IPEN 2018年9月11日
PFOA の世界禁止に抜け穴をなくせ
消防、ビジネス、及び公益団体が
有害化学産業のための適用除外に声を大にして反対

フッ素を使用しない代替物質が世界的な空港で安全に使用
石油ガス産業は残留性有害汚染物質の実行可能な代替物質を実証
情報源:IPEN 11 September 2018
No Loopholes in Global Ban on PFOA
Fire Safety, Business, and Public Interest Groups Voice
Opposition to Exemptions for Toxic Industry
Fluorine-free alternatives used safely by world class airports and
oil and gas industry demonstrate viable alternatives to a persistent toxic pollutant
https://ipen.org/news/no-loopholes-global-ban-pfoa

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年9月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/IPEN/
180911_IPEN_No_Loopholes_in_Global_Ban_on_PFOA.html

Report:Fluorine-Free Firefighting Foams
【ヨーテボリ、スウェーデン】地下水及び飲料水を広範に汚染しており、”テフロン化学物質”とも呼ばれるパーフルオロオクタン酸(PFOA)は残留性汚染物質であり、発がん性が疑われている。PFOA は、残留性有機汚染物質に関する国連のストックホルム条約の下に2015年に世界的禁止物質として指名された。来る国連専門家グループ会合(POPRC.14)は各国政府に対し PFOA の製造と使用を継続することを可能とするを抜け穴も含めて、 PFOA を同条約に加えることを勧告するであろう。ビジネス、消防当局、空港当局、環境科学及び医療機器供給者を含む多様な分野の専門家らが、実現可能な代替物質が存在する時に、継続使用のための正当性はないと主張して、提案されている適用除外に強く反対している。

PFOA:世界の汚染危機

 PFOA は、最も遍在し、よく調査されている PFAS として知られるフッ素化合物の長鎖クラスの物質のひとつである。PFOA は焦げ付き防止鍋を作るために使われており、布製品、消火泡、及び医療機器中で見いだされており、またその他の多くの製品やプロセス中で使用されている。2017年にストックホルム条約専門家グループは PFOA と、診断された高コレストロール、潰瘍性大腸炎、甲状腺疾患、精巣がん、腎臓がん、妊娠高血圧症を含む深刻な病気との間の関連性に言及した。最近入手した文書は、製造者らは PFAS 物質の有害特性について数十年前に知っていたことを示している。

 PFOA は、北極及び南極のような遠方の地域の野生生物や人間を含んで、世界の環境を汚染している。アメリカ疾病予防管理センター (CDC)下の国立環境衛生センターのディレクターであるパトリック・ブレイセは、米国の1,000万の人々が PFAS に汚染された水を飲んでおり、 PFAS 汚染を”次の数十年間、最も影響力のある公衆健康の課題のひとつ”と呼んだ。研究調査は、飲料水中の PFOA の許容できる量の暴露制限は、”人間の免疫系に及ぼす有害影響から子どもたちやその他の脆弱なグループを守る”ためには不十分であることを示している。2018年6月に米国有害物質疾病登録局(ATSDR)は、 PFAS 暴露限界を著しく下げることを提案したが、他の政府機関がその提案を抑えようとした。

 PFAS の製造、並びに軍事基地及び空港で使用されている PFOA、PFOS 及びその他のフッ素化合物(AFFF と呼ばれる)を含有する泡消火剤は、オーストラリア、カナダ、中国、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、ニュージランド、韓国、スウェーデン、及び、40 州の 172 PFAS 汚染サイトに責任がある多くの軍事基地を含むアメリカ、を含む多くの諸国における水汚染と地域汚染の原因である。米政府機関は、”アメリカのほとんどの人々は PFAS に暴露しており、血液中に PFAS を持っている”と言及している。これらのつかみどころのない化学物質は急速に土壌及び地下水中に入り込み、極めて高価につく浄化作業を作り出している。より安全な代替物質が世界中で安全に使用されていると専門家らが言っていることは、世界禁止に対する適用除外を否定する最強の証拠である。

PFOA:世界的空港がフッ素フリーの泡剤を使用している

 数ある中でロンドン・ヒースロー、ロンドン・ガトウィック、コペンハーゲン、シュトゥットガルト及びドバイの各空港を含む世界最大級の空港のいくつかで、安全で効果的なフッ素を使わない泡消火剤が使用されている。オーストラリアの空港 27の全てが長年、フッ素を使用しない泡剤を使っている。火災安全及び規制の専門家らは、この環境的に安全な代替物質が成功裏に広く使用されているのに、有害な泡剤を使い続ける正当性はないと言う。

 IPEN は、火災工学産業(大空港での経験を持つ)、航空救助・消防部門、石油・ガス・石油化学産業(緊急災害管理を含む)、及び泡剤開発・調剤会社ら広範な分野の著名で独立の専門家を特集した包括的な報告書を作成したが、彼らはすべて適用除外を阻止する必要性を述べている。

 独立した製品テスト及び全体的なリスク評価に関与する業界団体、環境化学分野の専門家、及び国の環境規制機関もまたその報告書に含まれており、適用除外を阻止することは極めて重要であるということに同意している。

 ”フッ素フリー消火(Fluorine-free firefighting(F3))泡剤は、フッ素系 AFFF(水成膜泡消火剤 Aqueous Film Forming Foam)に対する実行可能な代替物質であり 、全ての点で勝るとも劣らない。しかしフッ素系泡剤とは違い、 F3 泡剤は環境を永遠に汚染するということはなく、人間や動物を危険にさらすことがない;高価な浄化作業がいらない;修復コストは無視できるかゼロ;そして重要な法的及び財務的義務はない。きれいな飲料水のように公衆健康の価値には妥協がなく、最終的には公衆の政治制度と政府機関への信頼を損なうことない”と、IPEN の専門家らは報告書で指摘している。

 研究物理化学者であり、消防部門での助言者として長年、国際的な経験を持ち、現在、緊急対応調査のためのクリスチャン・レジェンハード・センター(ニューヨーク市立大学ジョン・ジェイ・カレッジ・オブ・クリミナル・ジャスティス)の研究者であるロジャー・クレイン博士により編集/調整されたその報告書は、明快に次のように述べている:”もし高い効果のある非フッ素系消代替物質が利用可能なら、フッ素系消火泡剤の使用を適用除外にする理由はない”。

 ヒースロー空港の消防対応マネージャーである グレイム・デイは、次のように述べた。”我々は、消防士も乗客も、その安全がフッ素フリーの消火泡剤の使用により損なわれるのを見たことがなく、我々の運用と環境的責任を満たすのみならず、訓練にも使用できる製品を有している。滑走路はもっと迅速に操作できるようになり、浄化のためのコストはゼロである”。フッ素系消火泡剤の汚染浄化コストはひとつの現場当たり約350万ユーロ(約4億5,500万円)〜550万ユーロ(約7億1,500万円)であると見積もられているので、浄化コストの回避は大変な経済的関心事である。

 ”PFAS 泡剤の継続的使用は、不必要であるのみならず、かなり広範な健康と環境への危害とうなぎ上りのコストをもたらし、負の遺産と現在の汚染が続くであろう。そのような害を永続させることの正当性はなく、防止措置が必須である”と、報告書の編集者で、 IPEN グローバルネットワークの共同議長であるパメラ・ミラーは述べている。”産業側の新しい残念なフッ素系代替物質は同じように、あるいはそれ以上に有害であるように見え、それらの使用もまた止めさせなくてはならない”。

医療機器の適用除外はなくせ

 適用除外はまた、皮肉にも医療保健の分野で PFOA の使用の継続を許すことになる抜け穴を含んで、数多くの用途のために、様々な産業団体によって求められている。しかし、 PFOA を使用しない又は含有しない医療保健製品にとって、しっかりした市場が存在する。例えば、グリーンヘルス・エクスチェンジ(GX)は、年間40憶ドル(約4,400億円)のビジネスを行なう医療関連製品会社のひとつであり、米国で100以上も病院に製品を供給している。ストックホルム条約専門家委員会への書簡の中で、グリーンヘルス・エクスチェンジは医療保健産業が率先してなすべき特別の責任について言及し、PFOA は適用除外を設けることなく、世界的廃絶が勧告されるべきことを求めた。

 ”通常、ある有害物質が禁止されそうになる時に聞かされる声は、その製造者及び使用者からだけであり、彼らは販売を保護するために積極的に活動する”とIPENの上席科学技術顧問であるジョー・ディガンギは述べた。政策策定者と専門家グループのメンバーは公衆健康の懸念と、禁止から利益を得る立場の事業家に注意を払う必要がある。 PFOA は世界で最悪の化学物質のひとつであり、適用除外をもうけることなく、世界的廃絶のためのストックホルム条約リストに加える必要がある。



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