IPEN 2019年10月4日 プレスリリース
国連専門委員会 消防士らの健康を損なう
有害化学物質の世界的廃絶を勧告


情報源:IPEN Press Release, 4 October 2019
U.N. Expert Committee Recommends Global Elimination of
Toxic Chemical Harming Health of Firefighters
https://ipen.org/news/un-expert-committee-recommends-
global-elimination-toxic-chemical-harming-health-firefighters


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年10月9日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/191004_IPEN_PR_UN_Expert_Committee_
Recommends_Global_Elimination_of_Toxic_Chemical_Harming_Health_of_Firefighters.html


 すでに禁止された PFOS 及び PFOA の代替として使用されているパーフルオロヘキサンスルフォン酸(PFHxS)は世界的廃絶とすることを勧告する。

【ローマ、イタリア】国連専門委員会は、もう一つの”永遠の化学物質”である有害フッ素化合物の完全な世界的廃絶を勧告することを全開一致で決定した。フッ素化合物は、飲料水源、公衆の健康、及び消防士らの健康を脅かす広く行渡った汚染物質である。それらは、環境中で分解することはなく、野生生物や人々の体に蓄積する。それらは、泡消火薬剤、防水布、食品容器、並びにその他の産業用及び消費者用製品を含む広範な製品中で使用されている。

 委員会は、パーフルオロヘキサンスルフォン酸(PFHxS)及び 147種の関連物質の世界的廃絶を勧告した。PFHxS は、他の二つのフッ素化合物、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)の代替としてフッ素産業により使用された。 PFAS(パー及びポリフル−オロアルキル化合物)は、産業施設、飛行場及び軍事基地近くの地下水及び飲料水中で高いレベルで見つかっており、相次ぐ訴訟の渦中にある。委員会は、”泡消火薬剤のような分散的応用のための短鎖パー及びポリフル−オロアルキル化合物(PFASs)の使用への移行は環境及び人間の健康の観点から適切な選択ではない”と言及することにより、[PFOS 及び PFOA の代替として]他の PFAS を用いる間違いを繰り返すことに警告を発した。2009年に PFOS はストックホルム条約の下に世界的廃絶のためにリストされ、2019年に PFOA がストックホルム条約の締約国会議[COP 9]で世界的廃絶のために リストされた。

 会合の前に IPEN は火災工学及び火災安全の分野をわたる著名な独立系専門家らによる、水性皮膜形成泡(AFFF)を使用している消防士らが PFHxS と PFOS の両方について許容できない高い血中レベルを持っているとする、最近の研究からの明確な証拠を示す包括的な報告書を発表した。それより少し前の IPEN の報告書は、有害なフッ素化泡消火薬剤の全ての使用を代替できるフッ素不使用の泡消火薬剤について述べている。

 ”この勧告はがんを引き起こす有害化学物質への暴露から世界中の消防士らを守るのに役立つであろう。消防士らは、有害化学物質への職業暴露に関連するがんやその他の疾病のいくつかで、最も高い割合を占めている“と、オーストラリアの消防士組合の副議長であり、メルボルン都市圏消防団(MFB)の指揮官であるミック・ティズベリーは述べた。

 9月に、国際連合人権理事会は、”有害物質に暴露する労働者が直面する世界の危機を強調する”とする決議を採択し、労働者の健康と安全を保護するための国際的な人権メカニズムの下に政府と産業は彼らの義務を果たすよう求めた。

 IPEN のパートナーである Alaska Community Action on Toxics (ACAT) は最近、PFAS ベースの泡消火薬剤の分散的使用により引き起こされているアラスカ周辺地域社会に広がる飲料水汚染を示すひとつの報告書を発表した。

 ”飲料水の PFAS 汚染はアラスカの我々の地域社会の多くで人々の、そして世界中で数百万人の人々の健康を脅かしている。フッ素産業は数十年間、否定し人々を欺いてきた。今こそ彼らは責任を取り、これらの危険な化学物質の製造を止めるべき時である”と、 IPEN の共同議長であり、Alaska Community Action on Toxics の執行ディレクターであるパメラ・ミラーは述べた。

 同委員会はまた、この大きな化学物質のクラスは、ひとつの有害化学物質をもう一つの化学物質で代替する可能性を低減する重要な手法であることが分かっているグルーピング・アプローチを利用して、対処できるであろうことを強調した。

 ”フッ素化合物のクラス全体についての懸念の証拠が増大しており、産業側はひとつの悪い化学物質を関連性が近いもうひとつの化学物質で代替することを止めるべきである”と、 IPEN の科学顧問サラ・ブローシェ博士は述べた。”国は、このフッ素化合物をひとつづつ扱うのではなく、ひとつのクラスとしてそれらに対応し、それらの全てを廃絶する行動をとるべきである”。

汚い12の残留性有機汚染物質のいとこは懸念ある物質である

 国連専門委員は、デクロランプラス(DP)はストックホルム条約の該当基準を満たしているとして、同条約にリストするために更に評価されるべきであると決定した。この物質は主にコンピュータやテレビのプラスチック、電線やケーブルの被覆、及びポリウレタンフォーム中の難燃化学物質として使用されている。 DP は、同条約中にリストされた元々の汚い 12の残留性有機汚染物質のひとつであり、母乳、血漿、及び臍帯血で発見されているマイレックスをわずかに変更したものである。 DP はまた、北極圏や南極圏の生物相を含んで、遠隔地域で見つけられている。 DP への暴露影響は、神経毒性、肝臓障害、及び内分泌かく乱を含む。 DP は、ストックホルム条約の下に 2017年に世界的廃絶のためにリストされたもうひとつ難燃剤デカブロモジフェニルエーテル(decaBDE)の代替化学物質として市場に出された。

 同委員会はまた、塩素系農薬メトキシクロルを評価し、それが高い残留性、生物蓄積性、有毒性を持ち、遠隔地域で検出されるので、該当基準に合致することを見つけた。メトキシクロルは、 DDT の代替として開発され、農業用途、蚊の駆除、ニレ立枯病の媒介虫である樹皮下甲虫(キクイムシ)の駆除、そして獣医学用途で広く使用されている。それは人間の乳がん、動物における生殖障害、及び水生生物への毒性の高いリスクと関連している。

 ”委員会はメトキシクロルを世界的廃絶に一歩近づける正しい決定をした。農業における農薬使用に対する真の代替は、農業生態学的アプローチであり、安全な非化学的代替である”と、Pesticide Action Network のスタッフ科学者エミリー・マルケス博士は述べた。

ストックホルム条約専門委員会について

 ストックホルム条約専門委員会の会合は2019年10月1日〜4日に開催された。

 残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)として知られるその委員会は、条約の下にリストすることを提案された化学物質を検討し、締約国会議に対して勧告をする科学者らの専門委員会である。POPRC のメンバーは、化学物質評価又は管理の分野における政府指名の専門家らである。

 IPEN は、有害物質を低減し、廃絶するために、120か国以上で活動する公益 NGO のネットワークである。IPEN は 15年以上、 POPRC プロセスに積極的に関与している。



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