EurActiv 2008年6月19日
欧州委員会 ナノ物質をカバーできるよう
法改正を検討


情報源:EurActiv, 19 June 2008
Commission mulls law changes to cover nanomaterials
http://www.euractiv.com/en/science/commission-mulls-law-changes-cover-nanomaterials/article-173458

訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年6月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/080619_REACH_Nano.html


 欧州委員会による欧州の既存法令の見直しは、ナノ物質の科学的知見が深まったので、現行の法は改正される必要があるかもしれないと結論付けた。ナノ物質を含有する製品の特定ラベル表示制度はとりわけ開発が求められる。

 現在のEUの法体系は、”ナノ物質に関連する潜在的な健康、安全、及び環境リスクを原則としてカバーしている”と2008年6月17日に発表されたナノ物質の規制面に関する欧州委員会コミュニケーションは結論付けている。

 しかし、欧州委員会は、”例えばいくつかの規制の中で用いられている閾値に関するもの等、利用可能となってきた新たな情報に照らして、現行の法は改正されなくてはならないかもしれない”と述べている。

 コミュニケーションは、現在製造されている及び/又は市場に出ているナノ物質をカバーしているが、自然に発生する又は燃焼のように非意図的に生成されるナノ物質又はナノ粒子には目を向けていない。

 欧州委員会による関連分野における欧州の既存法令の見直しに基づき、コミュニケーションはナノ物質が現在のEUの各種法の下に次の点に関してカバーされているとしている。
  • 化学物質:物質自身、調剤中、又は成形品中の物質の製造と上市の認可に関する特定の規則からなる、いわゆるREACHにおける化学物質
  • 労働者の健康と安全
  • 製品要求:労働者及び消費者の健康と安全及び環境保護のための要求
    • 製品群:植物保護製品(plant protection products)、殺生物剤、新規アプローチ法関連(new approach legislation)、化粧品、噴霧器、医療品、車
    • 食品法:一般食品法関連、新規食品、食品接触物質、食品添加物、補助食品、飼料法関連
    • 特定の法でカバーされない消費者製品に関する一般製品安全指令
  • 環境:統合汚染防止管理(IPPC)指令、主要事故(セベソII指令)、水、廃棄物、大気質、土壌保護、及び環境責任
 コミュニケーションによれば、健康、安全及び環境の保護を強化するために着手すべき最善の方法は、実施支援する既存の要素を見直すことにより現在の法の実施を単純に改善することである。見直しが必要とされる要素には、立法、行政の決定、及び製造者と雇用者の責任を実施するための基礎となるべき異なるテスト及びリスク評価方法が含まれる。

 一方、法の実施を任務とする当局と機関は、市場を注意深く監視し続け、既に市場にある製品にリスクガあることがわかった場合には共同体市場調整メカニズムを使用すべきである”と欧州委員会は述べている。

 製品のラベル表示に関しては、欧州委員会はナノ物質の特定ラベル要求を規定する必要があるという可能性を除外していない。その時までナノ物質は、製品の特性に関する消費者のための製品ラベル、警告、及びその他の情報に関する既存のEU法を遵守しなくてはならないと述べている。

 法令の見直しはまた、立法作業の支援のための特定の知識ベースを改善するために実施されるであるするナノ物質に関するもっと多くの研究が実施されるべき多くの領域を特定した。それらには下記が含まれる。
  • 信頼性のある測定方法、参照物質、及び物質特性化
  • 人の健康、安全及び環境のためのテスト方法の見直しと開発
  • ナノ物質のライフサイクルを通じての暴露情報の開発
  • 既存のリスク評価方法の見直し
  • 労働者の保護を目的としたリスク管理
  • ナノ物質の健康、安全、及び環境的側面を検証するために、既存の及び新たに確立される基盤とのネットワーキング
立場:

 ”EU産業がナノ技術の進捗を十分に活用することを可能にし、革新、成長、及び雇用創出を高めるために、信頼性があり安定した規制の枠組みが本質的に重要である”と欧州委員会の企業・産業委員会委員長ギュンター・フェアホイゲンは述べた。

 一方、環境委員会委員長タブロス・ディマスは、”規制の課題は、健康、安全、環境を高いレベルで維持しつつ、ナノ技術の新規適用による社会の利益を確保することにあるので、ナノ物質に関して予防原則を完全に適用する必要を性をハイライトした。

次のステップ:

2008年:欧州委員会とEU機関は、ナノ物質に対する適用可能性と適切性に関する様々な指令の実施を支援する既存の文書のレビューを開始する。
2011年:欧州委員会はナノ物質に関する既存の規制の実施に関する進捗報告を発表する。

リンク:

欧州連合


化学物質問題市民研究会
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