国連人権理事会メディアセンター 2017年3月7日
農薬は”世界の人権にとっての懸念”であるとして、
国連の専門家らが新たな条約を促す


情報源:United Nations Human Rights Council, Media Centre, 7 March 2017
Pesticides are “global human rights concern”, say UN experts urging new treaty
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=21306&LangID=E

訳:安間 武/化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2017年3月9日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/UN/
UNHR_News_170307_Pesticides_are_global_human_rights_concern.html


【ジュネーブ 2017年3月7日】 国連の二人の専門家が、農業における危険な農薬の使用を規制/廃止し、持続可能な農業手法を目指すための包括的な新たな世界条約を求めている。彼らは、”農薬の過剰な使用は、人の健康に、そして環境に非常に危険であり、それらが食料安全保障(food security)にとって極めて重要であると主張することは誤解を招く”と、述べている。

 食料への権利に関する特別報告者(Special Rapporteur)(訳注1)ヒラール・エルバーと、有害物質に関する特別報告者バシクット・トゥンジャクはジュネーブの人権理事会に、様々な国に広がっている有害な農薬の製造、使用、及び農薬からの保護の基準は、二重基準になっており、そのことは人権に深刻な影響を及ぼしていると述べた。

 特別報告者らは、農薬は毎年、推定20万人以上の急性中毒死の原因となっている。死者の圧倒的多数、約99%が、健康、安全、環境に関する規制が弱い開発途上国で起きている。

 農薬への慢性暴露は、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ホルモンかく乱、発達障害、及び不妊症に関連している。農民と農場労働者、農園の近くに住む地域住民、先住民、及び妊婦と子どもたちは特に農薬暴露に脆弱であり、特別の保護が求められる。

 その専門家らは、有害な農薬から子どもたちを守る国家の責任を特に強調した。彼らは、農薬で汚染された食物、偶発的な中毒、幼児期の慢性暴露に関連する疾病と障害により死亡したり傷ついた子どもたちの数が多いことに言及し、また児童労働の最悪の形態のひとつである世界の食物供給チェーンで働く子どもたちの有害な農薬への曝露に関して報告した。

 専門家らは、ある農薬は環境中に数十年間残留し、食料生産が依存する生態系全体に脅威を及ぼすと警告している。過剰な農薬使用は土壌と水源を汚染し、生物多様性の喪失を引き起こし、害虫の天敵を殺し、食物の栄養価を下げる。そのような過剰な使用の影響はまた、世界中で国家の経済に驚異的なコストを負担させる。

 専門家らは、ネオニコチノイド系農薬の使用は、世界中でミツバチの生息の組織的な崩壊の原因であるとされているので、特に懸念がある。そのような崩壊は、作物種の 71%はミツバチが花粉媒介者である農業の根幹を脅かすと、彼らは言う。

 現在、いくつかの国際条約が少数の農薬の使用からの保護を提案していることは認める一方、ライフサイクルを通じて農薬をの大多数を規制する世界条約はまだ存在しておらず、人権保護の枠組みの中で重大な乖離を残していると、彼らは強調した。

 ”農薬の製造、販売、及び使用の許容レベルに関して調和のとれた厳格な規制がなければ、厳格な施行メカニズムが弱い国の貧しい脆弱な地域社会は、農薬の有害影響の負荷を感じる”と彼らは強調した。

 特別報告者らは、農民の農薬の不適切な使用によるという主張へのすり替えとともに、ある農薬の有害性や影響の規模に関する農薬産業による否定を指摘している。彼らは、まだ問題にされていない攻撃的で不道徳な市場戦術及び、政治家に影響を及ぼし、科学的証拠に異議を唱えるために、強力な化学産業によって費やされる巨額の金についての懸念を表明している。

 食料に関する特別報道者は、化学物質を生物学で置き換えるアグロエコロジーにおける発展を強調し、そのアプローチは、適切な食料と健康に対する将来の世代の権利を損なわずに、全世界の人口に食料を供給し、養うために十分な生産を生み出すことが可能であると述べた。そして有害化学物質に関する特別報告者は、産業に対する国家の強い規制圧力の後にだけ、有害な農薬とその他の有害化学物質に対するより安全な代替が開発され、採用される事例を示した。

  農業への新たなアプローチを促しつつ、彼らは、”農薬は世界に食料を供給するために必要であるという作り話を覆し、より安全で、より健康な食料と農産物に移行するための世界的なプロセスを作り出すべき時である”と述べている。

「了」

 ヒラール・エルバー氏(トルコ)/Ms. Hilal Elver は 2014年に国連人権理事会により食料への権利に関する特別報道者に任命された。彼女は研究教授であり、カリフォルニア大学法科大学院レズニック食料法政策センターの世界的に著名なフェローである。彼女はアラスカ大学法大学院の Ph.D であり、 カリフォルニア大学法科大学院の SJD (Scientiae Juridicae Doctor)である。彼女の教員歴は、アラスカ大学法学部から始まった。

 バシクット・トゥンジャク氏(トルコ)/Mr. Baskut Tuncak は、2014年に国連人権理事会により環境的に適切な管理及び有害物質と廃棄物の処分の人権へのかかわりに関する特別報告者に任命された。

 特別報告者は、人権理事会の特別手続(Special Procedures)として知られているものの一部である。国連人権組織中の独立専門家の最大の団体である特別手続(Special Procedures)(訳注2)は、理事会の独立した事実発見・監視メカニズムの一般的名称である。特別手続の任務保持者(Mandate-holders)は、特定の国の状況又は世界中のあらゆる場所におけるテーマ別課題に対応するために人権理事会によって指名された独立した人権専門家である。彼らは国連職員ではなく、どのような政府又は組織からも独立している。彼らは彼らの個人的能力の範囲内で任務を果たし、仕事に対する給与は受けない。

(*) 報告書全文 Report of the Special Rapporteur on the right to food

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訳注1:特別報告者
用語集(キーワード検索:特別報告者)

訳注2:特別手続
特別手続(Special procedures)の活用方法/日本弁護士連合会

訳注:関連情報
Guardian UK, 7 March 2017 UN experts denounce 'myth' pesticides are necessary to feed the world

Pesticide Action Network (PAN) International, March 7, 2017 International Network Welcomes UN Special Rapporteur’s Call for Global Regulation of Pesticides



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