Beyond Pesticides 2022年11月29日
継続する精子数の減少により行動の必要が高まる
情報源:Beyond Pesticides, November 29, 2022
Continued Reduction in Sperm Count Raises Call for Action
https://beyondpesticides.org/dailynewsblog/2022/11/
continued-reduction-in-sperm-count-raises-call-for-action/


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年12月6日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/221129_Beyond_Pesticides_
Continued_Reduction_in_Sperm_Count_Raises_Call_for_Action.html



 精子数の減少に関する以前の研究に重点を置いた新たな国際研究に基づいて、環境機関がこの問題や内分泌かく乱に関連するその他の問題に対処することが重要である。レバインらによる研究は、精子数の減少 (1973 年から 2018 年にかけて 51.6% の減少) が世界的であり、減少率が加速していることを発見した。

 EPA と議会に、内分泌かく乱がないという結果が得られない限り、農薬の使用を続けることはできないと伝えよう!

 報告されている(平均的な)精子数の減少は、妊娠を引き起こす能力が劇的に低下し始めるレベルに近づいている。男性の生殖能力の低下は、不安、自尊心の低下、うつ病など、深刻な心理的及び社会的影響を与える可能性がある。これらの心理的問題は、それ自体が健康に影響を及ぼす。同様に深刻なのは、不安や抑うつと暴力行為自殺との関連性である。問題を複雑にしているのは、男性が不妊関連の社会的支援を求める可能性が低いという事実である。

 精子数の減少は、主に有害化学物質への暴露による内分泌かく乱のほんの一例である。内分泌系は、一連の腺 (甲状腺、生殖腺、副腎、及び下垂体) と、それらが産生するホルモン (チロキシン、エストロゲン、テストステロン、及びアドレナリン) で構成され、人間を含む動物の発生、成長、生殖、及び行動を導くのに役立つ。ホルモンは信号伝達分子であり、血流を通って移動し、体の他の部分で反応を引き出す。

 内分泌かく乱化学物質への暴露による悲惨な結果から人々と野生生物を保護するという法定責任を EPA が果たさなかった事態は終わらなければならない。ここ数十年で、多くの農薬がホルモンに干渉し、したがって内分泌かく乱化学物質 (EDC) であることを示す証拠が増えてきた。農薬の内分泌かく乱をスクリーニングするという約束により、 1996年に制定された食品品質保護法 (FQPA) に対する環境保護論者や公衆衛生擁護者からの支持が生まれたが、食品中の発がん物質を絶対禁止する[連邦食品医薬品化粧品法の]デラニー条項(訳注1)を廃止し、操作と現実の危険の過小評価を受けやすいリスク評価基準を採用することとなった。それから 26 年経った今でも、EPA が農薬登録の決定に内分泌かく乱の発見を利用しているのを見たことがない。

 50 を超える農薬有効成分が、欧州連合、及び内分泌かく乱物質の専門家であった故シーア・コルボーン博士によって内分泌かく乱物質として特定されている。内分泌かく乱は、いくつかの健康影響評価項目のメカニズムである。内分泌かく乱物質は次のように機能する。(i)エストロゲンやテストステロンなどの天然ホルモンを模倣する。(ii) 細胞内のホルモン受容体を遮断し、それによって正常なホルモンの作用を妨げる。 (iii) ホルモンの合成、輸送、代謝、及び排出(excretion)に影響を与え、天然ホルモンの濃度を変化させる。内分泌かく乱物質は、注意欠陥多動性障害 (ADHD)パーキンソン病及びアルツハイマー病、糖尿病、心血管疾患、肥満、思春期早発症、不妊症及びその他の生殖障害小児及び成人のがん、及びその他の代謝障害に関連している。

 影響を受けるのは人間だけではない。雌雄同体のカエル、ペニスのようなスタムプ(stump)を持つホッキョクグマ、睾丸が萎縮したヒョウ、睾丸に未熟な卵があるインターセックスの魚はすべて、内分泌かく乱に関連している。一般的な除草剤アトラジンは、暴露したオスのオタマジャクシを化学的に去勢し、メス化する。蚊を殺す S-メトプレン幼虫駆除剤は、初期のカエルの胚発生を変化させる。ワニの性器の発達と機能のゆがみは、有機塩素系殺虫剤のジコフォールに関連している。どこにでもある抗菌化学物質であるトリクロサンはカエルの甲状腺機能を変化させ、その同族化学物質であるトリクロカルバンはラットとヒト細胞で性ホルモンを増強する。コルボーン博士は著書『奪われし未来』の中で、動物種の減少はもはや生息地の破壊や人間によるかく乱だけでは説明できず、内分泌かく乱化学物質の影響による集団内での生殖障害によって説明できると述べている。

 食品品質保護法(FQPA) によると、当局は潜在的な内分泌作用についてすべての農薬化学物質をスクリーニングする必要がある。タイムリーな計画の完遂を確実にするために、EPA は議会から次の様なスケジュールを与えられた。食品品質保護法(FQPA) の制定後2年以内(1999年8月)に査読済みスクリーニング及び公共の意見を取り入れたテスト計画を開発すること。制定後 3年以内(1999年8月)にスクリーニングとテストを実施すること。制定後 4 年以内 (2000年8月) に、スクリーニングの結果と追加のテスト及び措置に関する勧告を議会に報告すること。

 これらの期限にもかかわらず、EPA は行き詰まり、その責任を無視している。EPA はスクリーニング プログラム第1段 (Tier 1) を開始し、2009 年に結果を報告した(訳注2)。EPA によると、第1段 (Tier 1)スクリーニング (暴露量の多い化学物質を調べる) は、化学物質を内分泌かく乱化学物質と見なすのに十分ではなく、規制上の意思決定に影響を及ぼすことができる唯一の段階であるどの化学物質が第2段 (Tier 2)のテスト対象にならなければならないかを定義するツールとして機能する。実際、EPA がいつ、どのように Tier 2 テストを進めるか、また 第2段(Tier 2)の調査結果が実際の規制に情報を与えるために使用されるかは不明である。

 EPA は現在、農薬登録に関する中間決定案(Proposed Interim Decisions / PIDs)を発行しているが、内分泌かく乱の可能性に関連する人間の健康または環境の安全性に関する調査結果はなく、PID で内分泌かく乱物質スクリーニング プログラムの要件を満たすために必要な追加データも特定していない。EPA は、内分泌かく乱に関する調査結果がなければ、不当な悪影響がないという調査結果を出すことはできない。

 法律で義務付けられているように、EPA が内分泌かく乱物質を検査し、行動することを要求する。


EPA への手紙
 私は、人々と野生生物を悲惨な健康被害から守るために義務付けられた法的責任を果たすために、今すぐ行動するようお願いするために手紙を書いています。

 精子数の減少に関する以前の研究に重点を置いた新しい国際研究に基づいて、環境機関が内分泌かく乱に関連するこの問題及びその他の問題に対処することが重要です。レバインらによる研究。は、精子数の減少 (1973 年から 2018 年にかけて 51.6% の減少) が世界的であり、減少率が加速していることを発見しました。

 報告された(平均的な)精子数の減少は、妊娠を引き起こす能力が劇的に低下し始めるレベルに近づいています.男性の生殖能力の低下は、不安、自尊心の低下、うつ病など、深刻な心理的及び社会的影響を与える可能性があります。これらの心理的問題は、それ自体が健康に影響を及ぼします。同様に深刻なのは、不安や抑うつと暴力行為や自殺との関連性です。問題を複雑にしているのは、男性が不妊関連の社会的支援を求める可能性が低いという事実です。

 精子数の減少は、主に有害化学物質への暴露による内分泌かく乱のほんの一例です。 1998 年、1996 年の食品品質保護法 (FQPA) の規定に従い、EPA は、農薬やその他の広範な化学物質の内分泌かく乱作用をスクリーニング及びテストするプログラムを確立しました。この法律(FQPA)を実行するために設立され内分泌かく乱物質スクリーニングプログラム (EDSP) は 24 年間運営されてきましたが、内分泌かく乱農薬の見直しと規制にはほとんど進展がありませんでした。

 タイムリーな計画の完遂を確実にするために、EPA は議会から次の様なスケジュールを与えられました。制定後2年以内(1999年8月)に査読済みスクリーニング及び公共の意見を取り入れたテスト計画を開発すること。制定後 3年以内(1999年8月)にスクリーニングとテストを実施すること。制定後 4 年以内 (2000年8月) に、スクリーニングの結果と追加のテスト及び措置に関する勧告を議会に報告すること。

 これらの期限にもかかわらず、EPA は行き詰まり、その責任を無視しています。 EPA は、農薬登録に関する中間決定案 (PID) を発行しましたが、内分泌かく乱の可能性に関連する人間の健康または環境の安全性に関する調査結果はありません。また、PID で内分泌かく乱物質スクリーニング プログラムの要件を満たすために必要な追加データを特定することもありません。 EPA は、内分泌かく乱に関する調査結果がなければ、不当な悪影響がないという調査結果を出すことはできません。そのような調査結果がない場合、EPA は、データまたは調査結果が不足している各農薬の登録を取り消し、一時停止する必要があります。

 EPA が人々と野生生物の健康を保護する責任を果たしていることを確認してください。

ありがとうございました。


米国下院議員及び上院議員への手紙
 内分泌かく乱農薬の規制という重大な公衆衛生と環境衛生の問題を提起するようお願いするために手紙を書いています。

 精子数の減少に関する以前の研究に重点を置いた新しい国際研究に基づいて、環境機関が内分泌かく乱に関連するこの問題及びその他の問題に対処することが重要です。レバインらによる研究。は、精子数の減少 (1973 年から 2018 年にかけて 51.6% の減少) が世界的であり、減少率が加速していることを発見しました。

 報告された(平均的な)精子数の減少は、妊娠を引き起こす能力が劇的に低下し始めるレベルに近づいています。男性の生殖能力の低下は、不安、自尊心の低下、うつ病など、深刻な心理的及び社会的影響を与える可能性があります。これらの心理的問題は、それ自体が健康に影響を及ぼします。同様に深刻なのは、不安や抑うつと暴力行為や自殺との関連性です。問題を複雑にしているのは、男性が不妊関連の社会的支援を求める可能性が低いという事実です。

 精子数の減少は、主に有害化学物質への暴露による内分泌かく乱のほんの一例です。内分泌かく乱化学物質への暴露による悲惨な結果から人々と野生生物を保護するという法定責任を EPA が果たさなかった事態は終わらなければなりません。 10 年以上にわたり、EPA は、米国及びヨーロッパとアジアの他の政府から資金提供を受けている独立した学術研究者らからの内分泌かく乱に関する膨大な情報を無視してきました。そして、EPA は、内分泌かく乱農薬を規制するという法定命令を実行していません。

 内分泌かく乱物質は、不妊症やその他の生殖障害、糖尿病、心血管疾患、肥満、思春期早発症、注意欠陥多動性障害 (ADHD)、パーキンソン病、アルツハイマー病、小児がん、成人がんに関連しています。これは無視できない公衆衛生上の悲劇です。

 EPA が 2009 年に内分泌かく乱作用の可能性について活性農薬成分と「不活性」農薬成分 (通常、溶液、粉塵、または顆粒を作る未公開の製品成分の大部分) の両方の試験を開始する準備ができていると発表したが、1998 年に最初に勧告され、EPA が使用することを提案したプロトコルは大幅に時代遅れになっている。その間、科学は進歩し、EPA のテスト設計に情報を提供したものよりも洗練された仮定を提供するようになった。さらに、Beyond Pesticides が 2009 年に指摘したように、”EPA のテストとアッセイのそれぞれは、保護すべき利益を持っている企業弁護士、及び内分泌学と発生生物学の訓練を受けていないさまざまな毒物学者の監視の下で設計された。 10 年以上にわたり、EPA は、米国及びヨーロッパとアジアの他の政府から資金提供を受けている独立系学術研究者らによる内分泌かく乱に関する膨大な情報を無視していました。”

 1998 年、1996 年の食品品質保護法 (FQPA) の規定に従い、EPA は、農薬やその他の広範な化学物質の内分泌かく乱作用をスクリーニング及びテストするプログラムを確立しました。この法律(FQPA)を実行するために設立され内分泌かく乱物質スクリーニングプログラム (EDSP) は 24 年間運営されてきましたが、内分泌かく乱農薬の見直しと規制にはほとんど進展がありませんでした。2019年現在、同プログラムは完全に行き詰っています。

 タイムリーな計画の完遂を確実にするために、EPA は議会から次の様なスケジュールを与えられました。制定後2年以内(1999年8月)に査読済みスクリーニング及び公共の意見を取り入れたテスト計画を開発すること。制定後 3年以内(1999年8月)にスクリーニングとテストを実施すること。制定後 4 年以内 (2000年8月) に、スクリーニングの結果と追加のテスト及び措置に関する勧告を議会に報告すること。

 これらの期限にもかかわらず、EPA は行き詰まり、その責任を無視しています。それには実際のコストがかかります。人々と野生生物の健康を守るという法定責任を EPA が果たすよう、あなたのオフィスの権限を利用してください。

ありがとうございました。


訳注1:デラニー条項(Delaney Clause)
訳注2:スクリーニング・プログラム 第1段
化学物質問題市民研究会
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