HEAL 2022年10月12日
市民社会組織は EU が永遠の化学物質 PFAS を
禁止するという約束を守るよう促す


情報源:Health and Environment Alliance (HEAL), 12th October 2022
Civil society groups urge the EU to keep
their promises to ban 'forever chemicals' PFAS

https://www.env-health.org/civil-society-groups-urge-the-eu-
to-keep-their-promises-to-ban-forever-chemicals-pfas/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2022年11月2日
このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/ngo/221012_HEAL_Civil_society_groups_
urge_the_EU_to_keep_their_promises_to_ban_forever_chemicals_PFAS.html



 46 の欧州市民社会組織は、EU 加盟国と欧州委員会に対し、2025 年までに消費者製品中の全ての PFAS を禁止し、2030 年までに全ての用途で禁止することを緊急に要求している。

 2年前、欧州委員会は持続可能性のための化学物質戦略を発表した(訳注1)。これには、ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル化合物である PFAS (「永遠の化学物質」としても知られている) を全ての非必須用途で段階的に廃止するという取り組みが含まれている [1]。今こそ、この約束を果たし、PFAS の段階的廃止が可能であることを世界に示す時である。

 PFAS 汚染は制御不能であり、いくつかの永遠の化学物質への暴露は、肝臓の損傷から、子どもによる定期的な予防接種への反応の低下、特定のがんまで、一連の健康への悪影響に関連している[2][3]。 PFAS は地球全体を汚染しており、世界中のほとんどの人々の体内で発見されている [4]。

 出産前であっても、赤ちゃんは母親の子宮内ですでに PFAS にさらされている。 PFAS は、食品、飲料水、及びペルソナルケア製品や食品包装などの日常的に使用される消費財を通じて体内に入る。ヨーロッパでは、10代の 14% の体内の PFAS レベルが健康上の上限を超えている[5]。

 ”我々が話しているのは、1世紀前には地球上に存在せず、今では隅々まで汚染されている、完全に人間が作った化学物質のグループのことである。これらの有害な化学物質にさらされることに誰も同意していない。暴露しない選択肢はない。今、我々は今後数十年間、この有害な遺産と一緒に暮らさなければならない。我々にできることは、PFAS の使用と生産を今すぐ禁止することで、この有害な負担を増やさないようにすることである”」と、CHEM Trust の PFAS キャンペーン担当者であるジュリー・シュナイダー博士は言う。

 この要求を強調するために、46 の健康と環境の市民社会組織が PFAS 禁止宣言(マニフェスト)発表した。それは 10 の要求をリストし、当局と企業に PFAS 汚染負荷の追加をやめ、既存のものに対処するよう呼びかけている。

 マニフェストの署名者は、EU 当局に直ちに行動するよう促し、欧州の市民社会組織に対し、彼らの名前を PFAS 禁止マニフェストに追加することにより、行動の呼びかけを支持するよう要請する。

 チェコの NGO である Arnika のキャンペーン マネージャーのカロリーナ・ブラコヴァは次のように述べている。欧州委員会と EU 加盟国は約束を守り、グループ全体として、理想的には 2025 年までに消費者製品への使用を禁止する PFAS の提案を迅速に進める必要がある。”

ノート
 PFAS 禁止マニフェストは、CHEM Trust、Arnika、Tegengif、Health and Environment Alliance (HEAL)、EEB、ClientEarth、及び BUND によって開始され、46 の市民社会組織によって署名されている。マニフェストは、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語 (イタリア語も近日公開予定) で入手できる: https://banpfasmanifesto.org/en/

1欧州委員会は、2020 年 10月 14日に、欧州グリーン ディールの重要な公約である EU の汚染ゼロ目標の一環として、持続可能性のための化学物質戦略 (CSS) を発表した(訳注1)。 CSS では、欧州委員会は”泡消火剤やその他の用途での全ての PFAS をグループとして禁止し、社会にとって不可欠な場合にのみ使用を許可する”ことを約束した。

2 PFAS、ペルフルオロ及びポリフルオロアルキル物質は、2018 OECD 定義によると、4,700 を超える人工化学物質の大きなファミリーである(訳注2)。『ペル及びポリフルオロアルキル物質 (PFAS) の新しい包括的なグローバル データベースに向けて: ペル及びポリフルオロアルキル物質 (PFAS) の OECD 2007 リストの更新に関する要約レポート。リスク管理シリーズ No.39』

 1940 年代後半に導入されて以来、PFAS は、食品包装や衣料品から電子機器、航空、消防用発泡剤に至るまで、ますます幅広い消費財や産業用途で使用されてきた。それらは、炭素-フッ素結合のために、油と水の両方をはじく特性と、高温に対する高い安定性と耐性の用途に使用される。しかし、有機化学における最強のこの結合は、環境内での極端な持続性にも関与しており、「永遠の化学物質」と呼ばれる所以である。

3 2021 年 5月 HEAL 記事『PFAS 化学物質が女性、妊娠、人間の発育にどのように影響するか:保健関係者らは、それらを段階的に廃止するための緊急の行動を求める』 及び、食物連鎖における汚染物質に関する EFSA パネル 2020 年『食品中のペルフルオロアルキル物質の存在に関連する人間の健康へのリスク』 EFSA ジャーナル 18(9), p.e06223 を参照のこと。

4 Environ. Sci. Technol. 2022, 56, 16, 11172-11179『ペル及びポリフルオロアルキル物質 (PFAS) の新しい惑星境界の安全な運用空間の外』 及びガーディアン紙 2022年9月23日記事『調査された全ての臍帯血から”永遠の化学物質”が検出された』を参照のこと。

5 HBM4EU 紙 2022年4月号 European Human Biomonitoring Initiative の55頁 『The body burden of PFASs:cause for concern』を参照のこと。

「ケムトラスト」について
 CHEM Trust は、英国で登録された慈善団体である CHEM Trust と、ドイツを拠点とする慈善団体である CHEM Trust Europe eV との連携団体である。両法人は、CHEM Trust という名前のプロジェクトで緊密に協力している。我々の最も重要な目標は、合成化学物質が野生生物や人間に長期的な悪影響を与えるのを防ぎ、そのような危害を引き起こす化学物質をより安全な代替物に置き換えることを確実にすることである。 EU 透明性登録番号(EU Transparency Register Numbe): 27053044762-72

「アルニカ」について
 Arnika (チェコ共和国) は、2001 年に設立された非政府組織である。その使命は、国内外の将来の世代のために自然と健全な環境を保護することである。 Arnika は当初から、化学的に危険な製品から消費者を保護することに取り組んでいる。

「解毒剤(Tegengif)−全ての有害物質をなくす」について
 Tegengif は、アムステルダムに拠点を置く非営利団体である。我々の目標は、毒性のない生活環境である。我々は、魅力的な研究、キャンペーン、政策への影響を通じて、有害化学物質への消費者の日常的な暴露に対する一般の意識を高める。意識が高まることで、有害物質を含まない製品の需要が刺激され、有害物質のない世界のための規制に対する一般の支持が高まると考えている。

「健康環境同盟(HEAL)」について
 HEAL は、欧州連合 (EU) 及びそれを超えて、環境が人間の健康に与える影響に取り組む先導的な非営利団体である。 HEAL は、地球と人間の健康を促進し、汚染の影響を最も受けている人々を保護する法律と政策を策定し、健康のための環境行動の利点について意識を高めるために活動している。 HEAL の EU 透明性登録番号: 00723343929-96。

「欧州環境局 (EEB)」 について
 EEB は、ヨーロッパ最大の環境市民団体のネットワークであり、38 か国から 180 のメンバー組織が集まっている。気候変動、生物多様性、循環経済、大気、水、土壌、化学汚染、産業、エネルギー、農業、製品、とりわけ設計及び無駄の防止に関する政策など、ヨーロッパで最も差し迫った環境問題に EU がどのように対処しているかを監視し、助言し、影響を与えている。

「クライアントアース」について
 ClientEarth は、法律を利用して、住民のために、そして住民とともに地球を保護する体系的な変化を生み出す非営利団体である。我々は、世界中のパートナーや市民とともに、気候変動に取り組み、自然を保護し、汚染を食い止めている。我々は業界と政府に責任を負わせ、健全な世界に対する全ての人の権利を守る。ヨーロッパ、アジア、及び米国のオフィスから、人と自然が共に繁栄できる地球の未来を築くために、法律を策定、実施、施行している。

「環境自然保護協会−ブント」について
 BUND/Friends of the Earth Germany は、65 万人を超えるメンバーとサポーターを擁する、非営利、無党派、草の根組織である。我々は、気候危機と闘い、種の絶滅を防ぎ、経済と社会の社会生態学的変革のために行動を起こす。我々は 2,000 を超える地域のグループとイニシアチブで組織されており、献身的で熟練した人々が自然と環境の破壊に対して行動を起こしている。

訳注1:持続可能性のための EU 化学物質戦略
訳注2:PFAS 定義(2018 OECD)


化学物質問題市民研究会
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