EurActiv 2006年4月27日 更新
米企業はREACHのブラック・リスト効果を恐れる

情報源:EurActiv, 27 April 2006
US companies fear 'black list' effect of REACH
http://www.euractiv.com/en/environment/us-companies-fear-black-list-effect-reach/article-154764

(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年8月19日
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"http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/euractiv/06_04_27_US_companies_fear.html


概要:

 REACHにおいて健康と安全チェックの優先順位を選定するために候補となる化学物質のリストを作成するという案は、環境NGOがそれらの化学物質を評価が行われる前に市場から締め出すことに使うブラックリストになると米企業は恐れている。

背景:

 EUでは、閣僚理事会が昨年12月に(2005年12月13日)REACHに法案を採決して、第一読会が完了した。法案は、今年中に第二読会を行うためにEU議会に戻された。

 REACHは、現在、広く家庭用や産業用製品に使用されている約100,000種の化学物質のうち、約30,000種についてその安全性のチェックを行うための法案として2003年に提案された。欧州委員会によれば、それらの物質の99%はより厳格な評価が求められることとなった1981年以前に市場に導入されたので、概略だけの不完全な安全情報しか持っていない。

論点:

 REACH提案は、ある化学物質を人の健康と環境に”非常に高い懸念がある”ものとして定義し、将来、ヘルシンキに置かれる欧州化学品局によって最優先で評価されるべきことを要求している。

 ”非常に高い懸念がある”物質は、発がん性、変異原性、又は生殖毒性を有する物質、及び人の体及び環境中に蓄積する傾向がある物質として定義される。[発がん性・変異原性・生殖毒性(CMR);残留性・生体蓄積性・有毒性(PBT);高残留性・高生体蓄積性((vPvB)]。

 しかし、欧州化学品局は、これらの物質の代替が非常に難しい場合、非常に金がかかる場合、又は代替がない場合には認可することができる。昨年のREACHに関する第一読会で、EU閣僚理事会はこれらの化学物質の暫定的使用を下記3つの状況の下でのみ許すことに同意した。

  • 人の健康又は環境へのリスクが”適切に管理される”場合
  • その物質の社会的及び経済的利点がこれらのリスクを上回る場合、又は
  • ”適切な代替が存在しない”ことが示された場合
立場:

 2006年4月10日の立場表明で、駐EU・アメリカ商務省(AmCham EU)は、REACHの下に優先的に評価されるべき非常に高い懸念がある物質の”候補リスト”を作成し公表することに”強く反対する”と述べている。

 駐EU・アメリカ商務省(AmCham EU)は、そのリストの単なる公表は、欧州化学品局が高い毒性にもかかわらずそれらが認可されるかどうか審査する前に大きな混乱をビジネスに引き起こすように見える”事実上のブラックリスト効果”を持つことになると主張している。

 駐EU・アメリカ商務省は、公表は消費者製品(例えば、おもちゃ、食品容器、化粧品のみならず、車やコンピュータ)を作る会社が製品中に ”非常に高い懸念がある物質” が存在することを正当化することを実際に非常に困難にするであろうと述べている。

 (川下の)製造者は(化学物質)供給者にリスト中にない原材料だけを供給することを求め、複雑なサプライチェーンを複雑にし、”ビジネスの大混乱と不必要な通商障壁”を引き起こすと予測している。

 しかし、駐EU・アメリカ商務省が最も恐れていることは、そのリストが”環境NGOと彼らを支援する政府によってこれらの物質を使用しないキャンペーンを行うために利用されること”である。そのようなことは、事実上、通商の技術的障壁(TBT)に関する2.2条にしたがって、WTO 紛争の端緒となる通商の不必要な障壁となるであろうと駐EU・アメリカ商務省は述べている。

 一方、NGO側は、WWFのEUオフィスの化学物質安全キャンペーン担当ジャスティン・ウィルクスはこの議論を逆の方向に向けることを望んでいる。彼はこのリストを公表することは製造者に将来、禁止されそうな物質について早い時期に知らせ、ビジネス環境の変化に対応するためにより多くの時間を与えることになると述べている。

 ”情報は市場では重要である。化学物質の川下ユーザーがその物質が将来制限されそうであるということについて早期の警告を与えられることはビジネスにとってよいことであると信じる”−とウィルクスは述べている。

 いずれにしても、もし候補リストが自由に入手できないことになるならば、WWFとグリーンピースは彼ら自身でそれを公表すると警告している。

 ”リストが作られるであろうことは全く疑う余地はない”−とウィルクスは述べている。しかし彼は、それがREACHの下で公表されるべきかどうかの決定は第二読会で検討されると述べている。

最新情報と次のステップ:
  • 2006年6月29日:昨年の政治的合意を受けて競争力理事会が第一読会でその共通見解(法的翻訳付き)を公式に採択。
  • 2006年10月:議会環境委員会投票(第二読会)
  • 2006年10月24日:議会総会投票(第二読会)
  • 2006年末:理事会第二読会、REACH最終承認の可能性
関係者の立場表明:



化学物質問題市民研究会
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