ケムトラスト 2024年3月6日
欧州委員会が特定の食品接触材料中の
BPA を禁止する提案を発表

エレノア・ホーク
情報源: CHEM Trust, March 6, 2024
EU Commission publishes proposal to ban
BPA in certain Food Contact Materials
March 6, 2024 By Eleanor Hawke
https://chemtrust.org/eu-proposal-ban-bpa-in-certain-fcms/

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2024年3月14日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/240306_
CHEM-Trust_EU_Commission_publishes_proposal_to_ban_
BPA_in_certain_Food_Contact_Materials.html


 欧州委員会は、特定の食品接触材料 (FCMs) におけるビスフェノール A (BPA) 及びその他の有害なビスフェノール類の使用を禁止する提案に関する公開協議を開始した。(Food safety - restrictions on bisphenol A (BPA) and other bisphenols in food contact materials)

 BPA は最もよく知られ、一般的に使用されているビスフェノールで、食品包装などのポリカーボネート・プラスチックや樹脂の製造に広く使用されている化学物質である。

ケムトラスト(ケムトラスト) はこの提案を歓迎

 我々は、特定の食品と接触する材料中の BPA 及び”その他のビスフェノール類”を制限するという委員会の意図を歓迎する

 特に、残念な代替品(regrettable substitution)となるリスクが高いため、提案に”その他のビスフェノール類”を含めたことを歓迎する。 ”その他のビスフェノール類” (BPS や BPF など) は BPA の代替品として使用されることが増えており、その一部は同様の健康への影響を示している。 残念な代替品について詳しくは、我々のレポート『BPA から BPZ へ: 有毒なスープ?(From BPA to BPZ: a toxic soup?)』をご覧ください。 我々は長い間、ビスフェノール類をグループとして規則することを主張してきたため、この提案におけるビスフェノール類のグループ化を支持する。

 また、ビスフェノールが REACH で有害として正式に分類された場合(訳注:SVHC(高懸念物質):認可対象物質の候補になった場合)、自動的に制限(訳注:REACH規則 制限対象物質リスト:制限対象物質は個々の制限条件に合致しない場合には製造、上市又は使用はできない/化学物質と法規則研究所)に含めるということを強く支持する。 このアプローチは 食品接触材規則(FCM legislation )にとって新しいものである。 ビスフェノール類の関連危険性が認識された後、即時規則が確実に行われるため、高レベルの健康保護を達成するのに効果的であるはずである。

提案のギャップ

 しかし、ケムトラストは、より高いレベルの健康保護を確保し、規則上の確実性を高めるために、この提案には改善の余地があると考えている。

 制限の範囲は、発がん性、変異原性、生殖毒性が疑われる、又は内分泌かく乱化学物質が疑われる(区分 2 の CMRs 及び EDCs として知られる)”その他のビスフェノール類”を含むように拡大されるべきである(訳注:欧州分類、表示、包装に関する規則(EU CLP規則)区分2:/ケムペディア)。

 また、この提案は、BPA 及び”その他のビスフェノール類”が現在使用されている、将来使用される可能性がある、または汚染されたリサイクル材料の使用により存在する可能性があるすべての FCMs (食品接触材料類)をカバーするように拡張されるべきである。

 最後に、有害なビスフェノール類への人間(及び環境)の暴露をできるだけ早く止めるために、法律の移行期間を短縮する必要がある。

 公開協議に対する我々の詳細な対応をご覧ください。

 欧州委員会のウェブサイトで提案草案を読み、公開協議に回答してください。

食物中の BPA による EU 国民のリスク

 この制限は、2023年4月に欧州食品安全機関(EFSA)が発表したBPAの毒性の再評価を受けて開始された(訳注:欧州食品安全機関(EFSA) 2023年4月19日 食品中のビスフェノール A は健康リスクである/当研究会訳)。EFSA は BPA の毒性に関する 800以上の新たな研究を検討し、耐容一日摂取量(TDI)*を削減した。 2015 年に以前に設定された BPA の約 20,000 倍である。(訳注:1 日あたり体重 1 キログラムあたり 4 マイクログラムという以前の暫定レベルに代わって、1 日あたり体重 1 キログラムあたり 0.2 ナノグラムという TDI を設定した。

原注(*):TDI は、健康にリスクを及ぼすことなく、人が生涯にわたって毎日 (空気、食物、飲料水を通じて) 摂取できる物質の量の推定値。

 EFSA の専門家らは、この新しい TDI と人々の BP Aへの推定暴露量を比較し、あらゆる年齢層の人々の健康が食事中の BPA によって危険にさらされていると結論付けた(訳注:欧州食品安全機関(EFSA) 2023年4月19日 食品中のビスフェノール A は健康リスクである/当研究会訳)。

 その後、2023年9月に欧州環境庁(EEA)は、EU 国民の BPA への実際の暴露量は許容される健康安全レベルをはるかに上回っており、数百万人に潜在的な健康リスクをもたらしていると結論付けた

 ケムトラスト の化学政策専門家であるアントニア・ライレンは次のように述べている。

 ”EUが我々の食べ物や飲み物と接触する物質中のBPAやその他の有害なビスフェノールを制限することは素晴らしいニュースである。 しかし、人々の健康を適切に保護するためには、制限はすべての FCMs(食品接触材料類)を対象とする必要があり、発がん性、変異原性、生殖毒性が疑われる化学物質、または内分泌かく乱化学物質の疑いがある化学物質にも対処しなければならない。
 我々はまた、EU の 食品接触材規則(FCM legislation)の改正が緊急に必要であることを改めて表明する。 この改訂がなければ、人々と環境は FCM で使用される有害な化学物質にさらされ続けることになる。”

食品接触材規則(FCM legislation) 規則の改正が必要

(訳注/参考:食品輸出にかかる食品接触材規則と留意点:EU |JETRO

 ケムトラスト は、食品と接触する材料中の BPA 及びその他の有害なビスフェノール類を禁止する提案を歓迎しているが、EU の FCM 枠組み規則の改正がさらに急務となっている。

 長い間待ち望まれていたこの規則の改正は、2020年5月に初めて約束された。この改正は、一般的な制限によるものや、完成した食品と接触する製品に対するより多くの要件を定義することなど、有害化学物質の使用の削減に焦点を当てることが発表された。 改正に関するパブリックコンサルテーションへの回答は、行動に対する広範な支持を示した

 しかし、改正は度重なる遅れに見舞われており、現在、法案提出は”2024年以降”と予想されている。 EU の時代遅れの法律を改善し、食品と接触する材料の化学的安全性を高めるために、食品接触材規則(FCM legislation)の改正が切実に必要とされている。

 FCM に含まれる有害な化学物質について詳しくは、当会(ケムトラスト)の毒性のない食品包装 Web サイト(Toxic Free Food Packaging website)をご覧ください。



化学物質問題市民研究会
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