IPEN 2019年5月3日
ストックホルム条約 締約国会議(COP9)
有害な水汚染物質 PFOA の世界的な禁止に合意

締約国、泡消火剤でのフッ素化代替物の使用をて警告し、厳格な PFOS 禁止を制定

情報源:IPEN, 3 May 2019
At UN meeting, governments agree to a global ban on PFOA
- a toxic water pollutant
Governments warn against use of fluorinated alternatives
in fire-fighting foams and enact strict PFOS prohibitions
https://ipen.org/news/un-meeting-governments-agree
-global-ban-pfoa-%E2%80%93-toxic-water-pollutant


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年5月9日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/190503_IPEN_
At_UN_meeting_governments_agree_to_a_global_ban_on_PFOA.html

 【ジュネーブ、スイス】 ストックホルム条約第9回締約国会議(COP9)で各国政府は、分解せずバックグラウンド・レベルで有害健康影響を引き起こす化学物質である PFOA の世界的禁止に同意した。 PFOA 及びその他のフッ素化有機化合物(PFAS)の使用は、多くの産業及び国内での応用を通じて広がっている。フッ素化泡消火剤は、母乳を汚染し、がん、内分泌かく乱に関係し、胎児の発達を害する有害化学物質による水汚染の主要な原因である。

 しかし残念なことに、締約国政府はまた、半導体製造、泡消火剤、労働者を保護するためにと主張される織物製品、写真フィルムのコーティング、及び医療機器での PFOA 使用に根拠のない多くの 5年間の免除を含めた。驚くべきことに、中国、欧州連合、及びイランはフッ素化ポリマー、医療用織物品、電線、及び自動車内装部のプラスチック・アクセサリーのために、もっと広い範囲の追加的免除を獲得した。この 3国・地域の全ては、評価プロセスに参加したが、会議で突然、この追加的免除を要求した。フッ素化合物産業でさえ、代替物質が広い範囲で利用可能性なので、これらの追加的免除要求には繰り返し反対した。

 ”PFOA に関するこの世界的禁止及び PFAS の代替物を使用しないことについての警告は、残留性の有害化学物質の全てのクラスに目を向ける新たな時代が始まった”と国際有害物質ネットワーク及び IPEN の顧問であるマリアン・ロイド−スミスは述べた。”しかし、いくつかの政府は、 PFOA の危害のサイクルを継続する広範な抜け穴を追加することにより、条約の科学的レビュー・プロセスを裏切った”。

 締約国政府は、製造、輸出又は輸入を禁止し、水汚染の大きな原因である訓練での使用を許可しないことなど、PFOA 含有の泡消火剤に関する特別の抑制を行なった。さらに、それらが”残留性と移動性に起因する有害な環境、人の健康、そして社会経済的な影響をもたらすであろう”ことから、彼らは、 PFAS 化合物のクラス全体の使用に対して警告した。会議の前に、産業側の火災専門家と消防士が新たな報告書を発表したが、それはコスト効果のあるフッ素を含まない泡消火剤が規制基準を満たしており、世界クラスの空港や主要な会社により広く採用されていることを示していた。

 ”消防士の観点から、我々は著しく高いレベルの PFAS を我々の血液中に持っていることを知っている”とメルボルン首都消防隊の指令官であり、連合消防士組合(UFU)オーストラリアのミック・ティズベリーは述べた。我々は体内に時限爆弾を抱えており、それがいつ爆発するのか、あるいはそれが爆発するのかどうか、我々にはわからない。我々はその爆弾を除去することを望むだけである!”。

 ”締約国政府は、実際に火事を消し、フッ素化泡消火剤の廃止に向けて急速に動く産業の火災安全専門家と消防士に注意深く耳を傾けるべきである”、と IPEN 共同議長パメラ・ミラーは述べた。”水は大切な資源でありきれいな水は基本的な人間の権利である。今はまさに、ストックホルム条約の保護的目的を達成し、汚染を止めるべき時である”。

 2009年に締約国政府は PFOS を制限したが、多くの免除も含めた。COP9 は、フォトイメージング、フォトレジスト及び半導体の反射防止膜;化合物半導体及びセラミック・フィルターのためのエッチング剤; 航空作動液;ある医療機器;半導体及び LCD 産業におけるフォトマスク;装飾的金属メッキ;あるカラープリンター及びカラーコピー機の電気及び電子部品;ヒアリ及びシロアリ駆除のための殺虫剤;化学的に駆動されるオイル製造:における使用の停止する十分にき厳しい PFOS 禁止に向けて動いた。

 締約国政府は、泡消火剤での PFOS 使用を停止するために新たな 5年間の期限を設け、訓練のための製造、輸出、輸入及び使用を禁止した。

 ”これらの抜け穴は、そもそも決して承認されるべきではなかったが、PFOS の使用を厳しく禁止すれば PFAS の使用と汚染にとどめをさすことになる”と IPEN の上席科学技術顧問ジョー・ディガンギは述べた。

 残念ながら、分解して PFOS になる有害殺虫剤スルフルラミド(sulfluramid)の使用は期限なしに継続する。スルフルラミドの使用はラテンアメリカで広く急増しており、広範な PFOS 汚染を引き起こしている。

 期限なしに農業でスルフルラミドの使用を続ければ、人の健康と環境ではなく、ブラジルの化学会社を保護すことになると、IPEN のラテンアメリカにおけるハブであるフェルナンド・ベハラノは述べた。”政府は、農業生態学的技術に移行すべきであり、この汚染源物質をできる限り速く禁止すべきである”。



訳注:IPEN による関連報告書
IPEN April 2019, The Global PFAS Problem: Fluorine-Free Alternatives as Solutions



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る