Environmental Health News (EHN) 2020年4月23日
内分泌かく乱化学物質は COVID-19 の戦いで我々を弱める:
リンダ S. バーンバウム、ジェロルド J. ハインデル

リンダ S. バーンバウム、ジェロルド J. ハインデル
我々の国は不健康であり、我々の高い疾病率の多くは環境化学物質に関連している。
COVID-19 はこの広範囲にわたる暴露を防止する必要性をくっきりと浮き彫りにしている。


情報源: Environmental Health News (EHN), Apr 23, 2020
Endocrine-disrupting chemicals weaken us in our COVID-19 battle:
Linda S. Birnbaum, Jerrold J. Heindel

By Jerrold J. Heindel and Linda S. Birnbaum
We are an unhealthy nation - and many of our elevated disease rates are linked to environmental chemicals. COVID-19 is bringing into sharp focus the need to prevent this widespread exposure.
https://www.ehn.org/chemical-exposure-coronavirus-2645785581.html

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年4月25日

このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/200423_EHN_Endocrine-disrupting_chemicals_weaken_us_in_our_COVID-19_battle.html

 内分泌かく乱化学物質はホルモンになりすます。これらの陰湿な汚染物質は、 COVID-19 に感染しやすくする基礎条件となる病気を増大させる。

 ほとんどのアメリカ人は血液中に内分泌かく乱化学物質をもっている。我々はそれらに、食物、吸入する空気、飲料水、及び様々な製品を通じて暴露する。プラスチック、身体手入れ用品、薬、農薬、難燃剤、家庭用品、食品添加物、焦げ付き防止なべ、そしてその他多くの製品が内分泌かく乱化学物質を含んでいる。

 内分泌かく乱が人生のより早い時期に起きれば、ダメージはより厳しく永久的になり、糖尿病、心臓疾患、及び生殖系がんの様な疾病をもたらす。

 人間の疫学的研究とラボ動物での実験は、疑いなく、そのような暴露はこれら及びその他数多くの疾患に対する感受性を高めることを明らかした。暴露はまた免疫力の低下を引き起こし、それは感染症への脆弱性を増す。

不健康な国

 アメリカは現在、世界で最も不健康な国のひとつである。驚くべきことに 20歳以上のアメリカ人の 42.4% (概略 1億3,000万人)の人々が COVID-19 重症化の基礎疾患である肥満である。アメリカにおける肥満の割合を COVID-19 の感染者数の多い他の国と比較すると、日本(3.7%)、韓国(5.3%)、中国(7.0%)、そしてイタリア(9.8%)となる。

  COVID-19 に打ち勝つためには健康な免疫力が必要である。細菌及びウイルスによる感染症への防御を弱める一般免疫系疾患(Common immune system)は、ぜん息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、狼瘡(ろうそう)、多発性硬化症、乾癬(かんせん)、1型糖尿病、及びクローン病を含む。米・国立衛生研究所(NIH)によれば、約 2,350万のアメリカ人(全人口の約 7%)が1つ又はそれ以上の自己免疫疾患をわずらっており、2,500万の人々がぜん息である。アメリカは肺疾患を原因とする死亡について、世界の 183 か国中 43番目である。

 アメリカは先進国の中で 2型糖尿病の罹患者が最大で、20〜79歳の人口の11%を占め、約 3,400万人の糖尿病患者がいる。糖尿病の人々は COVID-19 感染症、及び合併症のリスクが高い。彼らは変動する血糖値を持ち、ウイルス感染症の治療を難しくしている。制御されていない血糖値はまた、心臓及び腎臓疾患の原因であり、 COVID-19 の人々の予後を悪化させる。

 糖尿病患者の 85%が過体重又は肥満であり、過体重/肥満の人々の 30%が 2型糖尿病なので、これら二つ基礎疾患だけで相互作用して、アメリカ人を特にCOVID-19 及び合併症に感染しやすくする

 アメリカは、高血圧を含んで、循環器系疾患による死亡率が世界第三位であり、心臓発作及び心臓疾患による死亡率は世界第二位であり、心臓疾患はアメリカの死因の第一位である。循環器系障害による死亡率は世界的に減少しているが、アメリカの減少は他のどの国よりも小さい。

 我々は、上昇するアメリカの疾病数を内分泌かく乱化合物への暴露だけに負わせることはできないが、上記の疾病と健康状態(糖尿病、肥満、心臓疾患、免疫系疾患/不全、及び呼吸器系疾患)の全ては、動物モデル及び人間疫学研究において、様々な内分泌かく乱化合物への暴露に関係していることは明らかである。

暴露に備え、削減すべき時である

 今は、このパンデミックの緊急の影響の削減に注力が払われなくてはならないが、他の流行病(epidemics)や世界的流行病(pandemics)は疑いなく我々に起こるということを理解することが重要である。今こそ準備すべき時である。

 我々自身を守るために我々が現在なすことができる最良のことは何か?

 上述した全ての疾病は、遺伝的及び環境的な要因の両方を持つ。我々は、我々の遺伝子を変えることはできないが、我々の環境を変えることはできる。

 我々の食事と栄養状態を改善し、内分泌かく乱化学物質への我々の暴露を減らすことは、我々の健康と幸福のため大いに有益になるであろう極めて重要な変化である。

 COVID-19 では、我々を素早く傷つけ、殺すことができる病原体を解明する必要があるのと同じように、COVID-19 より結果が現れるのが遅い内分泌かく乱物質では、それが我々の健康、生命力、及び抵抗力を徐々に破壊するのを防ぐために、より長期的な解決を必要とする。

リンダ S. バーンバウム(Linda S. Birnbaum)、Ph.D., 認定毒性研究者(DABT)、ATS、退役名誉科学者(Scientist Emeritus)、元所長( Director)、アメリカ国立環境健康科学研究所及び国立毒性計画、及び、ジェロルド J. ハインデル(Jerrold J. Heindel)、Ph.D.、退役計画管理者(retired Program Administrator)アメリカ国立環境健康科学研究所、は、世界中の住人の健康を改善することに注力する内分泌かく乱分野の先駆的上級科学者の団体である HEEDs Elders (https://heeds.org/)の代わりに、この論評を寄稿した。

 彼らの見解は、必ずしも Environmental Health News, The Daily Climate 又は publisher, Environmental Health Sciences の見解を表すものではない。

Banner photo: Lt. Kayla Marthy and Lt. Brianna Garcia treat a patient in the intensive care unit aboard the hospital ship USNS Mercy April 13. (Credit: U.S. Pacific Fleet)



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