0. 一般的コメント
EU は、より安全な代替物があれば、どこでもいつでも、それらを使用することにより、我々の体や環境に蓄積したりホルモン系をかく乱するような化学物質を廃止する新たな規制システムを必要としている。欧州委員会の提案はこのことの実現を目指していはいるが、まだ多くの重大な問題点がある。
■建設的なものとして歓迎すべきこと:
- 新たな REACH システムの展開。但し多くの非常に非効率的な面もある。
- 提案されたシステムが、産業側に対し、彼らが販売する化学物質 (すでに市場に出ているがデータのないもの、及びこれから市場に出るものを含む) に関する安全データの提出を義務付けたこと (少なくとも基本的な安全データ)
- 提案されたシステムは最悪の化学物質(非常に高い懸念のあるもの)を特定し、それらを新たな認可システムの対象として取り扱うとしている。但し後述するように重大な問題点がある。下記に示す非常に高い懸念のある物質の定義は歓迎する。
- 我々の体内と環境に蓄積し、その有毒性が知られている化学物質 (PBT: persistent, bioaccumulative and toxic)
- 我々の体内と環境に蓄積するが、その有毒性がまだ知られていない化学物質 vPvB: very persistent, very bioaccumulative)
- 同等の懸念がある化学物質で、内分泌かくらん物質を含む
■しかし、多くの問題点がある。特に:
- より安全な代替が入手可能でも、最悪の化学物質が使われ続けること
- 新たなシステムは、最悪の化学物質、すなわち非常に高い懸念のあるものを特定するであろうが、現在提案されているシステムでは、たとえ、より安全な代替物が容易に入手可能であっても、産業側は、それら最悪の化学物質を使い続けることができる認可を得ることができる。
我々の考えでは、例えば母乳に蓄積するような、非常に高い懸念のある化学物質の使用は、社会的な必要性が絶大であり、より安全な代替物を入手することができず、リスク削減措置がとられるということを産業側が証明することができた場合にのみ、認可が賦与されるべきである。
危険化学物質の、より安全な代替物による漸進的な段階的な代替が、最悪の残留性、生体蓄積性及び有毒性を有する化学物質の使用の廃止という目標を達成するために必要である。
”非常に高い懸念のある化学物質を不必要に使用することのための申請” がもたらす認可システムの混乱を防ぐために、認可申請の一部として代替物の入手可能性を検討することが必要である。
このコメントに、クリーン・プロダクション・アクションがグリーンピースのために取りまとめた代替の実行可能性についての報告書の概要を添付する。
(訳注)
この報告書は 『 Safer Chemicals within Reach : Using the Substitution Principle to drive Green Chemistry by the Clean Production Network for the Greenpeace Environmental Trust 』 として、クリーン・プロダクション・アクション(Clean Production Action)が報告したものであり、当研究会がその概要を 『 REACH でより安全な化学物質:代替原則でグリーンな化学へ(紹介) 』 として日本語訳した。
- 秘密性がまだ残る
- 現在の提案では、企業側は化学物質の製造と使用に関する多くの情報を秘密にすることが許される。このことは、消費者、作業者、川下ユーザー及び小売業者の利益に反する。
- 輸入される消費者用製品中にテスト未実施の化学物質が含まれる
- 現在の提案では、輸入製品中に、ヨーロッパの消費者に未知の危険を及ぼすことになるテストの行われていない化学物質が含まれていても、それが許される。
- 定義が不明確
- 多くの重要な概念が十分に定義/説明されていない。例えば、適切な管理、社会経済的評価、曝露シナリオ、などである。そのような概念の定義が不十分であることにより、REACH システムの多くの局面の、特に新設予定の欧州化学品機構、及び欧州委員会による解釈が同一にならない恐れがある。このことは化学物質管理における政治的な取引を防ぐことをできず、現在の煩雑で非効率な政策決定から脱却できない。
- 認可と登録において、非常に高い懸念のある化学特性の取り扱いの間に矛盾がある
- 欧州委員会が、PBT(残留性、生体蓄積性、及び有毒性)、vPvB(非常に残留性が高い、非常に生体蓄積性が高い)、CMR(発がん性、突然変異誘発性、又は生殖毒性質、 分類1及び分類2 )、ED (内分泌かく乱性)の特性を持つ物質を認可対象としたことを歓迎する。しかし、本文の認可と登録に関連するいくつかの場所で、CMRs が優先的に扱われている、又は、認可の新たな範囲を考慮せずに、特別の措置がとられている。例えば、1999/45 に従った調剤の分類は vPvB 物質に対して機能せず、IPPC 認定の方法は、残留性物質の排出の複合影響を考慮に入れておらず、本システムは CMRs の早期登録を求めているが PBTs や vPvBs には求めていない。
上記に加えて、項目ごとのコメントを欧州委員会のインターネット・コンサルテーションの指針の順に従って以下に記述する。
(以下略)
(訳: 安間 武 /化学物質問題市民研究会)
|