ミズーリ大学 2020年2月18日
全ての BPA フリー製品が安全と考えるのは
ちょっと待てと科学者らが警告

ミズーリ大学の科学者らは BPA の代替物質であるビスフェノールSは
母親の胎盤及び発達中の赤ちゃんの脳の両方に有害影響を及ぼすことを発見した。

情報源: University of Missouri, Feb. 18, 2020
Think all BPA-free products are safe? Not so fast, scientists warn
MU scientists find BPA alternative, bisphenol S
could negatively affect both a mother's placenta and
potentially a developing baby's brain
https://news.missouri.edu/2020/think-all-bpa-free-
products-are-safe-not-so-fast-scientists-warn/


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年3月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/200218_MU_
Think_all_BPA-free_products_are_safe_Not_so_fast_scientists_warn.html

【コロンビア、ミズーリ州】”BPA フリー”のプラスチック製品を使用することは、議論ある化学物質 BPA を含むプラスチック製品と同様に脳の発達を含んで人の健康に有害であると、ミズーリ大学により実施され、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された新たな研究で、科学者らが示唆している。

 数十年間、科学者らは、動物モデルで BPA を広範囲に研究し、その化学物質が早期妊娠喪失、胎盤疾患、及び出産後の様々な否定的な健康状態にある役割を果たすことを示す結果を得た。これらの有害健康影響はより広く知られるようになっており、会社はプラスチック製品、すなわち飲料水ボトル及び食品容器を開発するにあたり、代替化学物質を使用する方向に舵を切っており、しばしばそれらに”BPA フリー”と表示した。しかしミズーリ大学(MU)の科学者シェリル・ロ−ゼンフェルドは、ビスフェノールS(BPS)のようなこれらの化学物質は人々が使用するのにやはり安全ではないと警告した。

 同研究でロ−ゼンフェルドと彼女の同僚らは、BPS のマウスの胎盤への影響を検証することに注力した。彼女は、胎盤は生まれる前の赤ちゃんが胎内で何にさらされていたのかを示す歴史的な記録として役立っていると述べた。胎盤はまた、母親が暴露したかもしれない、発達中の子どもに有害な化学物質など、どのようなものも彼女の血液中に移すことができる。

 ”BPS のような合成化学物質は母親の胎盤を貫通することができるので、母親の血液中を循環しているものは何でも容易に発達中の子どもに移行することができる”と、獣医学大学の生物医・科学教授であり、ボンド・ライフ・科学センターの調査官であり、ミズーリ大学(MU)の自閉症及び神経行動障害のためのトンプソン・センターの研究職員であるロ−ゼンフェルドは述べた。マウスと人間で胎盤は類似の構造を持っているので、このマウスのモデルは、人間の妊娠中に BPS の可能性ある影響についてシミュレーションを行うのに最良のモデルである”。

 ロ−ゼンフェルドは、マウス及び人間の両方において、胎盤は胎児の脳の発達のためのセロトニン(Serotonin)(訳注1)の一次供給源として機能すると付け加えた。セロトニンは、一般的に幸福感を感じることに関連する一方で、人間の感情及び睡眠、食物の摂食及び消化の様な身体活動を含む人間の機能に影響を及ぼすことができる天然の化学物質である。

 ”胎盤は、体が天然化学物質であると誤解して合成化学物質にも天然の化学物質と同様に反応するが、体はそのような産業化学物質の有害影響を軽減する能力を持っていない”とロ−ゼンフェルドは述べた。”もっと重要なことは、これらの化学物質は胎盤のセロトニン生成能力を弱める能力があるということである。発達の重要な時に脳はセロトニンを生成すべき胎盤に依存するので、セロトニンの低いレベルは胎児の脳の発達を損なうことがある。かくして BPA 又はその代替物質 BPS への発達中の暴露は長期の健康影響をもたらすことがある”。

 ロ−ゼンフェルドの研究は、動物科学の発見を人間に適用することの妥当性を決定することにより、人間の健康を改善することを目指すトランスレーショナル医療又は研究(訳注2)の早期段階のひとつの例である。この研究は、プレシジョン・メディシン(Precision Medicine)(訳注3)又は個別化医療(Personalized Medicine)のための基礎を提供することができる。プレシジョン・メディシンは、ミズーリ州及びそれを超える範囲の患者たちのための医療の飛躍的進歩を加速するのに役立つ、ミズーリ大学群の最優先事項である「NextGen Precision Health Initiative (次世代プレシジョン健康イニシアティブ)の主要素となるであろう。

 ”ビスフェノールA及びビスフェノールSのマウスの胎盤のかく乱及び”胎盤−脳への潜在的な影響(Bisphenol A and bisphenol S disruptions of the mouse placenta and potential effects on the placenta-brain axis)は、米国科学アカデミー紀要に発表された。共責任著者は、R. Michael Roberts at MU 及び Geetu Tuteja at Iowa State University である。他の著者は、Mao, Saurav Sarma, Barbara Sumner, Zhentian Lei, Lloyd Sumner and Nathan Bivens at MU; Ashish Jain at Iowa State University; and Nancy Denslow, Mohammad Zaman Nouri, Sixue Chen, Tingting Wang, Ning Zhu and Jin Koh at University of Florida である。

 研究資金は次の機関により提供された。アメリカ健康研究所(National Institutes of Health)、アメリカ環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)アメリカ国立小児保健発達研究所(Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development )。研究内容の責任は専ら著者らにあり、資金提供機関の公式見解を表すものではない。


訳注1:セロトニン
訳注2:トランスレーショナル・リサーチ
訳注3:プレシジョン・メディシン


化学物質問題市民研究会
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