内分泌学会 2022年1月27日
医師、科学者、健康環境団体らが食品容器中の
ビスフェノール A を制限するよう FDA に請願

新しい調査結果は、BPA が以前考えられていたよりも10万倍低い
レベルで有害な影響を及ぼす可能性があることを示している

情報源:Endocrine Society January 27, 2022
Groups petition FDA to restrict bisphenol A in food packaging
New findings show BPA can have harmful effects at levels
100,000 times lower than previously thought
https://www.endocrine.org/news-and-advocacy/news-room/2022/
groups-petition-fda-to-restrict-bisphenol-a-in-food-packaging


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年1月31日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/220127_ENDO_
Groups_petition_FDA_to_restrict_bisphenol_A_in_food_packaging.html



【ワシントンDC 2022年1月27日】内分泌学会は、医師、科学者、及び健康・環境団体の連合に加わり、米国食品医薬品局(FDA)に正式な請願書を送付し、接着剤およびコーティング中のビスフェノールA(BPA)の承認を取り消し、食品に接触するプラスチック容器での使用には厳しい制限を設けるよう請願した。

  欧州食品安全機関(EFSA)によって召集された専門家の委員会からの新しい調査結果は、BPA 暴露による有害な影響が以前に考えられていたよりも10万倍低いレベル(訳注1)で生じる可能性があることを示している。この新しい安全レベルは、最近の科学的証拠に基づいており、ほとんどのアメリカ人が暴露しても安全であると FDA が言うレベルよりも 5,000倍以上低くなっている。

 間違いなく、これらの値は高い健康リスクを構成し、BPA の使用は安全ではないという結論を支持するものである。請願書は FDAに対し、食品 1キログラムあたり 0.5ナノグラムを超える食品への移行をもたらす可能性のある食品接触材での BPA の使用を制限するよう求めている。

 ”EFSA がビスフェノールの安全性を再評価するために使用したプロセスは、FDA が数十年前に承認した何百もの化学物質に対して用いるべきであった雛型である。それは透明性があり、徹底的で、科学に基づいている”と、EDF(ENVIRONMENTAL DEFENSE FUND 環境防衛基金)の「より安全な化学物質」のシニアディレクターであるトム・ネルトナーは述べている。 ”アメリカ人は 5,000倍以上 BPA に過剰にさらされているのだから、当局はこれを最優先事項とし、180日の法定期限までに最終決定を下さなければならない。”

 請願は、環境防衛基金、内分泌学会、乳がん予防パートナー、クリーンウォーターアクション/クリーンウォーター基金、消費者レポート、環境ワーキンググループ、健康な赤ちゃんの明るい未来、マリセル・マフィーニ博士、国立環境健康科学研究所および国家毒性プログラムの前所長リンダ・バーンバウム博士によって提出された。

 BPAは、ポリカーボネートやその他のプラスチックの製造に使用される。これらのプラスチックは、食品容器、ピッチャー、食器、貯蔵容器などの硬いものに一般的に使用されている。この化学物質は、金属製品の内面やボトルの上部の内側を覆うエポキシ樹脂にも使用されている。少量の BPA が容器や機器から食品や飲料に移行する可能性がある。

 業界は過去に、缶の内面ライニングやプラスチック製哺乳びんでの BPA の使用を制限するための措置を講じていた。これらの行動は、米国疾病予防管理センターからの 2008年の調査結果に続き、BPA が米国の成人の 92%に現れ、BPA が人間の女性ホルモンであるエストロゲンのように作用して正常な発達を妨げる可能性があることを示した追加の研究があった。

 EFSA の専門家委員会の調査結果は、BPA の影響が以前に理解されていたよりもはるかに悪く、人々が安全と考えられていた値をはるかに超えるレベルで暴露していることを示している。 EFSA の委員会によると、BPA への暴露が極端に低いと、免疫系が過剰になり、制御不能な炎症を引き起こし、卵巣の変化、内分泌かく乱、学習と記憶の低下を引き起こす可能性があある。

 ”FDAは、我々の食品と接触する可能性のある有害化学物質から我々を保護する義務がある”と、科学者であり請願書の共著者であるマリセル・マフィーニ博士は述べている。”これらの新しい発見は、食品と接触する可能性のある BPA の量を制限するための迅速な行動をとられなければ、我々の健康が危険にさらされるという、FDA と我々全員への緊急の警鐘となるはずある。”

 FDAは、PFASなどの食品包装に使用される化学物質によるリスクの理解を深めるために協力するなど、食品の安全性に関連するリスク評価とリスクコミュニケーションについて EFSA と長い間協力してきた。当局は今、EFSA の専門家からの BPA に関する警告に耳を傾け、化学物質への暴露を劇的に減らすための措置を講じる必要がある。

 ”これらの調査結果は非常に懸念されており、非常に低いレベルの BPA 暴露でも有害であり、生殖の健康、乳がんのリスク、行動、代謝の問題につながる可能性があることを証明している”と内分泌学会の BPA 専門家であるノースカロライナ大学(ノースカロライナ州ローリー)のヒーサー・パティソウル博士は述べている。”FDAは、内分泌かく乱化学物質の背後にある科学を認め、それに応じて公衆の健康を保護するために行動する必要がある。”

内分泌学会について  内分泌学者らは、糖尿病や肥満から不妊症、骨の健康、ホルモン関連のがんに至るまで、我々の時代の最も差し迫った健康問題を解決する中核を成している。内分泌学会は、ホルモン研究に専念する科学者らとホルモン関連の症状を持つ人々をケアする医師らの世界で最も古くて最大の組織である。

 協会には、122か国からの科学者、医師、教育者、看護師、学生を含む18,000人以上の会員がいる。学会と内分泌学の分野の詳細については、www.endocrine.orgのサイト及び、 Twitterで @TheEndoSociety と @EndoMedia をフォローしていただきたい。


訳注1
訳注:BPA 論争
化学物質問題市民研究会
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