2013年12月16日
REACH 認可プロセスに関する
NGOのECHAへの書簡


情報源:NGO letter on the REACH authorization process, December 16, 2013
By EEB, ChemTrust, ClientEarth, Health and Environment Alliance (HEAL), Health Care Without Harm (HCWH), Women in Europe for a Common Future (WECF), Greenpeace and ChemSec.
http://www.chemsec.org/images/NGO_letter_on_Authorization_process__to_ECHA.pdf

訳:安間 武 (
化学物質問題市民研究会
掲載日:2013年12月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/NGO/131216_NGO_letter_on_REACH_authorization.html


宛先:ギールト・ダンセット 欧州化学物質庁(ECHA)長官
写し:フランク・バチェラー 欧州化学物質庁(ECHA)管理委員会事務局及び内部調整担当

親愛なるダンセット殿

 私たち、下記に署名した環境健康団体は、REACH 認可プロセスの現状の実施についての私たちの懸念を表明するためにこの書簡を書いています。過去数か月の間、ECHA は、私たちが信ずるところによれば、REACH の目的に沿っていない、あるいは REACH の条文と一貫しないアプローチをとり、決定をしてきました。

 私たちの懸念は、下記の5点に関連します。

  1. ECHA は、REACH 条文と一貫性がない標準レビュー期間を確立した。

     ECHA は、4年、7年、及び12年の標準レビュー期間を提案した。対照的に REACH 条文(第60.8条)は、レビュー期間は”・・・全ての情報を勘案して個々の状況にしたがって決定されるべきである”と述べている。したがって、REACH が意図するように、個々の必要と脈絡を目標にした状況毎の決定がよい。

     SVHCs(高懸念物質)は、 製造者が申請する以前にすでに6年間候補リストに載ったままであるかもしれず、さらに申請後の認可手続きの期間(1.5年)を加えれば、このことは基本的には高懸念物質であると特定された物質が市場に10年〜20年とどまることを許すことになる。このような時間枠は、より安全な代替物質を市場に出そうとする動機(インセンティブ)を弱めるだけである。

  2. REACH 第61.2条で規定されるように新規代替物質に関する情報が利用可能となった時、認可のレビューのために確立された手順はない。

     我々は、リスク評価委員会(RAC)のいくつかの会議の間に、この問題に対して ECHA の注意を喚起してきた。認可がレビューされることを確実にすることは、申請者は彼らの申請がレビューされる可能性を無視できないので、レビュー対象の物質が代替される可能性を高めることになる。さらに、代替物質を製造する会社は代案を市場に出す可能性があることを知っている。このことは、彼らが手続き上の抜け穴から得ることができる利益は何もないことを理解し、より安全な代替を研究し、開発するための動機を高めることになる。手続きがそのようなケースが生じる前に確実に確立しておくことが必要であるというのが我々の見解である。

  3. ECHA における REACH 申請の討議の傍聴が制限されている。

     ECHA は、リスク評価委員会(RAC)と社会経済分析委員会(SEAC)の会議における認可討議の間に傍聴者が演説する/参加することを許さないことに決めた。この決定は、認可プロセスへの利害関係者の参加を損ねるものである。利害関係者代表がリスク評価委員会(RAC)と社会経済分析委員会(SEAC)の会議で見解を表明する機会を拒否することにより、ECHA は委員会の総会での開かれた透明性のある議論ではなく、密室での議論を推進している。我々は、NGOs、労働組合、又は産業団体の傍聴者からの数の多い発言を管理することが難しいことは理解するが、我々は無条件に傍聴者を除外することなく対応する他の方法があると考える。

  4. ECHA は企業秘密であるとする申請者による全ての主張をそのまま認めている。

     認可に関するパブリック・コンサルテーション(パブリック・コメント)にとって、どのような情報を決定し同意するかについて全ての利害関係者を関与させるプロセスが有用であるにもかかわらず、ECHA は認可申請において、企業秘密であるとするどのような主張をも受け入れている。その結果、意味のない暴露とリスク情報が公衆に広まっている。

     例えば、認可のための申請のあるものの中で使用されている総トン数は企業秘密であり、したがって認可に関するパブリック・コンサルテーションに参加したいと望む利害関係者らは、どの申請が最も関連あるかに関して情報に基づく選択をすることができない。

     さらに、何人かの社会経済分析委員会(SEAC)の委員によれば、公衆に属するべき多くの情報が、企業秘密の主張に関する ECHA の手引書はそのような可能性考えていないという事実にも拘わらず、企業秘密として主張されている。
     (原注1:ECHA-12-G-38-EN, Part 16 - Confidentiality Claims: How to make confidentiality claims, and how to write Art 119(2) confidentiality claim justifications)  その結果、パブリック・コンサルテーションの間、第三者は関連情報にアクセスすることができず、利害関係者の認可プロセスへの意味のある効果的な参加を妨げている。したがってEEB と ClientEarth は文書へのアクセス要求を提出したが(参照 ATD 54/2013)、ECHA は、文書が大部なので、代替に関するパブリック・コンサルサルテーションの締め切りまでに情報を提供することはできないと知らせてきた。認可プロセスの間に提供される全ての情報は、広く利用されている高懸念物質、高生産量物質、又はPBT(残留性、生物濃縮性、毒性)物質、及びvPvB(高残留性、高生物濃縮性)物質を参照しているのだから、公的に入手できるようにすべきである。

  5. 認可のための申請の品質が適切ではない。

     ECHA は、REAC H要求にしたがう重要な情報が欠如している申請を受け付けている。消費者製品中のフタル酸ビス(2-エチルヘキシル) (DEHP) は、申請された用途が極めて広範で範囲が不明確であるにも関わらず、どのようにしてその申請が適合チェックをパスしたのかが問題である。これらの申請が求めていることは、特定用途の認可ではなく、一般的認可である。

     提供される情報の完全性について、さらなる懸念が ECHA の科学委員会の中で表明された(例えば、暴露シナリオは特定用途に関連性がない)。

     ECHAは、事前申請会議で申請者と情報交換をしているのだから、意味のある適格な認可申請をさせるよう努力すべきである。

 私たちは、これらの現在のアプローチと決定は、高いレべルの保護と高懸念物質(SVHC)を安全な代替物質に置き換えることを確実にするというREACH の目標を損ねる恐れがあると信じわます。さらに私たち、これらの点に対する行動がとられないなら、将来の申請者は認可申請を文書による真剣なプロセスとみなすことなく、EUにおける高懸念物質の使用によるリスクと便益の受容性を判断することになると考えます。

 私たちは、プロセスが信用でき、認可プロセスのへ利害関係者の効果的な参加を確実にするために、これらの点に目を向けるよう要請します。

心をこめて

Jeremy Wates
Secretary General of the European Environmental Bureau
On behalf of EEB, ChemTrust, ClientEarth, Health and Environment Alliance (HEAL), Health Care Without



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