エルサルム・ポスト 2023年8月21日
妊娠中にフタル酸エステル類に暴露すると
赤ちゃんに影響を与える可能性がある

エルサレムのヘブライ大学の新しい研究は、出生前にフタル酸エステル類に
暴露したことが子どもたちの感情的および行動的発達に及ぼす潜在的な影響に光を当てた。
ジュディ・シーゲル=イツコヴィッチ(健康科学記者)

情報源:The Jerusalem Post, August 21, 2023
Exposure to these chemicals during pregnancy
can impact your baby - study

A new study from the Hebrew University of Jerusalem has shed light on the potential consequences
of prenatal exposure to phthalates on the emotional and behavioral development of children.
By Judy Siegel-Itzkovich
https://www.jpost.com/health-and-wellness/pregnancy-and-birth/article-755581

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2023年8月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/Int/230821_Jerusalem_Post_
Exposure_to_these_chemicals_during_pregnancy.html

 内分泌かく乱化学物質 (EDCs) の一種であるフタル酸エステル類はどこにでも存在する。 これらは、石けん、シャンプー、ヘアスプレーなどの身体手入れ用品;ビニール床材;潤滑油;プラスチック包装、医療用チューブ、園芸用ホースなどに使用されるポリ塩化ビニルプラスチック類を含む、我々が毎日家庭やその他の場所で目にする何百もの製品に一般的に含まれている。(訳注:フタル酸エステル類の問題と政策に関する情報/化学物質問題市民研究会

 これらの化学物質類は、人間の健康に悪影響を与える可能性があるため、懸念が高まっている。 エルサレムのヘブライ大学(HU)ハダサー校ブラウン公衆衛生・地域医学大学院と同大学心理学部の研究者らによる新たな研究は、フタル酸エステル類への出生前暴露が幼児の感情的および行動的発達に及ぼす潜在的な影響に光を当てた。

 この研究は、”出生前におけるフタル酸エステル類への暴露と幼児における感情/行動発達”と題され、Science Direct 誌の NeuroToxicology に掲載された。
Science Direct/NeuroToxicology, Volume 98, September 2023, Pages 39-47
Prenatal exposure to phthalates and emotional/behavioral development in young children https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0161813X2300102X

フタル酸エステル類への暴露は子どもたちにどのような影響を与えるか?

 この研究では、子宮内での胎児のフタル酸エステル類への暴露と生後24か月の幼児の発育結果との関連性を調査し、妊娠初期に測定された母親の DEHP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)代謝物のレベルが高いと、2歳男児の感情および行動の発達への影響と関連することを発見した。この研究は、潜在的に有害な化学物質としての DEHP に対する懸念をさらに高め、環境意識を高める必要性を浮き彫りにした。

 タミー・ピオスキー・ペレグ博士とロニット・カルデロン・マルガリット教授の指導の下、博士論文の一部としてこの研究を実施したリロン・コーエン・エリラズ博士は、この結果は妊娠中のこれらの化学物質への暴露の影響を理解することの重要性を強調していると述べた。

 この研究の主な目的は、フタル酸エステル代謝産物のレベルと幼児の感情/行動発達との潜在的な関連性を明らかにすることであった。 この研究では、妊娠 11〜18 週目の女性を募集し、そのスポット尿サンプル(訳注:スポット尿:早朝第1尿や24時間蓄尿のように特定の時間に採尿するのでなく、随時、採取される尿/マイナビ看護師)から DEHP、DiNP、MBzBP などのフタル酸エステル代謝物を分析した。 子どもたちの発達と行動の進歩は、 2 歳時に、158 人の女性が記入した十分に確立された(標準的な)アンケートを使用して評価された。

 研究の結果、注目すべき性別特有の関連性が明らかになった。 具体的には、この研究では、第1トリメスター(妊娠初期)における母親の DEHP への暴露が、幼児の感情的/行動的発達結果と相関していることが判明した。 DEHP 暴露が低い男児と比較して、より高いレベルの DEHP に暴露した男児は、個人の社会的能力の発達スコアが低く、感情反応スコア、不安または抑うつスコア、身体性愁訴スコアなどの内在化問題や外在化問題の割合が高かった。(訳注:内在化問題行動は、恐怖、身体的な訴え、不安、社会的引きこもりなど自己の内部に問題を含むもの。それに対して、外在化問題行動は、非応諾性、攻撃、非行、かんしゃく、多動性などであり、環境との葛藤を含むもの。/内在化・外在化問題行動の保護要因を明らかにする 藤生英行 カウンセリング心理学)  興味深いことに、母親が妊娠中にさまざまなレベルの DEHP に暴露した女児の発育や行動には、そのような影響は観察されなかったと研究者らは強調した。

 これらの発見は、母親のフタル酸エステル類への暴露が、特に男児の感情的および行動的発達に潜在的な影響を与えることを強調している。”我々の研究は、妊娠中の有害な化学物質への暴露を最小限に抑えるための環境意識の向上と行動の必要性を強調する証拠をさらに増やしている。 内分泌かく乱化学物質が人間の健康と発達に及ぼす長期的な影響をさらに理解するには、この分野での継続的な研究が不可欠である。”



化学物質問題市民研究会
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