NGO 船舶解体プラットフォーム
2020年4月29日 プレスリリース
NGOs はバングラデシュ当局にインドネシアから不法に出港した
非常に有害な物質で汚染されたオフショア設備の輸入を止めるよう強く要請


情報源:NGO Shipbreaking Platform, April 29th, 2020
Press Release
NGOs urge Bangladesh authorities to halt the import of
a highly toxic offshore unit that illegally departed from Indonesia
https://www.shipbreakingplatform.org/fso-jesslyn-natuna/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2020年6月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/shipbreaking/NGO_Platform_200429_Press_Release_
NGOs_urge_Bangladesh_authorities_to_halt_the_import_of_a_highly_toxic_offshore_unit.html


 浮体式石油貯蔵積出設備(FSO)タンカー J. NAT は現在、悪名高いバングラデシュのチャトグラムの船舶解体海岸に向けて曳航されている。この船は、以前はジェスリン・ナトゥナ(JESSLYN NATUNA) と呼ばれ、ナトゥナ・ガス田で操業しており、インドネシアの会社、グローバル・ニアガ・ベルサマ PT が所有していた。最近、キャッシュ・バイヤーのソマップ・インターナショナルに売却され、J. NAT に名前が変更され、パラオ(共和国)に船籍となった。 ソマップは、寿命の尽きた船舶(廃船)を購入して、海岸で解体することに特化した会社である。

 FSO J. NATは、地元の活動家がインドネシアの当局に船舶の有害性について警告したにもかかわらず、4月18日にインドネシア海域を離れた。公式文書によると、タンカーには 1000トンの廃油、500トンの油水、60トンのスラッジ油を含む、船上の油抽出プロセスからの 1500トンを超える危険廃棄物が船内にある。プラットフォームと共有された汚泥サンプルの実験結果は、395 mg/kgの水銀レベルを示してる。 J. NATには、構造物やバラスト水にも大量の水銀が含まれている可能性がある。

 NGO 船舶解体プラットフォーム、バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)、欧州環境局(EEB)、IPEN、ネクサス 3 財団、及びゼロ・マーキュリー・グループが、バングラデシュに国際廃棄物法違反[1]を警告し、当局に汚染された船舶の輸入の中止を要請した。違法行為を無視すると、労働者を深刻な危害にさらし、バングラデシュの環境を汚染するリスクがある。


”通常の船舶に典型的に見られる危険な物質に加えて、J. NAT などの石油およびガス施設の構造体は、しばしば水銀で汚染されている。水銀は、事実上すべての油田及びガス田に存在する自然発生の元素である。濃度は特に南米と東アジア地域で高い”。
 イングビル・ジェンセン−NGO Shipbreaking Platform 代表/創設者
 FSO J. NATの鋼鉄製船体に高濃度の水銀が存在する可能性と、船舶の切断に使用されるガス溶断(ブロートーチ)法を考えると、水銀蒸気の吸入のリスクが高い。 水銀は非常に有毒な金属である。 水銀への曝露は、たとえ低レベルであっても、中枢神経系の損傷、腎臓及び肝臓の障害、生殖及び発達障害、胎児の欠陥、学習障害に関連している。

 別の石油及びガスユニットであるマースクの FPSO NORTH SEA PRODUCER(北海の生産者)の違法輸入に関する最近の裁判所の判決で、バングラデシュ最高裁判所は、船舶は実際には放射性物質で汚染されていたが無害であったと主張する詐欺文書を非難した。 裁判所は、バングラデシュに輸入される廃船に搭載されている危険物について完全な透明性を要求した。


 ”「北海の生産者」に対する最近の判決に照らして、J. NAT の輸入、浜への乗り上げ、及び解体の許可を与える余地はない。バングラデシュが有害廃棄物を処理することができないことは広く知られていることである。有害物質で海岸をあふれさせ、労働者を致命的なリスクにさらすだけである”。
 シェダ・リズワナ・ハサン−最高裁判所弁護士およびバングラデシュ環境弁護士協会理事

 プラットフォームは、近年廃棄された掘削船、海洋浮桟橋、自動昇降ユニット、浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO / FSO)を文書化している。 多くが解体のために南アジアで浜に乗り上げたが、それらにはダイヤモンド・オフショア、マースク、オーデブレヒト、SAIPEM、SBM オフショア・トランスオーシャン(オランダ)が所有するユニットが含まれる。 J. NAT のケースは、オランダのテレビ・ドキュメンタリー番組 Zembla によって調査され、放映されたた SBM 社の水銀で汚染されたタンカー YETAGUN のインドネシアからアランのビーチへの最近の輸出に似ている。(訳注1:ビデオ

 ”今後数年間で多くのユニットが廃止されることになるため、石油及びガス業界は、浮遊ユニットのリサイクルのための持続可能な解決策を共同で模索する必要がある。直接または間接的に、石油及びガスのサプライチェーンに関与するすべての関係者は、 途上国の労働者と環境に害を及ぼさないようにする責任がある”。
 イングビル・ジェンセン−NGO Shipbreaking Platform 代表/創設者

原注
[1]バングラデシュとインドネシアはどちらも、有害廃棄物の越境移動の規制とその処分に関するバーゼル条約に署名している。この条約の下では、FSO J. NATの構造物内に含まれている可能性が高い水銀および他のいくつかの有害廃棄物の取引は厳格に管理されている。船舶の輸入には、インドネシア当局とバングラデシュ当局との間の事前の情報に基づく合意(PIC)が必要であり、船上に残された危険物の申告が実際の状況を反映している必要があります。さらに、条約は、材料に適用されるリサイクルまたは廃棄物管理施設が条約に基づく環境的に健全な管理を構成しないと信じる理由がある場合は、輸出を行わないことを要求している。チャトグラムの海浜で行われる船舶解体作業は危険で汚染されていることがよく知られている。  インドネシアは水俣条約の締約国であるが、バングラデシュは条約を批准していな。石油およびガス部門は、排出管理の観点から国際協定から除外されているが、各国は、自分たちの領土内での水銀排出および放出の潜在的な発生源を特定する必要がある。高水銀源が特定された場合、対策を講じる必要がある。

更新:この記事は 2020年5月1日に更新され、プラットフォームと共有されたラボの結果に従って、FSO J. NAT の汚泥における水銀汚染のレベルを特定した。


訳注1
 Toxic tanker demolished on Indian beach
 オランダの SBM 社の水銀で汚染されたタンカー YETAGUN のインドネシアからインドのアラン海岸への輸出及び危険な解体を調査・報道したランダのテレビ・ドキュメンタリー番組 Zembla ビデオ(必見!)


化学物質問題市民研究会
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