CHEM Trust 2018年3月27日
会社は有害な化学物質 BPA を
同様に潜在的に有害な化学物質で代替することにより
公衆の健康を危険にさらしている

By Anna Watson

情報源:CHEM Trust, March 27, 2018
Companies putting public health at risk by replacing one harmful chemical
with similar, potentially toxic, alternatives
By Anna Watson
http://www.chemtrust.org/toxicsoup/

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年5月13日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/180327_CHEM_Trust_Companies_putting_public_
health_at_risk_by_replacing_BPA_with_similar_potentially_toxic_alternatives.html


 本日、CHEM Trust により発表された新たな報告書、“From BPA to BPZ: a toxic soup? How companies switch from a known hazardous chemical to one with similar properties, and how regulators could stop them(BPA から BPZ へ:有毒スープ? 会社はどのようにして有害性が知られている化学物質を同じような特性を持つ化学物質に切り替えることができ、規制当局はどうしてそれらを止めることができなかったか)”は、産業はどのようにしてよく知られている内分泌かく乱化学物質ビスフェノールA(BPA)を、それもまた有害かもしれない非常によく似た化学物質に置き換えることが許されているのかについて、光を当てている。

The Story Behind Bisphenols
ビスフェノール物語
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 BPA は、感熱紙レシート、ポリカーボネート飲料ボトル、食品缶詰内面ライニングなどに使用されていた化学物質である。それはまた屋内ダスト中の一般的な汚染物質である。それは女性ホルモンを擬態することができることが1930年代にはじめて発見され、近年は、乳がん、精子数の減少、糖尿病と肥満への影響、及び子どもの多動症リスクの増大を含んで、潜在的な健康影響の証拠がますます多く示されている。

 欧州連合(EU)は、赤ちゃん用哺乳瓶での BPA の使用を禁止しており、感熱紙レシートでの使用を廃止しつつあるが、その他の製品中ではまだ広範に使用されている。

 20年以上前に BPA が初めて世間の注目を集めたときに、製造者らは競って製品中で使用すべき代替化学物質を見つけようとした。そして製造者らの多くは、最も容易な選択はビスフェノールS(BPS)のような、よく類似するもうひとつのビスフェノールで代替することであることを見つけた。研究者らは世界中の人々の体内にこれらの密接に関連する化学物質の多くを発見しており、彼らは、それらがまた潜在的にホルモンかく乱物質であることを見つけている。しかし規制当局は、これら類似の化学物質の使用をいまだに規制していない。

 報告書の科学的内容をレビューしたスペインのミゲル・エルナンデス・デ・エルチェ大学(UMH)栄養学准教授であるパロマ・アロンソ・マグダレーナ博士は次のように述べた。

 ”BPA ”は現在、内分泌かく乱特性を持つことがよく知られており、生殖系から代謝系まで広範な体の機能に影響を与える。多くの他のビスフェノール類が現在、類似の有害特性を持つことが見いだされていることに非常に懸念がある。BPA からこれらの化学物質に代えることは賢いことではないように見える”。

 同報告書はまた、 BPS を販売しているほとんどの会社は、それは有害ではないと主張していると強調している。これについては欧州化学物質庁(ECHA)のリスク評価委員会(RAC)ですら、 BPS は BPA と同様な”毒性学的特性”を持っており、製品中で代替のために使用されるべきではないと述べている

 CHEM Trust の実行ディレクターであるマイケル・ワーハースト博士は次のように述べた。

 ”ビジネスは、あるグループの中の問題ある化学物質から他のもうひとつの化学物質に代えようとしているので、人々と環境は有害な化学物質から適切に保護されていないことを、この報告書は示している。我々は、EU の規制当局がある時にひとつの化学物質をゆっくりと制限するのではなく、懸念ある化学物質のグループをまとめて廃止する必要があると考える。我々は人々の健康をこのような危険にさらし続けることはできない”。

 この報告書は、 BPA 及び BPS を含んで多くの化学物質が子どもの達の脳の発達を害するかもしれないという証拠をレビューした CHEM Trust の研究”No Brainer(朝飯前のこと)”の一年後に発表された。

 CHEM Trust は、3つの関連するEU機関、すなわち、欧州化学物質庁(ECHA)、欧州食品安全機関(EFSA)、そして欧州委員会の健康委員(Health Commissioner)に対して、有害な化学物質を関連する同様な特性を持つ化学物質へ代替することを防ぐために、同様な化学物質のグループの使用を制限することを要請する書簡を送った。このことの例外が適用されるのは、もし産業側が使用したいと望む化学物質が制限されようとしている化学物質と同様な特性を持っていないことを示す良いデータを持っている場合である。

 ECHA は BPS の調査を開始したが、産業側に対してはその使用を規制するのではなく、もっと多くの安全データを求めている。CHEM Trust が知る限りでは、食品容器包装中の化学物質の評価に責任がある EFSA は、 BPS 又は他のビスフェノール類の毒性を再検証していない。

 我々は、次のことを勧告する。
  1. 規制当局は、物質アプローチによりひとつの物質を取り上げるのではなく、関連する化学物質のグループを規制すべきである。
  2. 化学会社は、自身による化学物質安全性評価を改善しなくてはならない。
  3. 化学物質の川下ユーザーは、ひとつの問題ある化学物質を、同じグループ内の他の同様な化学物質で代替すべきではない。
  4. 労働者は、BPA 又は他のビスフェノール類に暴露させられているのかどうかを問い、雇用主により安全な非ビスフェノール類代替物質を採用するよう要請すべきである。
  5. 消費者は、小売業者に対してプラスチック・ボトル、感熱紙レシート、食品缶詰のような製品はビスフェノールを含んでいないかどうか問うべきである。
 我々はまた、化学物質の安全に関するEUの規制はこの問題に対処するために最良の方法であり、イギリスは EU 脱退後もこの規制体系の中に留まることを目指すよう勧告する。さらなる詳細は我々の chemicals and Brexit(化学物質と欧州連合からのイギリス脱退)のページを参照いただきたい。

 報告書 Toxic soup(有毒スープ)の全文はここから、概要はここから、入手可能である。
  • 報告書はまた、フランス語オランダ語、及びスペイン語で入手可能である。
  • 報告書は、 Chemical Watch, ENDS Report, Food Navigator.com, Product Safety News, The Ecologist, CIEL, Chemsec and Libres de Contaminantes Hormonales により紹介された。
 このタイムラインは、 BPA 及び他のビスフェノール類についての懸念が行動に結びつくまでに要した年月を示している。
Timeline of BPA

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化学物質問題市民研究会
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