欧州食品安全機関(EFSA)2013年12月17日プレスリリース
EFSA 二つのネオニコチノイドと発達神経毒性との
潜在的な関係を評価


情報源:EFSA Press Release 17 December 2013
EFSA assesses potential link between two neonicotinoids and developmental neurotoxicity
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/131217.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年12月19日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/pesticides/131207_EFSA_two_neonicotinoids.html

訳注1:参考:EUのネオニコチノイド系農薬の規制(グリーンピース)

 ふたつのネオニコチノイド殺虫剤、アセタミプリド[訳注2]とイミダクロプリド[訳注3]は、人の神経系の発達に影響を及ぼすかもしれないと欧州食品安全機関(EFSA)は述べた。同機関の専門家らは、いわゆる発達神経毒性(DNT)に関するもっと信頼性のあるデータを提供するためにさらなる研究が実施されるとしても、この二つのネオニコチノイドへの許容曝露ガイダンスレベルを下げるを提案している。EFSAの植物防疫農薬及び残留委員会(PPR)は、農薬認可プロセスの一部としDNT調査の提出を義務付けるためのEUレベルでの基準の定義を要求している。これは、全てのネオニコチノイドを含んで、DNTの可能性ある物質を評価するための包括的なテスト実施戦略の開発を含むであろう。

 EFSA は、アセタミプリド及びイミダクロプリドがヒトの神経系、特に脳の発達を阻害する可能に関する木村−黒田[1]による最近の研究や既存のデータを検討して、欧州委員会の求めに応じて科学的意見を述べた。

 植物防疫農薬及び残留委員会(PPR)は、アセタミプリドとイミダクロプリドが学習や記憶のような機能に関係する神経と脳の構造の発達に有害影響を与えるかもしれないことを発見した。同委員会は、アセタミプリドとイミダクロプリドへの許容曝露のための現状のいくつかのガイダンスレベルは、発達神経毒性に対する保護が十分ではないかもしれず、そのレベルを下げるべきであると結論付けた。これらのいわゆる毒性参照値は、明らかな健康リスクなしに消費者が短期間及び長期間、曝露することができる物質のレベルに関する明確なガイダンスを提供する。例えば、急性参照用量(ARfD)、一日許容摂取量(ADI)及び 許容作業者曝露量(AOEL)等が含まれる。(これらの参照値が消費者や作業者を保護すために、どのように設計されているかに関する詳細については記者への注を参照のこと)

 EFSAはそのレビューに基づき、アセタミプリド及びイミダクロプリドのための下記の毒性参照値を変更するよう提案している。
  • アセタミプリドについて:現状の一日体重(kg)当たり0.07 mg/kg bw/per day というADI と AOEL 及び体重(kg)当たり0.1 mg/kg bw というARfD は、(一日)体重(kg)当たり0.025 mg/kg bw (per day)に下げられるべきこと。

  • イミダクロプリドについて:現状の一日体重(kg)当たり 0.08mg/kg/bw/day という AOEL と ARfD は 0.06 mg/kg bw/per day に下げられるべきこと。現状のイミダクロプリドの ADI は潜在的な発達神経毒性影響に対する適切な保護を提供すると考えられる。

 EFSAは、利用可能な証拠には制限があることを認め、もっと強固なデータを提供するために、さらなる研究が実施されるべきことを勧告する。しかし、植物防疫農薬及び残留委員会(PPR)は、既存のデータのレビューで提起された健康への懸念には正当性があると述べた。したがってEFSAは、EUにおける認可プロセスの一部として、発達神経毒性(DNT)調査の提出を義務付けるための明確で一貫性のある基準の確立を支持する。これは、まず実験室における細胞テスト(いわゆる in vitro)を行い、もしこの第一次テストで当該物質のDNTの可能性の懸念が提起されるなら、次に動物テスト(in vivo)に進むという段階的アプローチからなる統合DNTテスト実施戦略の開発を含むであろう。PPR委員会は、全てのネオニコチノイドがこのテスト戦略の一部として評価されるべきであると助言する。


記者への注:
 科学者らは、食品中の物質への許容曝露のためのガイダンスレベルを設定するために設計された広範な毒性参照値を開発した。それらは、体重当たり、通常は体重1kg当たり(物質の)mgで、繰り返し曝露の場合には1日当たりで表現される。
  • 急性参照用量(ARfD):明らかな健康リスクなしに短期間、通常は1日、摂取することができる物質の推定レベル

  • 一日許容摂取量(ADI):明らかな健康リスクなしに生涯にわたり毎日摂取することができる食品又は飲料水中の特定の物質の量

  • 許容作業者曝露量(AOEL):どのような有害健康影響もなしに作業者又は’運転員’が全ての経路に曝露してもよい活性物質の最大量

メディアに対する連絡先:
EFSA Media Relations Office
Tel. +39 0521 036 149
E-mail: Press@efsa.europa.eu


[1] Kimura-Kuroda J, Komuta Y, Kuroda Y, Hayashi Kawano H. Nicotine-like effects of the neonicotinoid insecticides acetamiprid and imidacloprid on cerebellar neurons from neonatal rats. PloS ONE 2012; 7 (2): e32432. doi: 10.1371/journal.pone.0032432


訳注1:EUのネオニコチノイド系農薬の規制
グリーンピース ブリーフィングペーパー 2013 年12 月 「EU で開始された、ネオニコチノイド系農薬の規制に関して」

訳注2:アセタミプリドについての日本の食品安全委員会の評価案
2011/4/15 第71 回農薬専門調査会幹事会 アセタミプリド評価書第2 版(案)

訳注3:イミダクロプリドについての日本の食品安全委員会の評価案
2010/8/4 第65 回農薬専門調査会幹事会 イミダクロプリド評価書第2 版(案)

訳注:関連情報
New York Times December 17, 2013 European Agency Warns of Risk to Humans in Pesticides Tied to Bee Deaths



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