EUobserver 2021年4月22日
中国の輸入禁止後、ルーマニアは
非合法な廃棄物輸入に見舞われる

クリスチャン・ゲラシム
情報源:EUobserver 22 April 2021
After China ban, Romania hit
by illegal waste imports
By CRISTIAN GHERASIM
https://euobserver.com/news/151622

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載日:2021年5月3日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/news/210422_EUobserver_
After_China_ban_Romania_hit_by_illegal_waste_imports.html



 欧州連合で廃棄物リサイクル率が 2番目に低いルーマニアは、廃棄物とゴミで溢れており−そのほとんどは海外から違法に持ち込まれたものである。

 今週、ルーマニア西部のビホル郡の会社の庭で、イタリアからの 189トンの廃棄物が発見された。国の環境警備隊は、廃棄物を輸入する人々にはそれをリサイクルする施設がなく、おそらく違法な埋め立て地になってしまうだろうと結論付けた。

 ルーマニアの沿岸警備隊は、さまざまな EU加盟国からルーマニアの黒海のコンスタンツァ港に輸送された使用できない廃棄物が積み込まれたいくつかのコンテナを押収した。

 ポルトガルからの廃棄物の貨物は偽ってプラスチックくずであると税関に申告されたが、それらは使用できず、有害な廃棄物であると検察官は結論付けた。

 一方、さらに 25トンのゴム廃棄物が英国から同じルーマニアの港に運ばれ、税関警察に押収された。

 また、ベルギーからルーマニアに持ち込まれた違法廃棄物の入った別の 70個のコンテナが、黒海沿岸にある他のいくつかのルーマニアの港で確認された。

 繰り返しになるが、貨物は使用済みプラスチック廃棄物として税関に偽って申告された。警察の報告によると、貨物にはプラスチック廃棄物が含まれているとの文書があるにもかかわらず、実際には木材、金属廃棄物、危険物が含まれていた。

 コンテナはドイツで積み込まれ、貨物はベルギーの会社からのものであった。

 そして、その1週間前に、コンスタンツァの元港湾税関長は、英国からルーマニアに出荷された100を超える廃棄物のコンテナの密輸を許可したという申し立てで裁判にかけられた。

 そして、これらはすべて1か月足らずのうちに起こった。

 ルーマニアの廃棄物と違法な輸入に関する問題は、特に世界の主要な廃棄物輸入国である中国がプラスチック禁止を実施した後、過去1年半にわたって大幅に増加し、ますます世間の厳しい目にさらされるようになった。

 水曜日(4月21日)、ルーマニアの環境大臣である タンツォシ・バルナは、これらの活動は組織犯罪によって行われており、州当局は輸送文書が実際に積み込まれているものを反映しているかを確認するために、入国するすべての貨物を検査する必要があることを公に宣言した。

 バルナはまた、ルーマニアには廃棄物の選択的処分と環境的に適切な保管のための組織化されたシステムがなく、同時に、しかし逆説的に、ルーマニアの不十分な廃棄物管理のために、国内のリサイクル事業は十分な廃棄物を受け取っていないことを認めた。

 輸入廃棄物に頼っているのはこれらの企業である。

氷山の一角

 しかし、ルーマニアに到着したもののほんの一部が実際に利用可能な廃棄物であり、残りのほとんどはリサイクル不可能または有害な物質であり、違法に輸入されている。

 中古製品の輸入という名目で、ますます多くの企業が大量の廃棄電子機器、プラスチック、医療廃棄物、さらには有害物質をルーマニアに輸入している。このゴミはすべて野に埋められたり、あるいは単純に燃やされたりする。

 ”実際には使用できない廃棄物であることが判明しているいわゆる「中古品」を特定して阻止するために、全国的な廃棄物追跡システムが必要である。コンスタンツァ港やルーマニアの西側の国境を越えて入るのは氷山の一角に過ぎないと私たちは確信している”と持続可能な政策環境都市(エコポリス)センターの所長であるオアナ・ネネシウは EUobserver に語った。

 違法な廃棄物の輸入は、組織犯罪を助長するだけでなく、私たちが呼吸する空気そのものを汚染する。

 廃棄物のほとんどは、リサイクルセンターではなく、違法なゴミ捨て場に捨てられるため、通常、ゴミは燃やされ、有毒な煙や微粒子状物質が大気中に放出される。

 そのような違法な燃焼は、ルーマニアの首都をそのような煙に頻繁に巻き込み、ヨーロッパで最も汚染された都市のひとつつにしている。

 ブカレストは、許容される閾値を1,000パーセント以上超える粒子状物質汚染の事例を記録している。

 そしてブリュッセル(EU 当局)は、大気汚染と違法な埋め立て地をめぐってルーマニアを繰り返し指弾してきた。首都ブカレストだけでなく、ブラショフ、ヤシ、クルージュナポカ、ティミショアラなどの都市でも、過度の大気汚染に対する法的措置を開始した。

 欧州司法裁判所は昨年、特にブカレストの高い汚染レベルを理由にルーマニアを糾弾する判決を下した。


訳注1:関連情報