Environmental Health News, 22020年4月17日
有害化学物質は、どのように
COVID-19 による死の一因となっているか:
フレデリック・ボンサール&アリー・コーエン

その多くが化学物質暴露に関連する慢性疾患は、
アメリカを席巻しているパンデミックを悪化させる
フレデリック・ボンサール&アリー・コーエン

情報源:Environmental Health News, April 17, 2020
How toxic chemicals contribute to COVID-19 deaths:
Frederick vom Saal, Aly Cohen

By Frederick vom Saal and Aly Cohen
Chronic diseases, many linked to chemical exposures,
are worsening the pandemic sweeping the U.S.
https://www.ehn.org/toxic-chemicals-coronavirus-2645713170.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年5月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/200417_ehn_
How_toxic_chemicals_contribute_to_COVID-19_deaths.html


 アメリカに住むほとんどの人々は、米国疾病管理予防センター(CDC)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡リスクが高いと特定した慢性疾患のひとつ又はそれ以上を病んでいる。

 これらの慢性疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、及び炎症性腸疾患(クローン病)及びループスの様な自己免疫疾患とともに、肥満、糖尿病、肝臓、腎臓、及び循環器疾患(合わせて代謝疾患と呼ばれる);ぜんそく、アレルギー、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む呼吸器系疾患を含む。

 これらの疾病の全ては、正常な免疫系機能のかく乱に関わり、結果として炎症をもたらす。慢性炎症は、体がCOVID-19 感染症の様な免疫系損傷への高い応答に反応するための準備である。

 アメリカでは、これらの慢性疾患は、プラスチック、建設材料、農薬、身体手入れ用品、家具、料理用品、食品容器、繊維製品、そし人間の生活のあらゆる局面に着実に深く入り込んでいる多くの製品で使用するための化学物質の製造の、劇的な増加に関連して、過去50年間、着実に増加している。

 研究者らは、驚くべき数のこれらの化学物質は、免疫応答炎症の調整機能を含んで、細胞間コミュニケーションに関わるホルモンの正常な機能を阻害することができる内分泌かく乱化学物質(EDCs)として分類されることを発見している。我々は、無数の一般消費者製品からの放出を通じて、屋内/屋外空気、飲料水、そして加工食品及び食品容器から、そのような化学物質に暴露している。

 慢性疾患は、アメリカでは着実に増加しており、内分泌かく乱化学物質がこれらの疾病傾向に影響を及ぼしていることを示す明確な証拠があるのに、米国食品医薬品局、及び米国環境保護庁を含んで、アメリカの規制機関は、これら多数の化学物質への米国民の継続的な暴露により引き起こされる危険性を認めることを拒否してきた。

食物由来の運命

 これらのまん延している化学物質は COVID-19 による死亡率に、どのように影響を与えているのか?

 例として、食品及び食品容器をとってみよう。アメリカでは、略語 SAD で示される”標準的なアメリカ人の食物(standard American diet)”は、ほとんどが低価格で、低栄養で、糖分が多く、化学添加物(香料、保存剤、着色剤が)で満ちた超・加工成分からなる。

 加工食品は、典型的には野菜、果物、ナッツ、及び全ての穀物など、食品全体で見出される栄養素、並びにビタミン、抗炎症性脂肪酸、ミネラル、及び微栄養素の様な、正常な免疫系機能に重要な抗酸化物質に欠ける

 ビスフェノールA(BPA)のような食品及び容器包装中の内分泌かく乱化学物質に加えて、加工食品の栄養不足はグルコース(血糖)調整のかく乱、インスリン抵抗性(インスリンに応答する細胞の能力低下)、及び炎症という結果をもたらす細胞機能障害に導く。

 内分泌かく乱化学物質と抗酸化物質の不足の組み合わせは、異常な炎症応答にぴったりの状況を作り出す。

 これに加えて、多くの慢性疾患の治療に使用される一般的な薬による有害な栄養的影響(ひとつの例は、糖尿病患者へのメトホルミン投与によるビタミン12 欠乏)がある。かくして、新型コロナウイルスのような感染因子への暴露に直面した時に、死亡リスクは、慢性疾患と一緒に生じる基礎となる炎症性状態によって増大する。

 現実には、それは影響を受けやすい個人が死ぬことになる新型コロナウイルスへの甚大な炎症反応であり、ウイルスそのものではない。皮肉なことに、栄養素のいくつか(亜鉛、ビタミン B3、ビタミン C、ビタミン D)及び野菜と果物からの抗酸化物質は、コロナウイルス感染症の長さと厳しさを低減するために現在、考察されている多くの治療介入の一部である。

 加えて、これらの抗酸化物質は、ダイオキシンや BPA のような内分泌かく乱化学物質の有害影響のあるものから実際にまもる。

行動を起こすべき時

 米国疾病管理予防センター(CDC)によりリストされた慢性疾患は、新型コロナウイルスに感染して死ぬ高いリスクに人々をさらすが、我々はこれらの疾病を突然減らし、アメリカ国民を安全にすることはできない。

 個々の生活スタイルを変えること、すなわち、内分泌かく乱化学物質を含まない栄養価の高い非加工の新鮮な又は冷凍食品、汚染されていない飲料水を摂取し、良い睡眠、ストレス管理、そして定期的な有酸素運動を行なうことは、ほとんどの慢性疾患のリスクを減らすための基本であるとみなされている。

 しかし、新型コロナウルスの急速な拡散は、パンデミック(世界的な大流行)が頻繁に起きるらしいという認識を高めている。

 次に感染症の大流行が起きた時に命を救うための中心的な課題は、健康管理に天文学的な金額をつぎ込んでいるにもかかわらず、アメリカを生きるために地球上で最も不健康な場所にしている上記で特定された慢性疾患の負担を我々はどのように低減するかということである。

 我々は、このパンデミックが露わにした問題の全てを解決するために求められる社会的な変化の全てに迅速に対応しそうもない。

 しかし我々は、アメリカ人が、汚染されていない飲料水を飲み、家の中及び外、学校、建物の中及び外で汚染されていない空気を吸い、有害化学物質で汚染されていない栄養的に妥当な食品を食べることができることを確実にすることに失敗しているアメリカの様々な機関を再構築するために行動を起こすことができる。特にアメリカでひどい痛手を受けているのは、大気及び水の甚大な汚染を被っており、健康で非加工食品へのアクセスができない少数者の地域社会である。これら主にヒスパニックとアフリカ系アメリカ人地域社会は化学物質排出と投棄場所の下流にあり、 COVID-19 による死亡率が高い。

 アメリカの慢性疾患の増大する負担を低減するために、我々は、CDC によればアメリカにおいて人々の大多数が一貫して暴露している有害な環境化学物質を規制するための我々のシステムを再構築するよう議会に勧告する。 過去に、このことをしようとするどのような試みも失敗した。化学産業がこれらの取り組みを乗っ取り、EPA は行動を起こすことに気乗りせず傍観している。

 同様に、米国食品医薬品局(FDA)食品安全部門は、加工食品に添加され、また食品包装・容器中で使用される数千の、その多くが有害な内分泌かく乱化学物質であることが示されている化学物質の安全性を決定する権限を化学物質製造者に引き渡している。

 アメリカの現在の効果のない規制システムは放棄され、強力な企業のための利益を最大限にすることより、科学と人々の健康を守るという真の欲求に基づき、再構築される必要がある。

 議会がこのことをしなければ、アメリカの慢性疾患の負担に関して、我々は次のパンデミック(感染症大流行)が起きるに時は、もっと多くの人々が死ぬというもっと悪い状況にいるであろう。

 フレデリック S. ボンサール( PhD )は、ミズーリ大学コロンビア校 生物科学部門、キュレーター名誉特別教授である。Dr.アリー・コーエン MD, FACR は、the Founder & Medical Director at Integrative Rheumatology Associates, PC and Founder & Medical Director at TheSmartHuman.com and The Smart Human on Facebook, Twitter and Instagram. 彼らは、有害物質への暴露を低減し、慢性疾患のリスクを低減し、全体的な健康と幸福を改善するのに役立てるために、もっと多くのリソース、ティップス、及びレシピーを書籍 Non-Toxic: Guide to Living Health in a Chemical World, Oxford University Press, 2020 の中で共有している。

 彼らの見解は、必ずしも Environmental Health News, The Daily Climate 又は publisher, Environmental Health Sciences の見解を表すものではない。

 Banner Photo: Members of the Washington Air and Army National Guard are supporting food banks around the state during the COVID-19 pandemic response. (Credit: The National Guard)



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る