ストックホルム条約プレスリリース
COP4 ジュネーブ2009年5月4日
ジュネーブで開催 5月4日〜8日
POPs に関するストックホルム条約会議


情報源:Stockholm Convention Press release COP4 - Geneva, 4 May 2009
Geneva to host Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants from 4 to 8 May
http://chm.pops.int/Convention/Pressrelease/
COP4Geneva4May2009/tabid/509/language/en-US/Default.aspx


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月9日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/POPs/090504_Press_POPs_Geneva.html

会議は、9種の新たな化学物質、DDTの代替、POPs のない未来の課題に光をあてる


UNEP 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)第4回締約国会議

ジュネーブ、スイス 2009年5月4日】  150か国政府からの150人の大臣と高官が、人によって作られた最も有害な化学物質のいくつかを世界からなくすための世界的な取り組みを進めるために今週、会談する。

 会議はストックホルム条約の歴史に新たな章を記すものである。その多くがまだ農薬、難燃剤、その他多くの商業的用途として広く使用されている9種類の新たな化学物質をリストにあげることが提案される。

 提案される9種の化学物質
  • α−ヘキサクロロシクロヘキサン(α-HCH)(Alpha hexachlorocyclohexane)
  • β−ヘキサクロロシクロヘキサン(β-HCH)(Beta hexachlorocyclohexane)
  • ヘキサブロモジフェニル及びヘプタブロモジフェニル(Hexabromodiphenyl ether and heptabromodiphenyl ether)
  • テトラブロモジフェニル及びペンタブロジフェニル(Tetrabromodiphenyl ether and pentabromodiphenyl ether)
  • クロルデコン(Chlordecone)
  • ヘキサブロモビフェニル(Hexabromobiphenyl)
  • リンデン(Lindane)
  • ペンタクロロベンゼン(Pentachlorobenzene)
  • パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、その塩類、及びパーフルオロオクタンスルホンフッ化物(Perfluorooctane sulfonic acid, its salts and perfluorooctane sulfonyl fluoride)
 今まで、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約は、いわゆるダーティ ダーズン”、すなわち神経系と免疫系の損傷からがんや生殖系疾患及び幼児や子どのの発達など人の健康影響に関連している12の有害農薬と産業化学物質を目標にしていた。
 ”そのような化学物質によって及ぼされるリスクは甚大であり、これらの有毒物質は地球のいたるところに化学的足跡を残している。農民、妊婦、若者、胎児、北極のような離れた場所の人々は特に脆弱である”と国連事務次長でUNEP事務局長アキム・シュタイナーは述べた。

 ”今週、ジュネーブで、政府は、より健康でもっと持続可能なグリーン・エコノミーへの移行を推進するとともに、貧困関連の国連ミレニアム開発目標への重要な貢献をすることができる。私は彼らにその機会をとらえ、文字通り数百万の人々の命からもうひとつの健康の脅威を解くことを始めるよう促したい”と彼は付け加えた。

 会議の議題の主要な課題は、致死的なマラリア寄生虫を媒介する蚊の撲滅のためにDDTを使用する国がその使用を継続する必要があるかどうかを評価することであろう。

 条約はDDTの廃止を目標とするが、ある国はまだこの殺虫剤を彼らの市民の健康を守るために使用しなくてはならないということを認める。
 代表団はDDTの効果的な代替を推進するためのビジネス・プランの是認を考慮するであろう。この会議はまた、POPsを世界中で廃止するために途上国への支援の拡大と、人の健康と環境のためにより安全な代替に焦点を当てるであろう。

 他のの課題は、POPsによって引き起こされる人の健康と環境問題からの人の被害とその問題に対応するための世界のコストを最小にするために、POPsのない未来をどのように実現するかということである。このことは最も暴露の被害を受ける脆弱な集団に対して特に重要である。

  • 課題 #1: より安全な代替に向けてPOPsの製造と使用をやめ、また、非意図的に製造されるPOPsの排出をなくすという目標に到達すること。
  • 課題 #2: 人の健康と環境にリスクを及ぼす新たなPOPsを特定すること。
  • 課題 #3: 全ての国が条約の下の義務果たすために技術的及び財政的リソースが利用できることを確実にすること。
  • 課題 #4: 条約が人の健康と環境を POPs から守るというその目標を満たすことを確実にする努力を継続すること。
 他の問題は、PCBの使用をやめるための取り組みをいかに強化するかということである。極めて重要な次のステップは、主要なデータを確立し、PCB類の使用が実際に減少しているかどうを評価するために、PCB廃絶クラブの推奨を検討することである。
 会議はまた、非意図的に製造される POPs の非意図的な排出を削減又は廃絶するために、最良の入手可能な技術、最良の入手可能な実施方法、そして最良の環境的実施方法の使用を推進するための、さらなるステップを検討するであろう。

記者への注記

 POPs のリスクのレベルは変化するが、これらの化学物質の全ては4つの共通する特性を持つ。
  • それらは非常に毒性が高い。
  • それらは安定しており残留性があり、毒性の低い物質に分解するまでに、しばしば数十年かかる。
  • それらは蒸発し、大気や水を通じて長距離を移動する。
  • それらは人や野生生物の脂肪組織中に蓄積する。
 世界的に、人は誰でもその体に POPs の痕跡を持っている。POPs は”バッタ効果”として知られるプロセスを通じて巡回する。世界のある場所で排出されたPOPsは、蒸発と堆積のプロセスを繰り返すことで、最初の場所から遠く離れた場所へ大気を通じて移動することができる。

 幸いなことに、POPs の代替は存在する。問題は、コストが高いこと、一般に知られていないこと、そして適切な社会的基盤と技術の不在がしばしば代替の採用を妨げてきたことである。どのような代替の選択も、目標とする特定の化学物質、その化学物質の特性と用途パターン、そして各国の気候や社会経済的条件に依存する。

 会議は5月4日から8日まで、ジュネーブ国際会議センター(CICG)、15 rue de Varembe, Geneva, Switzerland で開催される。
 ストックホルム条約の下にリストされる予定の 9 種の新たな化学物質は次の通りである。

  • α−ヘキサクロロシクロヘキサ(付属書 A:廃絶)
  • β−ヘキサクロロシクロヘキサン(付属書 A:廃絶
     α-HCHとβ-HCH の殺虫剤としての意図的使用は数年前に廃止されているが、これらの化学物質はリンデンの非意図的副産物としてまだ製造されている。α-HCHとβ-HCH を含んでそれらの異性体は、製造されるリンデン1トン当たり約 6-10 トンが出る。
  • ヘキサブロモジフェニル及びヘプタブロモジフェニル(付属書 A:廃絶)
  • テトラブロモジエニル及びペンタブロジフェニル(付属書 A:廃絶)
     ブロモジフェニル同族体は、有機物質の燃焼を抑制する臭素化有機物質であり、難燃剤添加物として用いられている。臭素化ジフェニルは主に商業用混合物として製造され、いくつかの異性体、同族、及び少量の他の物質が存在する。
  • クロルデコン(付属書 A:廃絶)
     クロルデコンは、合成有機塩素化合物であり、農業用殺虫剤として主に使用されていた。1951年に最初に製造され、1958年に商業的に導入された。この化学物質の現在の使用又は製造は報告されていない。
  • ヘキサブロモビフェニル(付属書 A:廃絶)
     ヘキサブロモビフェニル(HBB)は、主に1970年代に難燃剤として使用された産業用化学物質である。既存のデータによれば、HBB はほとんどの国で最早、製造又は使用されていない。
  • リンデン(付属書 A:廃絶)
     リンデンは種子及び土壌の処理、葉への散布、樹木及び木材処理、及び家畜と人の寄生虫対策用の殺虫剤として広範に使用された。リンデンの製造は近年、急速に減少しており、ほんの少数の国だけがまだ製造している。
  • ペンタクロロベンゼン(付属書 A:廃絶、及び付属書 C:非意図的生成物)
     ペンタクロロベンゼン(PeCB)は、PCB製品、染料担体、抗菌剤、難燃剤、及びキントセンの製造ような化学物質中間体として使用され、現在でもこの目的で使用されているかもしれない。PeCB はまた、熱または産業プロセスにおける燃焼中に非意図的に製造される。溶剤や農薬のような製品中の不純物としても存在する
  • パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、その塩類、及びパーフルオロオクタンスルホンフッ化物(付属書 A:廃絶、又は 付属書 B:制限)
     PFOS は、意図的な製造物及び関連する人工化学物質の非意図的な分解生成物の両方である。現在のPFOSの国際的な用途は広範であり、電子・電気部新、消火用泡剤、写真画像、油圧液、繊維製品などに見出される。PFOS は今日でもまだいくつかの国で製造されている。
 条約でカバーされる最初の12のPOPsは、下記に示す9種の農薬と2つの産業化学物質と非意図的な副産物である。
農薬(9種)(訳注:付属書の表記はオリジナルにはない)
  • アルドリン(付属書 A:廃絶)
  • クロルデン(付属書 A:廃絶)
  • DDT (付属書 B:制限)
  • ディルドリン(付属書 A:廃絶)
  • エンドリン(付属書 A:廃絶)
  • ヘプタクロル(付属書 A:廃絶)
  • ヘキサクロロベンゼン(付属書 A:廃絶)
  • マイレックス(付属書 A:廃絶)
  • トキサフェン(付属書 A:廃絶)
産業用化学物質(2種)
  • PCB(付属書 A:廃絶、及び付属書 C:非意図的生成物)
  • ヘキサクロロベンゼン(付属書 A:廃絶、及び付属書 C:非意図的生成物)
非意図的副産物(2種)
  • ダイオキシン類(PCDD)(付属書 C:非意図的生成物
  • フラン類(PCDF)(付属書 C:非意図的生成物)
更なる情報:
  • http://www.pops.int or by emailing ssc@pops.int
  • Nick Nuttall, UNEP Spokesperson, Tel: +254 20 7623084 or Email: nick.nuttall@unep.org
  • Fatoumata Keita Ouane, Senior Scientific Officer, Tel: +41 22 917 8161, Email: fouane@pops.int
  • Marcella Carew, Public Awareness Officer, Tel: +41 22 917 8103, Email: mcarew@pic.int


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