ケムセック(ChemSec) 2018年3月8日
プレスリリース
EUの化学物質承認プロセスは
より安全な代替物質の息を止める


情報源:ChemSec news March 8, 2018
PRESS RELEASE
EU chemicals approval process stifles safer alternatives
http://chemsec.org/eu-chemicals-approval-process-stifles-safer-alternatives/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年4月23日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ChemSec/News/
ChemSec_180308_EU_chemicals_approval_process_stifles_safer_alternatives.html

 ChemSec と ClientEarth による分析は、化学物質承認プロセスは有害な化学物質を製造している会社に不適切な影響を与え、より安全な代替物質に関する情報を抑え、それらを製造する会社の市場を制限していることを示している。

 EU の化学物質法 REACH の下では最も有害な化学物質は、いわゆる認可(authorisation)と呼ばれる許可が与えられた時にのみ、使用できる。

 その条文は明確である。もし物質のリスクが管理できないなら、より安全な代替物質がなく、また継続的な使用の便益がそのリスクに勝る場合にのみ、認可は与えられるべきである。

 しかし認可プロセスが行われてきた過程で、適切に実施されていない部分があることが明確となった。

 ChemSec と ClientEarth による分析は、より安全な代替物質の調査は認可を申請する会社にほとんど完全に委ねられていることを示している。

 これらの会社は、代替物質が見つからない場合にのみ与えられることになっている認可に非常に大きな経済的動機を持っている正にその会社である

 当然このことながら、このことは市場により安全な代替物質が存在していても認可が与えられるようなケースをもたらす。

 例えば昨年、繊維会社の グルッポ・コッレ(Gruppo Colle) は染料会社であるハンツマン(Huntsman) とダイスター(Dystar)によって製造されている、より安全な代替物質のことをその分析の中で言及することなく、羊毛の染色に二クロム酸ナトリウム(sodium dichromate)を使用するための認可を申請した。それにもかかわらず欧州委員会は認可を授与した。

 これは、3月5日に欧州委員会により発表された 10年間の REACH レビュー(REACH REFIT)(訳注1)が示したこと、すなわち REACH の問題は不十分な実施にあるということを描いている。我々の報告書は、いかにして認可プロセスが、早急に対処されるべきこの問題によって特に弱められているかを探査している。

 申請者の代替物質分析が実施確認の仕組みによってチェックされていない時には、より安全な物質を製造している会社にとって化学物質市場が不利になる偏りを生じる可能性が非常に高い。

 ChemSec の政策顧問フリーダ・ホックは次のように述べた。”世界で最も有害な化学物質のいくつかの明らかに不必要な使用だけでなく、このこともまた産業の活動分野のレベルを損なう。認可を申請する会社は、通常のビジネス・アプローチが許されるが、高潔な会社は代替物質提供者とともに、これらの決定のマイナス影響を受ける”。

 より安全な代替物質の調査で、あらゆる手が尽くされるようにするために、認可プロセスを取り扱う欧州化学物質庁(ECHA)は第三者が情報を提供することができる公開協議(public consultations)の場を設けた。

 しかし他の化学物質供給者はこれらの公開協議にほとんど参加しなかった。彼らが参加するためには、認可申請をする会社とのビジネス関係に対する潜在的なリスクがあるのに参加するということの価値を検討しなければならない。

 ClientEarth の弁護士アリス・バーナードは次のように述べた。”ECHA は、もし代替物質が存在するなら、他の供給者が公開協議で知らせるであろうという前提、及び、もし他の供給者の貢献がないなら、それは本当に代替物質が存在しないという前提−の上で取り組むということはできない”。

 ”ECHA は積極的に手を差し伸べ、これらの代替物質提供者を探す必要がある。我々の分析は、このことは多くの方法で達成することができる、活動分野のひとつのレベルを作り出し、安全な代替物質のためのビジネスの機会を拡大する”。

 認可プロセスのこのような問題は、EU法のもう一つの分野に類似している。

 合併事前審査(merger clearance)を申請する会社もまた、彼らの利害に最も合致する方法で市場を示したくなる。そして競走相手は、認可するかどうかを決定するために意思決定者が必要とする情報を持っているかもしれない。

 ヨーロッパの市場を守るこの情報を見つけるために、欧州委員会は、規制担当者が全体像を把握するのを支援するために、web 上の質問票や電話インタビューの実施のような積極的な支援を展開した。  欧州委員会は現在、生地メーカーであるオルメザーノ社(Ormezzano)から申請された化学物質を検討中である。それは昨年のグルッポ・コッレ(Gruppo Colle)の申請に非常に類似しており、同じ誤りを繰り返すであろう。欧州委員会と ECHA は、今回のケースに対して市場にある代替物質の新たな、そして改善された分析を適用する必要がある。

 バーナードは次のように付け加えた。”化学物質認可プロセスは欧州委員会がEU法の他の分野でどのように行動するかを調査することにより劇的に改善することができる。現在、認可を求める会社は、彼ら自身の宿題の採点を自分たちでしている。ECHA は、申請者の主要な競争相手、顧客、及び供給者に彼らの分析の信頼性をチェックするよう積極的に要求する必要がある”。

Read more: ChemSec and ClientEarth's analysis of the authorisation process, along with solutions to make it better.


訳注1:REACH REFIT 参考情報
REACH REFIT評価(REACHレビュー)

 


化学物質問題市民研究会
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