の中から指名されるべきである。

15. 作業部会のメンバーは、合意により結論に達する道を探すべきである。合意に達さない場合には、国際化学物質管理会議に提出されるべき報告書に見解の範囲が示されなくてはならない。

16. 作業部会は、本取り決め事項案に規定がない限り、国際化学物質管理会議の手続き規則に必要な変更を加えて適用すべきである。

リソース

17. 作業部会は利用可能なリソースにしたがってその作業を実施すべきである。作業部会のメンバーとなった各組織または個人は、作業部会の活動の開発と実施地に対するリソース(財政的または現物)又は専門性に貢献すべきである。メンバーは、作業部会を支援するためにリソースを提供することに関心を持つ潜在的な関連する政府又はその他の機関の寄贈者を特定するよう働くべきである。そのようなことをすべき立場の国と組織はリソースを利用できるようにすることが望まれる。



原注

7 世界行動計画の次の活動は特に関係ある: 108, 111 and 112.

8 持続可能な消費と生産に関するマラケシュ・プロセスは、持続可能な消費と生産の実施を支えるための世界のマルチステークホールダー・プロセスであり、持続可能な開発委員会(Commission on Sustainable Development)によって2010−2011年の間に見直しが行われる「持続可能な消費と生産に関する10年枠組みプログラム」である。http://www.unep.fr/scp/marrakech/を参照のこと。

9 国連環境計画とスウェーデンによって主催され、日本によって支援された。
http://www.chem.unep.ch/unepsaicm/cheminprod_dec08/



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