欧州9健康環境団体 2022年7月25日
REACH 規則下でのビスフェノール類制限:
正しい先例を設ける

情報源:European Nine Health and Environmental Groups, 25 July 2022
Restriction of bisphenols under the REACH Regulation: setting the right precedent
https://www.env-health.org/wp-content/uploads/2022/07/
NGOs-Letter-on-bisphenols-restriction-July-2022.pdf


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2022年8月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/220725_nine_NGOs_Letter_to_
German_Federal_Ministry_on_bisphenols_restriction.html


オリバー・エバーハルト博士
ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省
ベルリン、2022年7月25日
REACH 規則下でのビスフェノール類制限:正しい先例を設ける

オリバー・エバーハルト様
 私たちは、REACH 規則の下にビスフェノール A 及び環境に同様の懸念を与える構造的に関連するビスフェノール類を制限するための今後の提案について、あなたに手紙を書いています。

 ビスフェノール類が環境に重大なリスクをもたらすことは長い間認識されてきましたが、厳格な禁止のみが効果的かつ恒久的に対処できます。したがって、私たちはあなたの取り組みに敬意を表するとともに、この非常に必要とされている提案に期待しています。

 最近の EU 全体の人間のバイオモニタリングデータも、人間の健康についての既存の懸念を示しています。 研究結果は、内分泌かく乱物質であるビスフェノール A (BPA) への人間の暴露は広範に及んでおり、代替物質ビスフェノール S 及びビスフェノール F への暴露もまたヨーロッパの全地域で増加していることを示しています[1]。 したがっ、暴露を減らすための更なる行動が待ち望まれています。

 証拠提供の照会と最近の公開プレゼンテーション[2]から理解できるように、ドイツ連邦環境庁(UBA )は保護制限の準備にすでにかなりの資源を費やしています。必要な証拠の量とレベルが高いとすれば、このプロセスは公共機関にとって非常に手間がかかり困難なものとなります。したがって、私たちはこの取り組みを励まし、支援したいと考えています。

 規制が必要であると考えられてきた BPA とそのビスフェノール代替物によって引き起こされる問題に対処するだけでなく、この制限には計り知れない可能性があります。完全かつ包括的なグループアプローチを採用すれば、そして、理想的にはもし ECHA が推奨するすべてのビスフェノール類を含めれば[3]、それは EU が最も危険な化学物質を扱扱う場合におけるひとつの重要な先例となるでしょう。もし適切に設計されていれば、最も有害な化学物質の全ての必須でない用途を段階的に廃止するという欧州委員会の公約を加速し、確認することができます。

 上記の野望のレベルに忠実であり続けるために、この制限は環境に懸念のあるすべてのビスフェノール類の用途を限定された特例をもって禁止すべきです。

 したがって、私たちは以下の必要性を検討することを要請します。
  • 物質ごとの規制を回避し、残念な代替を防ぐために関連する全てのビスフェノール類を含む広い範囲を確保する。

  • 制限の一般的なコストと利点とともにリスクの評価において製品の用途年数を超えたライフサイクル全体をカバーする。製造と廃棄の両段階でビスフェノール類の環境への排出をもたらす可能性がある[4]。それらを無視すると、制限措置の利点が人為的に過小評価される。

  • 移行する能力ではなく、製品中の存在を標的にすることにより、革新的であるが完全なビスフェノール類の用途の廃止を目指す。 BPA 及び構造的に類似したビスフェノール類は、”非閾値”化学物質であり、最も有害な化学物質のひとつつである。環境中への排出を最小限に抑えるために、必須ではない全ての用途は廃止されるべきである。

  • 本質的な用途で正当化されない限り、例外は許可されない。代替物質は多くの用途で存在することがすでに知られている[5]。代替物質の利用可能性及び産業界への潜在的な影響に関する不確実性の存在は、リスクが存在する限り、大幅な免除または保護レベルの引き下げの正当化として使用することはできない。 REACH は、特例の必要性の正当化の責任を当局ではなく企業に負わせている[6]。持続可能性のための化学物質戦略(Chemicals Strategy for Sustainability)の最近の公約によれば、特例は必須の用途である[7]という証拠を含むべきであるとしている。 企業がそのような正当な理由を提供できない場合、公的機関がその物質の用途を制限するのは当然のことである。目的の重要性は、実質的な経済的影響さえも正当化する[8]。