■概要
EUでは2006年12月にPFOSの上市及び使用制限に関する指令(DIRECTIVE 2006/122/EC)が出されたので、その概要を紹介します。これは、「1976年危険物質・調剤の上市及び使用に関する指令(Directive 76/769/EEC)」を修正/追加するものです。
PFOSは、水溶性と油溶性を併せ持つため界面活性剤として、撥水剤、防水剤、防汚剤などに利用され、また半導体(反射防止膜及びフォトレジスト)、フォトマスク(半導体及び液晶ディスプレイ用)、写真感光剤用途、メッキ(クロムメッキ等)、泡消火剤、医療機器(カテーテル及び留置針)、電気電子部品(プリンター・複写機用転写ベルト・ゴムローラー等)等で必須とされています。
非常に高い難分解性、高蓄積性があり、有毒性も疑われており、同様な過フッ素化合物PFOAとともに、世界中のあらゆる場所で生物、人間の血液、河川、地下水等から検出されています。
現在、ほとんどの用途で自主的に使用が中止されていますが、代替物質のない特定用途では、少量使用されています。
PFOS/PFOA 等、過フッ素化合物の問題については、当研究会の下記ウェブページをご覧ください。
地球を汚染する過フッ素化合物類 PFCs の問題
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/pfoa/pfoa_master.html
■ 経緯
- 2002年:OECD危険評価:残留性、哺乳動物種に蓄積性、毒性がある
- 2005年3月:EU健康環境リスク科学委員会(CHER):上記確認
- 2005年12月:欧州委員会: PFOS規制の提案
- 2006年2月:欧州議会 環境・公衆衛生・食品安全委員会で審議
- 2006年5月:欧州議会 経済社会委員会が提案支持
- 2006年10月:欧州議会(第一読会) 採択
- 2006年12月:閣僚理事会 政治的合意
- 2006年12月26日 PFOS制限に関する欧州議会・理事会指令
DIRECTIVE 2006/122/ECOF
(危険物質・調剤の上市及び使用の制限に関する指令 Directive 76/769/EECの改正)
■本文概要
- 2002年OECDの評価: PFOSは哺乳類に難分解性、物蓄積性、有毒性の懸念物質
- 健康環境リスク科学委員会(SCHER): PFOSはリスク削減措置が必要
- PFOSは長距離移動と有害影響によりストックホルム条約のPOPsの基準を満たす
- 健康と環境を万るために、PFOSの上市と使用は制限されるべき
- 使用量が少ない場合は、暴露リスクが小さいので、現状では制限が免除される
- 環境への放出を最小にすれば、航空産業、半導体産業、写真産業での使用はリスクを及ぼすようには見えない
- 泡消化剤の代替は最終決定前に評価が行われるベき
- 環境放出削減措置が取れないなら、金属メッキでの使用制限に同意する
- 新規製品にのみ適用され、使用中又は中市場にあるものには適用されない
- PFOSを含む半製品及び成形品も制限されるべき
- 規制の免除は適切な代替のないエッセンシャル・ユースについてのみ許される
- PFOA及び関連物質はPFOSと同様なリスクを持つように見えるので、リスク評価を継続し、より安全な代替物質を探し、上市・使用の禁止も検討すること
- 加盟国は2007年12月までに採択し、2008年6月から実施すること
■ 76/769/EEC指令への追加(Annex I)概要
- 物質および調剤の構成成分として0.005重量 %以上は使用及び上市禁止
- 半仕上げ製品・成形品中では0.1 %重量以上であるものは禁止
- 織物及びコーティングされた製品で1μg/m2以上のものは禁止
- フォトレジスト、反射防止コーティング 、フィルム、紙、印刷製版用コーティング、クロムめっき、電気めっき、航空用作動液 での使用は可
- 2006年12月以前に市場にあった泡消火器は2011年12月まで使用できる
- 20008年12月までに加盟国は許可したプロセスとPFOSの量をECに届ける
- 新たな情報又は技術的及び経済的に可能な代替物が入手可能になった場合には、PFOSの使用許可を見直し、エッセンシャルユース以外は禁止する
- 欧州委員会は進行中のPFOA評価の検証を継続し、上市と使用の制限を含むリスク削減に必要な措置を提案する。
関連情報
■POPs条約での取り扱い
http://www.meti.go.jp/press/20071207001/press_POPRC3_071206_set.pdf
- 発効:2004年5月17日
- 対象物質の特性:(1)毒性 (2)難分解性 (3)生物蓄積性 (4)長距離移動性
- 加盟国の主要な義務
・製造・使用、輸出入の原則禁止(附属書A)
・製造・使用、輸出入の制限(附属書B) (例えばDDT)
・新規POPsの製造・使用防止のための措置
・非意図的生成物(附属書C)の排出の削減及び廃絶(PCDD,PCDF,PCB, ヘキサクロロベンゼン)
- 現在の対象12物質
アルドリン、クロルデン、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、マイレックス、トキサフェン、PCB、DDT、ダイオキシン(PCDD)、ジベンゾフラン(PCDF)
- 2007年11月/POPs検討委員会第3回会合(POPRC3)
(1)クロルデコン、リンデン、ペンタブロモジフェニルエーテル、ヘキサビフェニル、PFOS の5物質ついては、第4回締約国会議(2009年5月開催予定)への勧告(附属書A(廃絶)又はB(制限)への追加)を決定
(2)ペンタクロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、α−HCH、β−HCHについては、次回会合までに危険の管理に関する評価案を作成することが決定
(3)新たに提案された1物質(エンドスルファン)については、議論が持ち越し
■POPs対応の代替困難用途に関する調査
2007年5月実施の国内調査に基づき代替困難用途としてストックホルム事務局に通知 (経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/03kanri/c05temp4.htm
- 半導体用途(反射防止膜及びフォトレジスト)
- フォトマスク(半導体及び液晶ディスプレイ用)
- 写真感光剤用途
- メッキ(クロムメッキ等)
- 泡消火剤
- 医療機器(カテーテル及び留置針)
- 電気電子部品(プリンター・複写機用転写ベルト・ゴムローラー等)
■我が国の化審法での取り扱い
- 2002年:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
- PFOSとPFOA:化審法第二種監視化学物質に指定
(難分解性あり、高蓄積性なし、人への長期毒性の疑いあり)
規制:なし
- 2009年5月:PFOSがPOPs条約で禁止(付属書A)又は制限(付属書B)勧告
- 2009年11月:PFOSは化審法第一種特定化学物質となる可能性がある(*)
- 化審法第一種特定化学物質は原則禁止。使用要件のひとつは「当該用途が主として一般消費者生活に供される製品の製造又は加工に関するものでない・・・」(*)
したがって、POP条約でエッセンシャルユースとして認められても、現在の化審法ではその用途での使用は認められない場合がありえる(*)
注(*)2008年2月19日開催 化審法見直し合同WGでの説明(資料4、11,12頁)
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