クライアントアース 2023年3月10日
EU 司法裁判所、 BPA に関して
プラスチック業界に最後の打撃を与える

情報源:ClientEarth, 10 March 2023
EU Court delivers final blow to plastics industry on BPA
https://www.clientearth.org/latest/press-office/press-list/
eu-court-delivers-final-blow-to-plastics-industry-on-bpa/


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2023年3月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/230310_ClientEarth_
EU_Court_delivers_final_blow_to_plastics_industry_on_BPA.html


 EU 司法裁判所(EU Court of Justice)はプラスチックの製造に使用される化学物質であるビスフェノール A (BPA) が野生生物にとって「非常に高い懸念(very high concern)」であるとの欧州化学物質庁 (ECHA) の決定が正しかったことを本日、確認した。 それは、製造業者と輸入業者らに、さらなる義務を課すことを意味し、彼らは代替品に投資すべきであるあることを示している。

 BPA は、動物や人間の天然ホルモンの機能を模倣することが証明されている。 たとえば、魚類や両生類の繁殖能力に害を及ぼし、個体群の安定性に影響を与える可能性があることが示されている

 クライアントアース(ClientEarth)の法律及び政策顧問であるヘレン・デュゲイ(Helene Duguy)は、”BPA の害に関する科学的証拠が大量にあることを考えると、これは常識的な判断である。 法廷でこれらの決定に時間と資源を費やすのではなく、産業界は安全で持続可能な化学物質への投資に集中するべきである”。

 この判決は、一般裁判所(General Court)が BPA は野生生物にとって危険であるとの判決を下したことに対する、プラスチック産業を代表する業界団体であるプラスチック・ヨーロッパ(PlasticsEuropeによる控訴の結果である。

 プラスチック・ヨーロッパ が BPA で敗訴したのはこれが初めてではない。 過去 4 年間で、裁判所は、BPA が人間、特に私たちの生殖系及びホルモン系に破壊的な特性を持っていると認めた EU の決定も確認した。

 今日の判決で、司法裁判所は、BPA を野生生物のホルモンをかく乱する化学物質として認めた欧州化学物質庁(ECHA)の 2018 年の決定を支持した。

 BPA は、容器やボトル、ケトル(やかん)、歯の詰め物など、広範囲の製品でプラスチックを製造するために使用される。

 クライアントアース(ClientEarth)は 欧州化学物質庁(ECHA)を支持して、プラスチック・ヨーロッパ(PlasticsEurope)に対する訴訟に介入した。

 EU レベルでは、ビスフェノール類の広範な制限を提案する取り組みが進行中であり、ドイツ当局が主導している。 これは、グループごとに、最も有害な物質の非必須使用を排除するという EUの誓約と一致する。

 デュゲイは次のように付け加えている。”新たな科学的発展のおかげで、物質が危険である場合、同じ化学グループ内の「近縁物質(cousin)」も危険である可能性が非常に高いことがわかっている。 そのため、ビスフェノール類をグループとして禁止する必要がある。 これは EU が約束したことであるが、制限の初期草案では、それが適用されるのはほんの一握りのビスフェノール類のみであり、多くの免除がすでに行われている。”

編集者への注記:

 REACHの下での「非常に懸念される物質」(SVHC)のEUの公式リストは、それを使用することを決定した製造業者または輸入業者が、その物質に関する情報をカスタマーズ(一般顧客)、クライアント(ビジネス顧客)、及び公的機関に伝達する義務があることを意味するが、それはまた、代替物質に投資する市場に送られるシグナルでもある。

 プラスチック・ヨーロッパ(PlasticsEurope) は、3 回に分けて ECHA を提訴した。

  • 2019 年、プラスチック・ヨーロッパは、BPA の生殖毒性を理由に BPA を「非常に懸念される物質(SVHC)」にするという決定に異議を唱える 最初の訴訟を起こした。
  • 2019 年、プラスチック・ヨーロッパは、人間に対する内分泌かく乱作用に基づいて BPA を「非常に懸念される物質(SVHC)」にするという決定に異議を唱える 2 番目の訴訟に敗訴した。
  • 2021 年、プラスチック・ヨーロッパは、BPA を人間に対する内分泌かく乱特性に基づいて「非常に懸念される物質(SVHC)」にするという決定に異議を唱える この2 番目の訴訟に対する控訴に敗訴した。
  • 2020 年、プラスチック・ヨーロッパは、野生生物の内分泌かく乱特性に基づいて BPA を SVHC にするという決定に異議を唱える 3 番目の訴訟に敗訴した。 彼らは判決に対して控訴することを決定した。
  • 今日、彼らはこの 3 番目の訴訟に対する控訴に敗訴した。
 3 つのすべての訴訟で、クライアントアースは介入者として行動し、EU 裁判所でのプラスチック・ヨーロッパの異議申し立てに対して、フランスとドイツと共に被告 ECHA の弁護を支援した。

クライアントアースについて

 クライアントアース(ClientEarth)は、法律を利用して、住民のために、そして住民とともに地球を保護する体系的な変化を生み出す非営利団体である。 私たちは、世界中のパートナーや市民とともに、気候変動に取り組み、自然を保護し、汚染を食い止めている。 私たちは業界と政府に責任を負わせ、健全な世界に対するすべての人の権利を守る。 ヨーロッパ、アジア、米国のオフィスから、人と自然が共に繁栄できる地球の未来を築くために、法律を策定、実施、施行している。



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