Medical News Bulletin 2019年11月4日
内分泌かく乱物質への初期胎内暴露は
子どもの低 IQ に関連するか?

マリア-エレーナ・ベルナル
情報源:Medical News Bulletin, November 4, 2019
Is early prenatal exposure to endocrine disruptors
associated with a lower IQ in children
By Maria-Elena Bernal B.Sc. (Hons)

https://medicalnewsbulletin.com/is-early-prenatal-exposure-
to-endocrine-disruptors-associated-with-a-lower-iq-in-children/


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年11月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/Int/191104_MNB_Is_early_prenatal_exposure_
to_endocrine_disruptors_associated_with_a_lower_IQ_in_children.html


 研究者らは最近、26種類の内分泌かく乱物質への胎内暴露が 7歳児の知能指数(IQ scores)に及ぼす影響を評価した。

 マウントサイナイ医科大学及びスウェーデンとフィンランドの研究者らは、疑わしい内分泌かく乱物質(EDCs)の混合物への胎内暴露は子どものより低い知能に関係することを発見した。ほとんどの以前の研究は単一 EDC だけの影響を切り離して調査していたのに対し、 Environment International に発表されたこの研究は、疑わしい EDCs の混合物の神経系発達への影響に目を向けている点が異色である。

 スウェーデンぜんそくとアレルギーに関する母と子の環境縦断調査(SELMA)は、妊娠第1三半期の 718人の母親からの血液及び尿サンプル中に、26種の疑わしい EDCs の存在を定量化した。特に、フタル酸エステル類、ビスフェノール化合物類、パーフルオロアルキル化合物類(PFASs)、有機塩素化合物類、及びその他の短寿命汚染物質類が分析された。7年後に心理学者らは子どもたちの知能(全体的認識能力)を評価し、研究者らは EDC 混合物の知能への影響を見積もり、混合物中の懸念ある化学物質を特定するためのツールとして加重分位点合計回帰法(Weighted Quantile Sum regression)及び繰り返しホールドアウト検証法(repeated holdout validation)を使用した。

より低い知能指数に関連する内分泌かく乱物質類への暴露

 研究者らは、その母親が妊娠中により高いレベルの EDC 混合物を持っていた子どもたち(特に男の子)の知能指数は 2 ポイント低いことを発見した。ビスフェノールA(BPA)を代替するために作り出され、プラスチック製食品・飲料容器中に存在する有害物質であるビスフェノールF(BPF)は、子どもたちの知能を低くするのに最も大きく寄与しており、そのことはビスフェノールFは 神経系発達への有害性についてに BPA に比べて少しも安全な代替物質ではないかもしれない。

 得られた知能指数は、回帰分析が、BPF が自身によって知能指数への影響を十分に説明していないことを示しつつ、 BPF なしに再実行された時に類似していることに留意することは興味深い。全ての子どもたちの中で、殺虫剤中に存在する 3,5,6-トリクロロ-2-ピリジノール(TCP)、香水、せっけん、シャンプー、及びその他の身体手入れ用品中に存在するフタル酸モノエチル(MEP)、及び焦げ付き防止調理器具及び食品包装中に存在するパーフルオロオクタン酸(PFOA)を含む、懸念ある他の化学物質は大部分が短寿命汚染物質類である。

 EDCs は、環境中、食品中、消費者製品中、及び建築材料中に存在するので、それらへの胎内暴露は現実的には避けることができない。たとえ低用量であっても EDCs はホルモン恒常性(ホメオスタシスを阻害する能力を持ち、以前の研究はフタル酸エステル類や BPA を含んで EDCs は子どもたちの神経系発達障害に関係していることを示唆していた。どのように EDCs が認識機能に影響を及ぼすかの生物学的メカニズムはまだ十分には知られていないが、科学者らは複合 EDCs が相互作用して予測しないホルモン変化を引き出しているかもしれないと疑っている。科学者らはまた、例え短い時間であっても内分泌かく乱物質に胎内暴露すれば、成人しても永続的な健康影響をもたらすかもしれないことを恐れている。したがって内分泌かく乱物質への胎内暴露を防止することが子どもたちへの有害影響を緩和するために最も重要である。

 しかし、同研究は知能指数の評価時に家族の社会経済的状況を考慮しておらず、妊娠後期及び子ども時代の EDC 暴露の影響を考慮していない。ビスフェノールF(BPF)及びその他の代替化合物の有害影響をもっと確認するために将来の研究が必要であり、これらの研究結果を検証するためにもっと多くの調査が求められる。

References:

訳注:類似研究(参考)
【5-1753】 環境化学物質の複合曝露による喘息・アレルギー、免疫系へ及ぼす影響の解明 (H29〜H31) 研究代表者 荒木 敦子(北海道大学)



化学物質問題市民研究会
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