ETUI-REHS 2008年12月3日
緊急行動が求められる
欧州連合のアスベスト輸入をとめろ

REACH付属書17第6項の例外条項の削除を要求

欧州労連研究所安全衛生部門(ETUI-REHS)ディレクター
ローラン・フォーゲル

情報源:ETUI-REHS December 3, 2008
Urgent action required: stop the import of asbestos in the European Union
Laurent Vogel
Director of Health and Safety Department of the European Trade Union Institute
- Research, Education, Health and Safety (ETUI-REHS)
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訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2008年12月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/union/081203_ETUC_Asbestos.html


皆さん

 12月17日と19日に、REACHの付属書17の内容の定義について加盟国が参加する二つの重要な会議がが行われます。欧州労連(ETUC)は、指令 76/769のに基づく欧州委員会のこの会議に招待されました。

 一言で言えば、REACHの付属書17は、ある危険な物質、調剤及び成形品の製造、上市及び使用の制限に関連して、理事会指令 76/769/EEC 1976年7月27日の付属書に含まれる物質を含むことになっています。この付属書は1976年から現在にいたるまでの間に上市と使用に関する制限が採択された非常に危険な物質を挙げたリストです。

 それらの物質のうちのひとつがアスベストであり、その禁止は1999年に採択された。この禁止が採択された時に、理事会は化学産業における〔アスベスト含有〕隔膜電解施設について猶予期間を与えることに合意しました。電気分解施設(その大部分が塩素製造用)を除き、全ての会社は2005年までにアスベストを代替しなくてはなりません。隔膜電解装置(その大部分は塩素製造)を除いて、会社は2005年までにアスベストを代替しなくてはならず、隔膜電解装置はもう少し長い猶予期間として2008年が予測されていました。

 しかし、現在、企業総局はこの暫定的猶予期間を永久的なものにしたいと望んでいます。REACH付属書17の第6項(添付1)の表現は、アスベスト及びアスベスト含有の隔膜の使用をそのプラントが廃止されるまで認めています。企業総局は適切な代替がないと考えています。実際には、ほとんどの会社はアスベスト隔膜をアスベストを含まない膜で代替していますが、ドイツとポーランドにある3つの会社がアスベスト隔膜の使用の継続を望んでいます。

 もし、付属書17について企業総局により提案されている文言が採択されれば、その結果は次のようなことになるでしょう。

a) アスベストの世界禁止のためのEU政策が弱められる。アスベスト又はアスベスト含有材料の輸入をしながら、アスベストの世界禁止を訴えても説得力がない。

b) その規定にある非常に危険な物質の代替のための基準はREACHの基本的な基準よりも厳格ではないのでREACHを弱めることになる。

 他にも議論すべき問題はありますが、我々はこれが最も重要なもののひとつであると考えます。

 私は、この問題を担当する各国当局に非常に簡単なメッセージをもってコンタクトするよう提案します。

 電気分解装置の免除が暫定的なものであるとする1999年の理事会による約束は敬われなくてはなりません。電気分解装置の免除はREACHの付属書17に含まれるべきではありません。この立場はおそらくフランス政府に支持されるでしょう。
 他の諸国当局はこの見解を支持し、欧州委員会にこの文言の該当部分を削除するよう求めるべきです。

 添付2に各国当局の担当者の名前とe-mailが記されています。(訳注:省略)

敬具
ローラン・フォーゲル

添付1
■REACH 付属書17 第6項(Page 400/849)
(緑着色部が削除されるべき文言)
    対象物質
    (a) Crocidolite CAS No 12001-28-4
    (b) Amosite CAS No 12172-73-5
    (c) Anthophyllite CAS No 77536-67-5
    (d) Actinolite CAS No 77536-66-4
    (e) Tremolite CAS No 77536-68-6
    (f) Chrysotile2 CAS No 12001-29-5 CAS No 132207-32-0

  1. これらの繊維及びこれらの繊維を意図的に加えられて含む成形品の上市及び使用は禁止されるべきである。

     しかし、加盟国は、既存の電気分解での装置クリソタイル(f)を含む隔膜の上市と使用を、それらの使用寿命が尽きるまで又はアスベストを含まない適切な代替が入手可能となるまでのどちらか早い時期まで例外として認めてもよい。欧州委員会はこの免除を2008年1月1日以前に見直す。

  2. 2005年1月1日以前に建設され及び/又は操業されていた上記1項で参照されているアスベスト繊維含有成形品の使用は、それらが廃止処分される又は使用寿命が尽きるまで許される。
    しかし、加盟国は人の健康保護を理由に、そのような成形品の使用をそれらが廃止処分される又は使用寿命が尽きる以前に禁止してもよい。

     加盟国は領域内でクリソタイルアスベストの新たな適用の導入を許可してはならない。

  3. 物質又は混合物の分類、包装、及び表示に関する他のコミュニティーの適用の不利益となることなく、前述の免除により許可されるとするこれらの繊維を含む成形品の上市と使用は、成形品がこの付属書のAppendix 7に従った表示が行われている場合にのみ許可される。
添付2
 国当局担当者リスト(訳省略)


訳注
ヨーロッパにおけるアスベスト禁止の取り組みについての詳細情報は下記ウェブサイトをご覧ください。
ETUI-REHS Website / Asbestos

ETUI-REHS のウェブサイトによれば、アメリカの巨大化学会社ダウケミカルはアメリカの施設についてはアスベスト隔膜技術の代替への転換を計画しているが、ヨーロッパにおいてはアスベスト隔膜技術の廃止に最後まで反対している産業側の主なプレーヤーである。



化学物質問題市民研究会
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