Environmental Health News (EHN) 2019年7月26日
BPA の代替物質は、子どもたちと
10代の若者の肥満に関連していた

BPA を類似の化学物質で代替しても
化学物質暴露が我々の健康に及ぼす有害性を何ら緩和しない
エミリー・マコウスキー

情報源: Environmental Health News (EHN), July 26, 2019
BPA substitutes linked to obesity in children and teens
"Replacing BPA with similar chemicals does nothing to mitigate
the harms chemical exposure has on our health"
By Emily Makowski
https://www.ehn.org/bpa-substitutes-linked-to-obesity-
in-children-and-teens-2639328996.html


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年11月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/190726_EHN_
BPA_substitutes_linked_to_obesity_in_children_and_teens.html

 内分泌学会のジャーナルに本日発表された研究によれば、ビスフェノールA(BPB)の代替として使用されている二つの化学物質は子ども時代の体重増加(weight gain)と肥満(obesity)の一因かもしれない。

 その研究は、ビスフェノール化合物が子どもたちや10代の若者の肥満度指数(body mass index)の増加に関係しているという多くの証拠に加わるものである。”これ等の化合物への人間の暴露が将来も増加し続けるならば、それは問題であり続けるであろう”と、著者らは述べた。

 ビスフェノールS(BPS)及びビスフェノールF(BPF)は、プラスチックや金属(訳注:内面コーティング)の食品容器、レシート、及び電子機器(訳注:積層板や半導体封止材など)の中で数十年間使用されてきた BPA に類似した化学物質である。製品中での BPA の使用は、内分泌かく乱化学物質としての役割についてよく知られるようになったために、減少している一方で、 BPS と BPF は代替物質としてますます使用されているが、構造的に BPA に類似しているので、それらは同様な健康影響を持つように見え、研究者らは”残念な代替”と呼ぶ。

 ビスフェノール化合物はホルモンであるエストロゲンを擬態し内分泌系に影響を及ぼす可能性がある。それらが体内に入り込む経路は、容器からの食品や飲料の浸出を通じてであるが、それらはまた皮膚を通じても吸収される。

 新たなその研究は、ニューヨーク大学医学部の研究科学者であるメラニー・ジェーコブソンによって率いられた。それはアメリカ全国健康栄養調査(US National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)からの データを検証したものであるが、それは 2013年〜2016年の間に 1,831 人の子どもと若者の尿中の BPA、BPS、及び BPF レベルを測定したものである。ほとんど全ての研究対象者である 97.5 %が尿中に検出可能な濃度の BPA をもっており、一方 BPS と BPF は尿サンプルの 87.8 % 及び 55.2 %にそれぞれ検出された。

 研究者らは尿中の BPS 濃度と子ども時代の太り過ぎ(overweight)との間の相互関係を見出した。尿中の BPS 濃度が増えるほど、子どもは肥満(obese)になりやすい。尿中の BPF 検出は一般的な肥満(general obesity)と有意に関連していなかったが、それは太りすぎ(overweight)及び特に腹部肥満(abdominal obesity)と有意に関連していた。

 中心性肥満(central obesity)とも呼ばれる腹部肥満は、胃や腹部周囲の過剰脂肪の存在である。腹部肥満の人々はインスリン抵抗性(insulin resistance)を発症しやすく、2型糖尿病及び心血管疾患の原因となり得る。

 食事と運動が肥満の主要因であるとまだ考えられているが、この研究は普通の化学物質への暴露(common chemical exposures)もまた、特に子どもたちの中で、ある役割を果たすことを示唆していると、記者発表の中でジェーコブソンは述べた。

 同研究はビスフェノール暴露を子どもたちの体重増加(weight gain)の原因であると決めなかったが、研究者らはそれはもっともらしく思われると言っている。これと類似した以前の研究は、ビスフェノール化合物と肥満との間の関連を見出しマウスでの毒性学的研究は、これらの化学物質が脂肪細胞を大きくし、血糖値の調節を助けるホルモンであるアディポネクチンを減少させることによりある役割を果たすことを示唆した。

 結果を複雑にするひとつのことは、たくさん食べる人々は肥満になりやすいだけでなく、ビスフェノール化合物を含む食品容器により多く暴露しやすいということである。しかし、研究者らがカロリー摂取量を管理した時には、結果には有意な相違はなかった。

 現在、多くの製品は BPA-free(BPA を使用していない)と表示しているが、 BPS-free 又は BPF-free と表示しているものはそれほど多くなく、ある製品がこれらの化学物質を含んでいるかどうかを消費者が知ることは難しいであろう。ある研究者らはレシートに触れることを回避するというような予防的措置を推奨しているが、ビスフェノール化合物は多くの日用品中に存在するので、暴露を避けるのは難しい。

 ビスフェノール化合物は非常によく使用されているので、それらの健康影響は研究され、監視され続けられる必要があると同研究の著者らは述べた。” BPA を類似の化学物質で代替しても化学物質暴露が我々の健康に及ぼす有害影響を何ら緩和しない”とジェーコブソンは述べた。

関連情報:

訳注:参考情報
当研究会が紹介したビスフェノールA(BPA)問題




化学物質問題市民研究会
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