BAN Media Release 2015年9月22日
マトソン社 廃船を南アジアの
”殺人海岸”に送るのを止めることに同意

環境グループは現在テキサスからインドに向けて曳航中の廃船に警告

情報源:BAN Media Release, 22 September 2015
Matson Agrees to Stop Sending its Old Ships to the "Killing Beaches" of South Asia
Environmental Groups Blow Whistle on Ship Now Being Towed from Texas to India
http://www.ban.org/2015/09/22/matson-agrees-to-stop-sending
-its-old-ships-to-the-killing-beaches-of-south-asia/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2015年10月3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/shipbreaking/
ban_150922_Matson_Agrees_to_Stop_Sending_Old_Ships.html


【2015年9月22日シアトル/ワシントン州】 環境正義団体バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)により発せられた警告の後、船会社であるマトソン社(MATX)は、インド、バングラデシュ、及びパキスタンの海岸で、将来、その船舶を解体することを禁止することに同意した。この決定は、かつてマトソン社の船で、現在インドに向けて曳航中のホライズン・トレイダー号には適用されないが、マトソン社の船団23隻が今後数年間で解体が必要となるので、このことは意義深いことである。

 一方 BAN とブリュッセルを拠点とする船舶解体に関する NGO プラットフォームは、現在のホライズン・トレイダー号の船主であるテキサス州ブラウンズビルのオールスターメタル社に、この船をブラウンズビルの船舶解体施設で適切に解体するためにアメリカに戻すよう要求している。

 インド、パキスタン、及びバングラデシュにおける船舶解体方法は危険でひどい汚染状況の下で行われている。作業者らは船を手作業で溶断するために潮の退いた砂浜で働き、有害な煙やアスベストを吸い込み、爆発や金属片倒壊/落下による事故の被害にあう。国際人権連盟(FIDH)によれば、バングラデシュの船舶解体労働者の20%は15歳以下の子どもである。つい先週、悪名高い船舶解体の海岸チッタゴンの事故で4人の労働者が死に、7月には5人の労働者が死に、二カ月以内に9人が死亡した。過去5年間には、200人以上が死亡したと報告されている。

 ”さらにアメリカの船が一隻、南アジアの殺人海岸で解体されようとしていることは大変残念なことであるが、マトソン社が将来の船舶リサイクルの契約について重要な約束したことは評価できる”と BAN のグリーンな船舶リサイクル・ディレクターであるコルビー・セルフは述べた。”今日、船主は知らなかったと言い逃れすることはできない。彼らは、彼らの船舶リサイクルの決定が及ぼす環境的及び人の健康への影響をよく知っているが、そのことは利益を最大にするために非常に長い間無視されてきた。マトソン社の海岸で行わないとする約束は、会社のリーダシップのレベルを反映しており、我々はそのことが他のアメリカの船会社により反映されることを期待している”。

 造船後42年の旗艦貨物船ホライズン・トレイダー号は、マトソン社が昨年後半にホライズン海運を買収したときに、マトソン社の所有となった。その時に同船を解体するという決定がなされ、2015年1月にテキサス州ブラウンズビルのオールスターメタル社に同社の船舶解体施設で引き渡された。

 しかし、地域の雇用を創成しつつアメリカの環境健康及び安全に関する法律に従ってそこで解体するということはなされずに、ホライズン・トレイダー号は船名を隠すために船体の船名をペンキで塗られ、ブラウンズビル港を曳航されていくのを9月2日に目撃され撮影された。連邦海事局(MARAD)と米環境保護庁(EPA)は BAN に対し、ホライズン・トレイダー号はインドの船舶解体現場に輸出することを認められているとことを確認した。同船は現在カリブ海を曳航されている。BAN は、ホライズン海運のホライズン・トレイダー号売却の合意書を入手したが、それは買主は同船をアメリカ国内でリサイクルする責任があると規定していた。

 そこで BAN は、マトソン社に知らせ、同船を呼び戻すよう要請したが、同社はもはや同船を呼び戻す権限はないと主張し、次のような声明を発表した。

 ”南アジアでの船舶リサイクルの実施方法に懸念があるので、マトソン社は今後、この地域で所有する船舶のリサイクルをはっきりと禁止することを決定した。”

 同声明は、船主の増大する懸念を反映するものである。ヨーロッパではノルウェーの船主協会と加盟160社が最近、ノルウェー船籍の船舶が南アジアの海岸で解体されることを禁止することを採択した。この動きは、ドイツのハパックロイド社、デンマークのマースク海運、オランダのロイヤル・ダッチ・ボスカリス、カナダの CSL グループ、及びシンガポールのチャイナ・ナビゲーション社、及びノルウェーの船主グリーグ、ウィルヘルムセン、及びホエを含む”海岸を離れる(off-the-beach)”船舶解体政策を採択した外国の大きな船主らに続くものである。

 アメリカ政府も同様に、アメリカの船は海岸を離れて(off the beaches)、国内でリサイクルすることを求める政策を長年保持している。このことは、皮肉なことに、アメリカ政府は民間の船主が外国の船舶解体海岸で処分するために合法的に船籍を変更することを許していることと対照的である。

 ”アメリカの法によれば輸出は合法的であるかもしれないが、それは汚染とアメリカの雇用を外部に委託するものだ”とセルフは述べた。”それは極めて無責任なことである。我々は、アメリカの船舶リサイクル会社としてグリーンな船舶リサイクル業者と称するオールスターメタル社に対して、適切なリサイクルを行うために、ホライズン・トレイダー号をテキサスに戻すことを要請する”。



化学物質問題市民研究会
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