NGO 船舶解体プラットフォーム
2021年12月1日 プレスリリース
EU が同意:船舶のリサイクルは
世界の環境正義の問題である


情報源:NGO Shipbreaking Platform, December 1st, 2021
Press Release
The EU agrees: the recycling of ships is a matter of global environmental justice
https://shipbreakingplatform.org/eu-agrees-shiprecycling-is-
a-matter-of-global-environmental-justice/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年12月6日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/shipbreaking/
NGO_Platform_211201_Press_Release_The_EU_agrees_the_recycling_of_
ships_is_a_matter_of_the_global_environmental_justice.html


発展途上国への有害船の輸出に対するバーゼル条約の”禁止”(Basel Ban)が再確立された

 欧州委員会は先週発表された廃棄物輸送に関する新しい規制の提案(訳注1)で、香港条約との以前の良好な関係を拒否し、南の発展途上国(グローバルサウス)がたとえ廃棄物が船であっても有害廃棄物の世界のゴミ捨て場になるべきではないというバーゼル条約の主張に戻ることで、多くのオブザーバーを驚かせた。

 2013年に、EU 籍船は、香港条約に従うことを支持して、バーゼル条約を無視することを目的とした EU 船舶リサイクル規則(訳注2)により、廃棄物輸送規則の範囲から除外さた。現在まで、国際海事機関の支援の下で 2009 年に作成された香港条約(訳注3)は、まだ発効していない。一方、開発途上国を搾取から保護することを目的として設計されたバーゼル条約の”バーゼル禁止(Basel Ban)”は、2019年12月5日に新しいバーゼル条約 条項 4A(訳注4)として発効した。

 EU廃棄物輸送規則の提案では、EU の管轄下にある間に廃棄を意図された EU 籍船舶は、EU 廃棄物法から免除されなくなり、条項 4A(訳注4)を遵守する必要があると規定されている。これにより、どの様な理由であっても、どの様なな形態であっても OECD から非 OECD 諸国に有害廃棄物を輸出することは違法になる。 2020年9月に発行された報告書で、NGOs の欧州環境局(EEB)、バーゼル行動ネットワーク(BAN)、グリーンピース、及び NGO 船舶解体プラットフォームは、国際環境法センター(CIEL)による法的分析に支えられて、EU に対し、バーゼル禁止(Basel Ban)を含んでバーゼル条約の下での国際的な法的公約を尊重するために EU の法律を再調整するよう求めていた。


ジム・パケット
バーゼルアクションネットワーク(BAN)代表

 ”EU がバーゼル禁止の法的有効性を復活させ、船舶リサイクル規制が国際廃棄物法から何らかの形で逃れることができるふりをすることができなくなったことに気づいたことは、地球環境の正義と統治にとって大きな勝利である。EU の提案は現在、明確な使命を反映している。すなわち廃棄物輸送規則と船舶リサイクル規則の両方を同時に廃船に適用しなければならないということである。”


 しかし残念ながら、これは重要なシグナルと見なされているにもかかわらず、EU 船籍の船を含め、世界の船隊がリサイクルを宣言された後に EU 港に停泊することはほとんどない。船主が非 OECD 諸国の港や公海において、重大なスクラップの発表を待つということは非常に簡単であり、したがって合法的に”バーゼル禁止”を回避することができる。香港条約は船籍国を統治しているが、船籍は簡単に変更できる。さらに、香港条約には、南の発展途上国が世界で最も危険でリサイクルが困難な廃棄物により不釣り合いに負担させられるのを防ぐための貿易制限があるはずである。

 一方、インド、バングラデシュ、パキスタンの悪名高い船舶解体ビーチで解体された船舶の総トン数の 30%は、人の健康と環境に悪影響を及ぼしており、EU に本拠を置く海運会社が所有している。したがって、NGOs は、港湾国や旗国だけでなく、船主の本籍国によっても定義される輸出を法的に管轄する法改正を求めている。


イングビルド・ジェンセン
NGO 船舶解体プラットフォーム 創設者/代表

 ”これらのヨーロッパの船を廃棄する決定は、ハンブルク、アテネ、アントワープ、コペンハーゲン、その他の EU の輸送ハブのオフィスで行われる。これらの船は、世界のどこにあるか、どの旗を掲げているかに関係なく、これらの EUb輸送ハブが真の輸出国である。明らかに、これらの所有者が有害なな廃棄物の投棄を防ぐためにバーゼル条約の意図を回避し続けることを防ぐために、新たな努力がなされなければならない。”


 環境および人権団体によると、終末期の船舶の適切な管理について海運会社に責任を負わせる方法に関する新しい考え方は、新たなヨーロッパの政策と一致している。欧州グリーンディールは、EU に対し、二次材料の堅固でダイナミックな市場を構築することにより、EU 自身の廃棄物を管理し、循環型経済を促進すること、及び弱い経済国への輸出による露骨なコストの外部化を回避することを求めている。


ステファン・アルディーティ
欧州環境局(EEB)政策統合及び循環型経済担当ディレクター

 ”我々は今、不法投棄の抜け穴を塞ぎ、E U市場の可能性を解き放ち、責任を持って環境に配慮したクリーンな船のリサイクルを実現すると同時に、EU の鉄鋼製造業界にスクラップ鋼の入手可能性を高め、エネルギー集約型の一次生産を回避し炭素フットプリントを低減する絶好の機会を手にしている。”


訳注1
訳注2
訳注3
訳注4
  • BASEL CONVENTION, TEXTS AND ANNEXES, REVISED IN 2019
    ARTICLE 4A
    General Obligations3
    1. Each Party listed in Annex VII shall prohibit all transboundary movements of hazardous wastes which are destined for operations according to Annex IV A to States not listed in Annex VII.
    2. Each Party listed in Annex VII shall phase out by 31 December 1997, and prohibit as of that date, all transboundary movements of hazardous wastes under Article 1(1)(a) of the Convention which are destined for operations according to Annex IV B to States not listed in Annex VII. Such transboundary movement shall not be prohibited unless the wastes in question are characterized as hazardous under the Convention.

    3 The Conference of the Parties adopted Decision III/1 at its third meeting to amend the Convention by adding, inter alia, a new Article 4A. This amendment entered into force on 5 December 2019 (depositary notification C.N.420.2019). For information on the status of individual Parties in relation to the amendment/s, please see the Status of Ratifications page on the Basel Convention website.


化学物質問題市民研究会
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