HEAL 2023年5月10日
PFAS 汚染が地域社会に及ぼす実際の影響
ベネト、アントワープ、ドルドレヒト、
ロンネビー、コルセーの例とその対策


情報源:Health and Environment Alliance (HEAL), 14th March 2023
The real-life impact of PFAS pollution on communities - examples from Veneto, Antwerp, Dordrecht, Ronneby and Korsor and how to take action
https://www.env-health.org/the-real-life-impact-of-pfas-pollution-on-communities-
examples-from-veneto-antwerp-dordrecht-ronneby-and-korsor-and-how-to-take-action/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2023年5月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/ngo/230510_HEAL_
The_real-life_impact_of_PFAS_pollution_on_communities.html



 PFAS 化学物質の広範な生産と使用は、社会に健康、環境、経済面で多大な負担をもたらしており、その費用のほとんどは実際の汚染者ではなく、個人、地域社会、当局によって支払われている。 健康環境連合(HEAL) による新しいウェブサイトは、ヨーロッパ全土の地域社会に影響を与えている PFAS 汚染の 5 件の事例に光を当て、関係する国民や医療専門家が行動を起こすためのリソースを提供している [1]。

 ペルフルオロアルキル物質とポリフルオロアルキル物質の略称である PFAS は、最も悪名高い化学物質 PFOA、PFOS、GenX など数千の化学物質の一族である。 ヨーロッパ全土の約 17,000の場所が PFAS によって汚染されており、1,250万人のヨーロッパ人がこれらの化学物質で飲料水が汚染されている地域社会に住んでいると推定されており、これらの化学物質への暴露はさまざまな種類のがん、甲状腺疾患、免疫機能不全、及びホルモンのかく乱に関連しているとされている。 [2][3]。

 HEAL の新しいウェブサイトでは、これまで詳細に文書化されたことのない大きな汚染氷山(contamination iceberg)の一角である PFAS 汚染を抱えて生活することによる現実の影響に対処する、影響を受けた地域社会の 5 つの事例を詳しく紹介している。 このウェブサイトでは、これらの事件を詳細に取り上げており、責任と救済を求める地元コミュニティの取り組みや、これまでに知られている地方および国の対応に焦点を当てている。 重要なのは、このサイトは、影響を受ける地域社会や医療専門家が情報を得て、それぞれのレベルで行動を起こすためのリソースも提供していることである。
  • イタリアのベネト州では、35万人以上の飲料水が PFOA で汚染された。
  • ベルギーのアントワープでは、3M 社の化学工場の近くに住む人々の空気、土壌、血液から過剰な PFOS が検出された。
  • オランダのドルドレヒトでは、75万人の空気と水が PFOA と GenX で汚染されていることが判明した。
  • スウェーデンのロンネビーでは、軍の空港基地で使用された消火泡によって、地元住民の飲料水が数種類の PFAS で汚染された。
  • デンマークのコルセーでは、牛と農地が PFOS と PFHxS で汚染された。
 ”PFASの広範な使用により、取り返しのつかない有害な汚染遺産が生み出され、実際の汚染者ではなく個人や地域社会が健康、社会、財政の負担を負っている”と HEAL の健康・化学物質プログラムリーダーのナターシャ・シンゴッティ は述べている。

 ”EU 全域での強い保護的な制限を支持することに加えて、我々は欧州および各国の意思決定者に対し、浄化、汚染者の法的および財政的責任、適切な長期的な健康監視と影響を受ける地域社会のフォローアップのための緊急措置を講じるよう要請する”。

 環境から PFAS を除去するには時間もコストもかかり、場合によっては不可能である。 環境修復の費用は、EEA 31か国(訳注:EEA(欧州経済領域)欧州自由貿易連合 (EFTA) 加盟国が欧州連合 (EU) に加盟することなく、EUの単一市場に参加することができるように、1994年1月1日にEFTAとEUとの間で発効した協定に基づいて設置された枠組み。ウィキペディア))すべてとスイスだけで 8 億 2,100 万ユーロ(約1,200億円)から 1,700 億ユーロ(約24兆円)と推定されている [4]。 PFAS 化学物質への暴露は、多額の医療費も伴う。ヨーロッパでは推定年間医療費が 520 億ユーロ(約7兆5,000万円)から 840 億ユーロ(約12兆円)の範囲にある [5]。

 2023年2月、EU 化学物質庁 (ECHA) は、水、食品、家庭内に、その結果としてほとんど全ての人々の体内に存在する PFAS のような物質を制限することを目的として、数千種類の PFAS 化学物質の製造と使用を EU 全体で制限する草案を発表した[6](訳注:EU considers ban on 'forever chemicals', urges search for alternatives / February 1, 2023 REUTERS ロイターは、禁止は2026年か2027年に発効し、18か月から12年間の猶予期間を与える可能性があるとしている。)。HEAL のウェブサイトでは、この重要な取り組みにあたって、地域社会の修復と適切な健康フォローアップの保証がいかに欧州および国家の意思決定者の優先事項であり続けなければならないかを説明している。

連絡先
 HEALの政策専門家または影響を受けるコミュニティの代表者と話すには、健康環境アライアンス (HEAL) の上級コミュニケーション責任者、Ivonne Leenen (ivonne@env-health.org) までご連絡ください。

編集者へのメモ:

1. www.env-health.org/BanPFAS は、PFAS 汚染による現実の影響に光を当てるための健康環境同盟 (HEAL) によるキャンペーンである。
2. https://foreverpollution.eu/
3. http://norden.diva-portal.org/smash/record.jsf?pid=diva2%3A1295959&dswid=5929
4. http://norden.diva-portal.org/smash/record.jsf?pid=diva2%3A1295959&dswid=3161
5. http://norden.diva-portal.org/smash/get/diva2:1295959/FULLTEXT01.pdf
6. https://echa.europa.eu/fr/-/echa-publishes-pfas-restriction-proposal


化学物質問題市民研究会
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