News Medical 2022年6月13日
内分泌かく乱化学物質への出生前暴露は
子孫の脳発達に影響を及ぼすかもしれない

情報源: News Medical June 13 2022
Prenatal exposure to endocrine-disrupting chemicals
may affect the developing offspring's brain

Reviewed by Emily Henderson, B.Sc.
https://www.news-medical.net/news/20220613/Prenatal-exposure-to-endocrine-
disrupting-chemicals-may-affect-the-developing-offsprings-brain.aspx


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年6月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/220613_NewsMedical_Prenatal_exposure_
to_endocrine-disrupting_chemicals_may_affect_the_developing_offsprings_brain.html



 ジョージア州アトランタで月曜日(6月13日)に開催された内分泌学会の年次総会である ENDO 2022 で発表されたラットを用いた研究によると、日用品に含まれる BPA や DEHP などの内分泌かく乱化学物質への出生前暴露は、発育中の子孫の脳の働き妨げ、恐怖や不安行動などに影響及ぼす可能性があるとしています。

 アメリカのジョージア州アセンズにあるジョージア大学の教授 P.S.モハン・クマール博士らは、内分泌かく乱化学物質であるビスフェノールA(BPA)とフタル酸ジ(2-エチルヘキシルフタレート)(DEHP)の妊娠への影響、及びそれらがラットのストレス関連の行動を変えるかどうかを調査した。

 ”これらの化学物質への出生前の暴露は、後年の気分障害の一因となる可能性があるため、この研究は重要である。” −アムリタ・カイマル、PhD、研究共著者、ジョージア大学神経科学大学院プログラム

 合計 76匹スプラーグドーリーラット(SD ラット)がその研究に使用された。ラットを交配させた後、妊娠中の雌ラットに経口で、生理食塩水、BPA、BPA と低用量 DEHP の組み合わせ、又は BPA と高用量 DEHP の組み合わせを妊娠 6〜21日目に投与した。全ての用量は、ラットの体重に応じて調整された。

 行動試験は成体の子孫で行われ、ラットの脳はドーパミンやセロトニンのようなモノアミン神経伝達物質について分析された。

 BPA 及び BPA と低用量 DEHP の組み合わせを投与された雌の子孫、は、活動と探索行動を測定するオープンフィールド試験(訳注1)で不安が少ないことを示した。しかし、高用量の DEHP を投与された雄の子孫は、迷路の中で女性化された不安のような行動を示した。

 脅迫的な物体への反応を調べるテストで内分泌かく乱化学物質に暴露されたほとんどのグループの雄の子孫の恐怖反応は十分に表れなかった。興味深いことに、低用量の内分泌かく乱物質に暴露した雄と雌の子孫は対処方法が消極的であった。

 脳の研究では、BPA、低用量 DEHP 及び高用量 DEHP の雄の子孫、並びに BPA 及び高用量 DEHP グループの室傍核(訳注:間脳の視床下部を構成する神経核のひとつ)のドーパミンレベルが低下したことが示されている。これは、彼らの恐怖反応の障害に関連している。

 ”我々の研究は、これらの暴露の結果としての子孫の性別の行動変化を確認し、妊娠中はこれらの化学物質への暴露を避けるべきであるという事実を強調している”とモハン・クマールは述べた。

 モハン・クマールは、6月11日土曜日の正午に内分泌学会の ENDO 2022 における内分泌かく乱化学物質の記者会見に出席する。記者会見に参加するためには記者会見で登録してくいただきたい。


訳注1:オープンフィールド試験
  • オープンフィールド(Open field)
     オープンフィールド試験は、げっ歯類の不安関連および探索的行動を調査するために一般に受け入れられている単純な試験である。 オープンフィールドは空(から)のテストアリーナで、通常はラウンドまたはスクエアで、動物の活動が測定される。 壁に近づいた時間(thigmotaxisと呼ばれる不安様反応)対内側ゾーンの滞在時間および訪問頻度が測定される。 さらに、一般的な歩行動作(移動した総距離)はしばしば考慮される。(株式会社ソフィア・サイエンティフィック)

  • オープンフィールド試験とは何? わかりやすく解説 (Weblio辞書)
     円形あるいは四角形に囲った広場(open-field)に動物を置き、一定時間内(通常3〜5分)の動物の行動を観察・記録する。一日一回、三日間連続して観察することが多い。この試験は自発的活動性(運動量)、探索行動の測定法としても用いられるものであり、観察測度にはこれらの指標となるものも含まれる。情動性の指標としてしばしば観察される行動事象は、排糞(脱糞)および排尿であるが、観察測度としては排糞や排尿という行為の回数や排泄された糞塊や尿の数量をもちいる場合があり、かならずしも一定でない。
化学物質問題市民研究会
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