IPEN プレスリリース 2022年3月2日
国連環境総会(UNEA)は
プラスチック汚染を終わらせるための新たな時代に入り、
化学物質に関する新たな科学委員会を承認する

情報源:IPEN For Immediate Release, 2 March 2022
United Nations Environment Assembly Enters new Era to End Plastic Pollution,
and approves a new international scientific panel on chemicals
https://ipen.org/news/un-environment-assembly-
moves-end-plastic-pollution


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年3月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/NGOs/220302_IPEN_
UNEA_Enters_new_Era_to_End_Plastic_Pollution.html

 【ケニア、ナイロビ】10日間の激しい交渉の後、政府は再開された第5回国連環境総会(UNEA 5.2)の下で化学物質とプラスチックに関連する決議を採択した。これらの決議には次のものが含まれる。
  • プラスチックの持続可能な生産と消費の防止と促進に焦点を当てたプラスチック汚染に取り組むための法的拘束力のある手段について合意するために、今年後半に協議を開始する決議。この決議は、あらゆる種類の潜在的な汚染とプラスチックのライフサイクル全体を対象としている。

  • 化学物質、廃棄物、及び汚染防止に関する科学委員会を創設し、議論を開始することに同意する決議。

  • 化学物質と廃棄物の健全な管理に貢献するプログラムを開発するために開発途上国に財政的支援を提供する特別プログラムを更新する決議。さらに、この決議は、内分泌かく乱化学物質に関する科学の現状に関する新しい報告を求めている。

プラスチック:政府は、プラスチック条約に関する協議を開始するという幅広い権限を承認した。 IPEN は、この条約は、内分泌かく乱化学物質(EDC)などのプラスチックに埋め込まれた広く使用されている有害な化学物質による健康への脅威を防ぐのに役立つはずであると考える。これらの化学物質には、フタル酸エステル類、ビスフェノール類、臭素系難燃剤、及び「永遠の化学物質(forever chemicals)」としても知られる PFAS が含まれる。これらは全て、健康に深刻な害を及ぼすことが知られている化学物質である。これらの化学物質がリサイクルされると、脆弱な人々が健康上の脅威にさらされる可能性がある。

 IPENは、プラスチック製品の使用を減らすために、条約には法的拘束力のある条項が必要であると述べている。プラスチックと化学物質の生産と使用の大幅な増大に関する現在の予測に基づくと、この増大を遅らせることは、地球と人々の健康を守るために重要である。

 IPEN の政策及び技術顧ーであるビト・ボンサンテは、次のように述べている。”プラスチック条約の決議は、そのライフサイクル全体にわたるすべての影響を対象としていることを喜んでいる。マイクロプラスチックや有害化学物質を含むプラスチックの健康への影響が将来の条約によってカバーされることを確実にするために、重要な作業が今始まろうとしている。”

 IPEN の北アフリカ及び中東地域コーディネーターであるセミア・ガービは、次のように述べてる。”プラスチックは循環型経済を害しているので、UNEA の決定は、プラスチックの製造に使用される有害化学物質についての正直な議論を開始する必要がある。”

科学政策委員会:カメルーンの開発研究教育センター(CREPD)のギルバート・クエポウオは、次のように述べている。”IPEN は化学物質、廃棄物、及び汚染防止に焦点を当てることを歓迎するが、過去には確固とした証拠がないためではなく、予防措置を講じたがらないために化学物質と廃棄物への断固とした行動が足りなかった。”

化学物質と廃棄物:政府はまた、各国が化学物質と廃棄物の健全な管理を達成するための行動を強化すべきであることを認識した。特に、彼らは、2012年に発行された『内分泌かく乱化学物質の科学の現状(EDC)報告書』(訳注1)の更新を承認し、EDC 及びその他の懸念事項に関連するリスクを低減または排除するためのさらなる行動を取るよう各国に促した。

 ”EDC はプラスチックから農薬まで至る所にあり、このクラスの有害化学物質はがん、生殖障害などに関連している。 EDCレポートを更新することは、この科学を政策行動に移すのに役立つはずである。私たちは特に、科学を否定し続ける潜在的な業界の干渉に懸念を抱いている。プラスチック化学物質の BPA に関する最近の EU の訴訟では、業界は BPA を人間のホルモンの誘発と公衆衛生の脅威に結び付ける科学を否定しようとした。アフリカは、これらの化学物質の流入を国境で阻止するために、EDCとプラスチック及び農薬中の ED Cの表示に関する世界的な行動を必要としている”と IPEN 共同議長のタデッセ・アメラ博士は述べている。

 IPENは、世界中に拠点を置く国際的なパートナーによって実施された作業に基づいて、UNEA5.2 までの一連の研究を発表した。これらのレポートは、プラスチックのライフサイクルとバリューチェーン全体を通じて、プラスチックが世界の人間の健康と環境に深刻な影響を与えることを強調している。何度も、これらの影響は発展途上国と新興国に不釣り合いに打撃を与えている。

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 専門家へのインタビュー又は追加情報について希望のある編集者及びジャーナリストは、ビョルン・ビーラー、IPEN:bjornbeeler@ipen.org まで連絡いただきたい。

 IPEN(International Pollutants Elimination Network)は、125か国以上の600を超える組織の地球環境健康ネットワークであり、最も危険な物質を排除及び削減して、有害物質のない未来を築くために取り組んでいる。


訳注1
内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012版 意思決定者向け要約
State of the Science of Endocrine-Disrupting Chemicals  この「意思決定者向け要約」は、報告書完全版「内分泌攪乱物質の科学の現状、2012 年」と共に、国連環境プログラム(UNEP)と世界保健機関(WHO)との協力により現在進行中の、人為的化学物質のヒト及び野生動物の健康に対する有害作用の懸念に対する取り組みの一部として、内分泌攪乱物質に関する情報及び懸念される主要な問題点を述べたものである。完全版の3つの章それぞれの主要メッセージはこの要約でも紹介する。(要約版の”はじめに”より抜粋)


化学物質問題市民研究会
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