IPEN 2018年9月
POPRC14 に関する
IPEN の見解へのクイックガイド


情報源:IPEN September 2018
Quick Guide to IPEN Views on POPRC14

https://ipen.org/sites/default/files/documents/
Quick%20IPEN%20Views%20POPRC14%20%2010%20Sept%202018.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年9月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/
September_2018_Quick_Guide_to_IPEN_Views_on_POPRC14.html

■パーフルオロヘキサンスルフォン酸およびその塩 (PFHxS)
 PFHxS 及び関連化合物は、水、土壌及び堆積物中で残留性があり、加水分解、水中、光分解、又は嫌気条件を含む環境中で分解しない。オクタノール/水分配係数(log Kow)を実験的に測定すること、又は生物濃縮係数(BCF) 及び生物蓄積係数(BAF)を決定することはできないが、1 よ」り大きい PFHxS の生物濃縮係数(BMF)が、とりわけ生物蓄積性を示す北極の鳥/魚、北極のシロクマ/ワモンアザラシ、イルカ/魚、及び魚/動物プランクトンを含む食物連鎖中で観察されている。 PFHxS の人体内での半減期は、測定された全てのパーフルオロアルキルスルホン酸類(PFAS)の人体内での半減期の中で最長である。 PFHxS は長距離移動を経て、北極の大気、堆積物、雪、氷、土壌、生物相(人間を含む)、及び南極の生物相及び雪に見いだされる。生体内(in vivo)及び疫学的研究は、PFHxS が肝臓機能、甲状腺、及び子どもにおけるワクチン効果の低減と感染症及び喘息の罹患率の増加をもたらす発達中の免疫系に有害影響を及ぼすことを示している。 PFHxS 暴露と乳がんの顕著な関連がグリーンランドのイヌイット女性の中に見られた。PFHxS は母乳中に広く見いだされ、母親と赤ちゃんの臍帯血を含む人間の血液中で最もしばしば検出され一般的な PFAS のひとつである。
PFHxS は付属書Eの基準に合致するので、付属書F評価に進めるべきである。

■パーフルオロオクタン酸 (PFOA)
 PFOA のリスト勧告を完全なものにするために、残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)は、 PFOA 関連物質、非意図的生成、及びいくつかの提案される適用除外を含んで追加的な論点を検討しなくてはならない。
  1. スルフルラミド(Sulfluramid)
      PFOS と PFOSF の収載は、”ハキリアリ属(Atta)とヒメハキリアリ属(Acromyrmex)の葉切り蟻の抑制のための昆虫用餌剤”として容認されている。しかし、付属書へのその収載はスルフルラミドを明示的に指名していない。その結果、スルフルラミドは、他の蟻種への使用を含んで広く使用されており、(スルフルラミド材である) PFOS の環境への直接的な放出をもたらしている。スルフルラミドはまた、 PFOA に分解することができ、したがって PFOA 関連物質であるとみなされるべきである。 PFOA 収載中にスルフルラミドを含めることは”二重規制”にあたらず、収載勧告に全ての PFOA 関連物質を含めるという委員会の合意を反映するものである。

  2. 非意図的な生成と放出
     PFOA とその他の広範な PFCA 物質はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(商品名テフロン)の熱分解の間に生成される可能性があり、非意図的な生成及び放出がヨーロッパの自治体廃棄物用焼却炉で測定されている。これはまた野焼きにも当てはまる。第5条及び付属書 C1 は締約国が非意図的に生成される POPs を低減し除去するのを支援するために設計されており、量に基づく収載を除外するものではない。 PFOA は、潜在的な生成と非意図的な放出を補足し、 PFOA の生成と非意図的な放出を回避するための BAT/BEP を開発するために、付属書Cに収載されるべきである。

  3. 医療用テキスタイル膜、水処理設備フィルター、製造プロセス、及び廃水処理
     非フッ素系代替物を含む技術的又は/及び経済的に実行可能な代替がこの広い用途のために存在する。IPEN は、”医療用テキスタイル、水処理設備フィルター、製造プロセス、及び廃水処理用に意図された薄膜の適用除外は考慮されるべきではない”とする補遺草稿中の声明を支持する。

  4. 他の場所で再処理してテトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)にすることを可能にする中間体、パーフルオロオクチルヨージド(PFOI)の移動
     アークロマ社は、施設内製造プロセスで生成されるので、中間体として国境を超える PFOI の移動を適用除外し、1-H-PFO を PFOA 関連物質から外すことを提案している。提案は、閉じた系の施設内製造に限定した中間体だけに適用除外を制限する条約を損なう(現在は HCB と DDT だけが許されている)。同条約は、製造プロセスは POPs 特性を持つ他の化学物質の生成をもたらすべきではないと特に言及しているが、1-H-PFO、TFE及び HFP は全て POPs 特性を持っている。多くの国では、EU の実践のような”厳格な”措置は効果的に実施又は施行されていない。さらに、提案される適用除外は、”再処理”という名の下に、発展途上国及び移行経済国での廃棄物投棄にドアを開くことになる。アークロマ社自身は、最近売りに出されている株未公開のある会社が所有しているので、その要求は近い将来、無意味になるかもしれない。提案された適用除外はストックホルム条約とその目的をむしばむので、勧告されるべきではない。

  5. 医療用機器と植込み型医用機器
     事業者団体は、いくつかの国で製造されている PTFE は PFOA を含んでいるかもしれないので、世界的な適用除外が製品分類の曖昧リストに付与されるべきであると主張している。しかし、 PFOA を使用しない代替医療機器は全ての規制要求を満たしており、市場で入手可能であり、使用されている。もし特定の製品の名前が挙げられず、また代替についての情報がないないのであれば、世界的適用除外は勧告されるべきではない。これらの二つの使用分類のために適用除外の勧告はなされるべきではない。

  6. 印画紙及び印刷プレートに塗布される写真コーティング
     途上国及び移行国を含んで、ディジタル画像に置き換わっているので、その使用はすたれている。IPEN は補遺草稿中の、”印画紙及び印刷プレートに塗布される写真コーティングのための適用除外は必要であるとみなされるべきではない”とする声明を支持する。

  7. 自動車部品
     自動車産業は2008年には、 PFOA の廃止の必要性は認識しており、PFOA 関連物質のリストは、PFOA の収載が提案された 3年前に提供された。同産業は、代替物質は広く入手可能であり、PFOA を含まない特定の用途のための改造部品を導入する技術的能力があることを認めた。しかし、自動車専業は代替のコストを払うことに消極的であるように見え、継続して PFOA を使用するためのコストを政府に外部化することを」望んでいる。これらの理由のために、現行サービス部品のための適用除外は考慮されるべきではなく、旧式部品のための適用除外は、もしそれらが明確に部品名を指定し、適切に正当化できる場合にのみ考慮されるべきである。

  8. 泡消火剤
     PFOA 及びその他のフッ素系物質を含有する泡消火剤は分散的な使用であり、極めて高価につく水汚染、土壌汚染、及び人間への主要な暴露であり、その結果、消火訓練の結果を含んで、世界中の多くの場所で有害な健康影響をもたらしている。 PFOA 又はフッ素系物質を含まない代替物質は主要空港で使用されており、PFOA 含有泡消火剤と同様に機能を発揮している。 締約国は、”泡消火剤を条項の定義に合致するとみなしておらず”、” PFOA を含有する泡消火剤は’備蓄品’としてみなすべきである”と、事務局に答えていることに UNEP/POPS/POPRC.14/INF/6 は言及している。継続する POP の分散的使用は条約の目的と一致しない。もしフッ素を含まない泡消火剤の利用可能性及び効果が認められるなら、この用途のために、又は PFOA を含む泡消火剤の既存備蓄(existing stockpiles) の継続的な使用のために適用除外が与えられるべきではない。
PFOA は、提案された適用除外はどれも適切に正当化されなかったので、適用除外なく付属書Aへの追加を勧告されるべきである。どのような適用除外の考慮も、具体的であり、代替物質についての主張のための独立した情報源を含み、人間の健康と環境を POPs からの保護を優先するという条約の目的と一致すべきである。 PFOA は、非意図的な生成と人為的な発生源からの放出を阻むために付属書Cに追加されるべきである。スルフルラミド(Sulfluramid)は PFOA 関連物質であり、勧告リストに追加されるべきである。

■パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)評価
 PFOS は条約の付属書Bに収載されており、 COP9 は許容できる目的と具体的な適用除外の継続されるべき必要性を評価することが求められている。
  1. 写真画像
     写真画像は、途上国及び移行国を含んで、ディジタル画像にとって代わられているので、 PFOS の使用は旧式である。この許容可能な目的は終了されるべきである。

  2. 半導体(半導体のためのフォトレジスト及び反射防止膜;化合物半導体及びセラミックフィルターのためのエッチング剤)
     世界の半導体産業は、 PFOS の廃止は完了したと公的に述べている。この許容可能な目的は終了されるべきである。

  3. 航空機用油圧作動液
     これは PFOS 使用のオープンアプリケーションであり、廃止のために優先付けられるべきである。油圧作動液は PFOS 以前に存在していたし、代替物質は商業的に入手可能であり、実施されている。多くの締約国がこの許容可能な目的のためにもはや PFOS の使用を報告しておらず、通知を撤回している。この許容可能な目的は終了されるべきである。

  4. 金属メッキ(閉鎖系では硬質金属メッキだけ)
     化学的及び非化学的代替は実現可能であり、世界的に入手可能である。代替についての情報のギャップと経験の相違はあるが、廃止を加速する必要があり、金属メッキにおける PFOS 使用の許容できる目的は、具体的な適用除外に転換されるべきである。

  5. ある種の医療機器
     医療機器における PFOS 使用に対する代替は開発されており、商業的に入手可能である。 INF9 は、この目的のために PFOS を使用する締約国はなく、この許容可能な目的は終了されるべきである。

  6. 泡消火剤
     フッ素を使用しない製剤を含んで、非 PFOS ベースの泡消火剤は、 PFOS ベースの泡消火剤と同様に入手可能であり、効果がある。代替物は、航空機産業、軍事施設、及び産業用途について、確立された性能基準に合致する。この許容可能な目的は終了されるべきである。

  7. ハキリアリ属(Atta)ヒメハキリアリ属(Acromyrmex)の葉切り蟻の抑制のための昆虫用餌剤
      これは PFOS 使用のオープンアプリケーションであり、廃止が優先付けられるべきである。一時的な化学的取り換えは望ましくないかもしれず、いくつかの非化学的代替物質の存在及びこの行動がもたらす著しい PFOS 汚染に注意が払われなくてはならない。昆虫用餌剤での PFOS の使用の許容できる目的は、代替物のもっと迅速な採用を促進するために経済的に重要な特定の作物のための具体的な適用除外に転換されるべきである。

  8. 半導体及び液晶表示(LCD)産業におけるフォトマスク
     世界の半導体産業はこの用途での PFOS を廃止している。 INF9 は、この目的で PFOS を使用している締約国はいないことを示しており、この特定の適用除外は終わりにすべきであることを示している。

  9. いくつかのカラープリンターとカラーコピー機の電気及び電子部品
     様々な技術的に実行可能な代替物質が利用可能であり実施されている。INF9 は、この目的で PFOS を使用している締約国はいないことを示しており、この特定の適用除外は終わりにすべきであることを示している。

  10. ヒアリ(red imported fire ants)とシロアリの駆除のための殺虫剤
    様々な技術的に実行可能な代替物質が利用可能であり実施されている。INF9 は、この目的で PFOS を使用している締約国はいないことを示しており、この特定の適用除外は終わりにすべきであることを示している。

  11. 化学的な油生産
     油生産分野における PFOS 使用がすくなく、また INF9 がこの用途で PFOS を使用している締約国はないことを示していることを考慮して、この特定の適用除外は終わりにすべきである。




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