Environmental Health News (EHN) 2019年10月28日
問題ある水:エストロゲンとその分身
セス・シーゲル
我々はすでに手にした技術を我々の水源に入り込む
エストロゲンを削減するために利用するのが賢明であろう

情報源: Environmental Health News (EHN), October 28, 2019
Troubled Water: Estrogen and its doppelgangers
We would be wise to begin making use of technologies
already in hand to reduce the estrogen that gets into our source water
By Seth Siegel
https://www.ehn.org/troubled-water-estrogen-and-its-doppelgangers-2641102160.html

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年11月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/191028_EHN_
Troubled_Water_Estrogen_and_its_doppelgangers.html

 アメリカ人の生活でピル(a pill)は非常に象徴的なので”The Pill”と呼ばれているが、1錠のピルは、全体として、廃水中で、そして潜在的には飲料水中でも、かなりの量のホルモンに寄与している。

 1960年の導入以来、避妊用ピルはどういう形であれ必要不可欠の処方薬である。
 今日、妊娠を望まないアメリカ人女性の 27%近くが、女性の体の内分泌系をだまし、排卵を抑制する合成エストロゲンであるピルを服用している。28日間のうちの21日間、1錠づつ服用されるピルが、アメリカの排水系に毎日合計1,000万錠以上、新たに加わる。

 避妊用ピルを服用する女性に加えて、閉経の影響を緩和するためにエストロゲンやホルモン補充組成物(サプリメント)を服用している妊娠可能年齢を超えた数百万人の女性がいる。

 一連のがん発症の懸念が高まって、エストロゲン補充療法の使用は 60%近く低下したが、それでも 400万以上のアメリカ人が更年期障害の緩和のために、まだホルモン補充を毎日行っている。

 それでも2000年代初期のある時点で、アメリカの 2,000万以上の女性が、避妊用ピルとして、月経調節の手段として、あるいは更年期障害の緩和のために、ホルモンを摂取していた。

 現在ではこれらのグル−プによる使用は、約 1,500万人の一定使用者という、それでもまだかなり大きな集団に減少しているが、どのようなレベルの使用であろうと、これ等のピルの全ては水中のエストロゲンホルモンの総残留量に加わる。

 これらの化学物質を摂取しているのは女性だけではないので、我々の水を汚染しているであろうこのホルモン総量はもっと多い。家畜は成長を促進するためにエストロゲン又は他の同様なホルモン類を与えられており、乳牛の場合には牛乳の生産量を上げるために乳牛はしばしばホルモンを投与されている。

 人間と同様に、数百万の動物がこれらの薬剤を摂取すると数時間以内にホルモンは排泄される。加えて、メス牛及び他メスの家畜は自然にエストロゲンを生成し、これもまた排泄される。

 飼育場で何らかの水処理が行われた後、地域の水路に運ばれようが、又は動物廃棄物として排泄され、地下水に浸透させるために土壌により吸収されようが、これらの残留エストロゲンの全てはまた全体に追加される。

 避妊用ピル及び家畜からのエストロゲン以外に、水源に入り込んでいるらしいもう一つの潜在的に大量のストロゲンの発生源がある。

 アメリカ地質調査所の研究生物学者ルーク・イワノーウィッチュ博士は、研究室における良性の生成もまた、いかにエストロゲン、又はエストロゲン様化合物への暴露の脅威に加担しているかを説明した。

 ”特定の非エストロゲン生物学的作用のために設計された多くの化学物質があるが、それらはまた、偶然にエストロゲンの様に、通常は’弱エストロゲン’様に作用するものがある”とイワノーウィッチュは言う。これは、新たに設計された化学物質の構造が、ある生物学的作用を共有するために十分な程度にエストロゲンに類似している場合である。

 これらの化学物質は、エストロゲンとしての役目を果たす、又はエストロゲンを擬態するということとは完全に異なる目的のために、研究室で開発されたにもかかわらず、”それらは、肥満、糖尿病、及び行動障害の様な他の可能性のある結果とともに、生殖及び性的健康を含んで、体の正常な機能を阻害する能力を持っている”と、イワノーウィッチュは言う。

 これらのエストロゲン化合物は、数ある中でも特にプラスチック製品、化粧品、及び産業用溶剤はもとより、多くの除草剤及び殺虫剤に含まれる。そしてそれらは”純粋のエストロゲンの様に生物活性ではないが、それらは水源に大量に入り込んでいる”と、イワノーウィッチュは言う。

 避妊用ピルの様にエストロゲンとして設計された化学物質より、エストロゲンとしては弱いにもかかわらず、これらのエストロゲン化合物はエストロゲンそのものより懸念が大きいかもしれない。

 ピル及び動物飼料に由来するエストロゲンは、”数週間又は数か月で、そして確実に数年以内に劣化する”とイワノーウィッチュは言う。”しかし、これらの化学物質の多くは太陽光や様々な天候に耐えるよう設計されているので、避妊用ピル中のエストロゲンの様に簡単には劣化しない。これらのエストロゲン化合物は長期間存在し得る”。

 地表水中のこのエストロゲンとエストロゲン様化合物の人間への影響はまだ未知であるが、イワノーウィッチュと彼の同僚の魚類生物学者らは魚に及ぼすらしい影響を見ている。これらの化学物質に暴露した魚は様々な異常を示し、また繁殖力の低下(特にオス)及び個体群の崩壊をもたらしている。

 もしこれらの魚が人間やその他の生物種にやってくることの前兆であるなら、−それらはもっと多くの研究によってのみ知ることができることであるが−、我々はすでに手にした技術を我々の水源に、そしてそこから我々の飲料水に入り込むエストロゲンを削減するために利用するのが賢明であろう。


 この記事は、『Troubled Water: What's Wrong with What We Drink" by Seth M. Siegel(問題ある水:我々が飲むことで何が悪いのか セス M. シーゲル著』からの抜粋である。 著作権は著者にあり、St. Martin's Publishing Group.による許可の下に転載された。




化学物質問題市民研究会
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