UMass Amherst News 2015年7月10日
ホルモン関連のがんは出生前に始まるのか
マサチューセッツ大学アマースト校の科学者が
擬似エストロゲン物質の役割を調査予定

情報源:UMass Amherst News, July 10, 2015
Could Hormone-Related Cancers Start Before Birth?
UMass Amherst scientist will investigate role of estrogen-mimicking chemicals
http://www.umass.edu/newsoffice/article/could-hormone-related-cancers-start-birth

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年7月30日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/150710_UMass_Hormone-Related_Cancers.html

【アマースト、マサチューセッツ】−乳がんの罹患率が上昇しているので、遺伝に多くの関心が注がれているが、ほとんどの女性の家族は乳がんの病歴がなく、そのことは我々がまだ理解していない環境的要因があることを示唆しているとマサチューセッツ大学アマースト校の公衆健康及び健康科学部の環境健康科学者ローラ・バンデンバーグは述べている。

 現在彼女は、胎内でのエストロゲン又はエストロゲン様化学物質への暴露が乳がんのひとつの要因かもしれないという可能性を調査するために、国立環境健康科学研究所(NIEHS)の若手科学者賞の支援を受けて3年間で 450,000ドル(約5,4000万円)の研究プロジェクトを立ち上げようとしている。”我々はすでに、乳がんの主要な既知のリスク要素はエストロゲンへの暴露であるということを知っており、従って早熟の少女や閉経になった女性はより高いリスクがある”と、彼女は述べている。

 バンデンバーグの調査は、ビスフェノールS(BPS)と呼ばれる疑似エストロゲン化学物質に焦点を当てるであろう。BPS はビスフェノールA(BPA)に関連し、現在、BPA の代わりにプラスチック、感熱紙レシート、食品容器、及びその他の製品中で、しばしば使用されている。

 ”現在、数百の BPA に関する論文があり、BPA がエストロゲンを擬態すると結論付ける証拠が十分にあるという点に我々は到達している”と彼女は特筆している。”ある製品が BPA フリー(BPA を使用していない)と言うために、製造者らは代わりに BPS を使用し始めた。それはまだ、ほとんど研究されていないが、いくつかの研究は BPS もまたエストロゲンのように作用することを示唆している。我々は、それぞれの化学物質について政策決定をするためにその証拠が必要であり、これらの化学物質を研究することは、ホルモンに感受性が高い器官が外界からの刺激(an environmental insult)に対して、どのような症状を示し、反応するのかをよりよく理解するために役に立つ”。

 ”ほとんどの研究は、思春期及び成人期のエストロゲン暴露に焦点を当てているが、胎内での天然又は合成エストロゲンへの暴露が乳がんリスクを高めることができることを示唆する研究はわずかである”と、バンデンバーグは言う。”残念ながら、十分な研究はほんのわずかしかない。たとえば、妊娠したことがわかるまで経口避妊薬を利用し続けていた女性の胎児と同様に、双子の少女は胎内でより高いエストロゲン暴露を受ける。それは微量であるが、重要である”。

 その様なデータは、胎児の乳房組織は、妊娠中に発達するので感受性が高いだけでなく、成長後に現れる病気について胎内で刺激を受けており、”我々はそれがどのようなものなのかを知りたい”と、バンデンバーグは言う。彼女の研究の通常ではないことのひとつは、彼女が男性と女性両方の乳房組織に及ぼす可能性ある暴露影響を調べようとしていることである。

 この NIEHS 後援研究プログラムの一部として、バンデンバーグは、乳腺に及ぼす化学物質影響を調査するために、生体組織及び細胞ベースのアプローチだけでなく、外科的、内分泌的及び分子的ツールを利用することを可能とするために、彼女が一緒に研究したいと思う専門家のチームを組織した。そのチームには発達内分泌学及び内分泌かく乱物質の専門家である R. トーマス・ゼラーと、ホルモンと遺伝の交差に関する専門家である D. ジョセフ・ジェリー −両者ともにマサチューセッツ大学アマースト校− が含まれる。

 バンデンバーグはまた、 乳腺を利用してして環境毒素を検証するために NIEHS のスーザン・フェントンとともに、そして内分泌かく乱物質スクリーニング手法及び化学物質混合物を検証するためにミズーリ大学のスーザン・ネーゲルとともに研究をするであろう。

 これより早く、バンデンバーグはマウスにおけるオスの乳腺発達に関し、化学物質、特に BPA への環境的暴露の影響を研究する最初の科学者の一人であった。オスのマウスは乳首を持たないが、乳腺はある。この新たな研究について、”我々が調査する予定の最大の疑問のひとつは、男性の乳がんは女性の乳がんと同様なのかどうか、特にそれが生命初期に潜在することがあり得るのかどうかということである”と、彼女は述べている。

 彼らが使用するであろうもうひとつ技術には、外界からの刺激(an environmental insult)に暴露されるべきは乳腺だけなのか又は体全体なのかを調べるために、暴露した動物から非曝露の動物への乳腺の移植、及びその逆、が含まれる。彼らは、In situ ハイブリダイゼーション法(ISH)を用いて、発現している遺伝子が異なる視覚化パターンを持つかどうかを見るために、遺伝的影響を検出し、胎芽及び胎児期に発達する乳房組織を調べるために、高速スクリーニング技術をもまた、用いるであろう。



化学物質問題市民研究会
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