オーストラリア環境・自然環境遺産省
使用済み電子機器の輸出入基準

情報源:Australian Government
Department of the Environment and Heritage
Criteria for the export and import of used electronic equipment

http://www.environment.gov.au/settlements/publications/chemicals/
hazardous-waste/electronic-paper.html


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年3月6日
更新日:2009年6月18日 (訳注
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/basel/e_waste/Australia_Used_Electronic_Equipment.html


はじめに

 輸出または輸入しようとする使用済み電子機器はオーストラリアの有害廃棄物(輸出入規制)法1989年(以後同法)の下で有害廃棄物とみなされるかもしれない。
 もしあなたが使用済み電子機器の輸出または輸入、または輸出のための販売を意図しているなら、この文書全体を読む必要がある。法的脈絡を単純にするためにこの文書は使用済み電子機器が有害廃棄物であるかないかを決定するための基本的な6つの質問を用意している。これらの質問は表とフローチャートで描かれている。有害廃棄物を同法に基づく認可なしに輸出または輸入すると、輸入者、輸出者またはアーストラリアの供給者は罰金または懲役刑を含む厳しい罰則を課せられるかもしれない。

 どのように認可申請をするかに関する情報”有害廃棄物の輸出入についてのオーストラリアの指針:認可申請”は、下記ウェブサイトで入手可能である。
http://www.environment.gov.au/settlements/chemicals/

オーストラリアの有害廃棄物(輸出入規制)法1989年

 同法の目的は、オーストラリアの国内外で人と環境が廃棄物の有害影響から保護されるよう輸出、輸入、または通過する廃棄物が環境的に適切な方法で管理されることを確保するために、有害廃棄物の輸出、輸入、及び通過を規制することにある。
 有害廃棄物はバーゼル条約及びその他の国際条約でリストされている廃棄物である。
 廃棄物は、リサイクリングまたは最終的処分によって処分されることとなる物質または対象である。
 同法は下記を含む有害廃棄物の輸出と輸入を規制する。
  • 蓄電池やその他のバッテリー、水銀スイッチ、ブラウン管テレビ(CRT)のガラス及びその他の活性ガラス、PCBコンデンサー等の部品を含む、または有害特性を有する程度にカドミウム、水銀、鉛、またはPCBなどで汚染された廃棄電気・電子アッセンブリーまたはスクラップ
 同法は下記を含む非有害廃棄物を規制しない。
  • 金属または合金だけからなる電子アッセンブリー
  • 蓄電池やその他のバッテリー、水銀スイッチ、CRTのガラス及びその他の活性ガラス、PCBコンデンサー等の部品を含まず、または有害特性を有する程度にカドミウム、水銀、鉛、またはPCBなどで汚染されていない廃棄電気・電子アッセンブリーまたはスクラップ(電子回路基板を含む)

 同法は下記を含むどのような廃棄物をも含まない物質の輸出または輸入を規制しない。
  • 直接的再使用のためのものであり、リサイクリングまたは最終処分のためもものではない電気・電子アッセンブリー(電子回路基板、電子部品、及び電線)。(再使用は修理、改装、アップグレードを含むが、抜本的な再組み立ては含まない)
 同法はまた、ひとつのOECD国から他のOECD国に回収のために送られる場合には下記の廃棄物を規制しない。同法は通常、非OECD国への輸出または非OECD国からの輸入の場合、または最終処分の場合、この廃棄物を規制するということに留意する必要がある。OECD諸国のリストは下記ウェブサイトから入手できる。
http://www.oecd.org/
  • 電子スクラップ(例えば電子回路基板、電子部品、電線など)及び貴金属回収のための電子部品

輸出しようとする使用済み電子機が有害廃棄物かどうかを決定する方法
 下記表またはフローチャート(訳注:省略)を付属AとBとともに使用すると輸出しようとする使用済み電子機が有害廃棄物かどうかを決定するのに役立つ。
質問 回答 アクション
Q1 機器は付属 A で定義されるように潜在的に危険か? Yes Q2へ
No 機器は有害廃棄物ではなく認可なしに輸出してもよい
Q2 当該機器が廃棄物ではないとする証拠書類を大臣は発行したか? Yes 廃棄物ではないと認められた機器は認可なしに輸出してもよい
No Q3へ
Q3 機器または部品は同法で定義されるリサイクリングを含む処分のためのものか? Yes 機器は有害廃棄物であり認可なしに輸出できない
No Q4へ
Q4 機器は付属 B にしたがってテストされたか? Yes Q5へ
No テストされていない機器は有害廃棄物と定義され認可なしには輸出できない
Q5 付属 B によるテスト結果は機器を廃棄物、有害廃棄物と定義したか? Yes 有害廃棄物と定義された機器は認可なしに輸出できない
No Q6へ
Q6 テスト結果は文書化され付属 B にしたがって表示されているか? Yes テスト後、有害廃棄物ではないと文書化された機器は認可なしに輸出してもよい
No テスト結果が文書化されていない有害廃棄物と定義され、認可なしに輸出できない

付属 A
有害成分

 ほとんどの使用済み電気機器は有害要素を含んでいる(下記参照)。したがってこれらの廃棄物は下記のいずれも含んでいないことが示されない限り、有害廃棄物であるとみなされる。
  • ブラウン管テレビ(CRT)及び光学レンズの鉛含有ガラスで、バーゼル条約 付属 VIII A1180 または A2010 に規定される(陰極線管その他の活性化ガラスから生ずるガラスのくず)。この廃棄物はまた、付属 I のカテゴリー Y31(鉛、鉛化合物)に属し、有害特性 H6.1、 H11、 H12 及び H13 を有するように見える。
    訳注:バーゼル条約付属 VIII A1180
     電気部品及び電子部品の廃棄物又はそのくずで、A表に掲げる蓄電池その他の電池、水銀スイッチ、陰極線管その他の活性化ガラス及びPCBコンデンサーを構成物として含む物又は 付属Vに掲げる特性のいずれかを有する程度に 付属Tの成分(例えばカドミウム、水銀、鉛、ポリ塩化ビフェニル)により汚染されているもの

    バーゼル条約付属 VIII A2010
    陰極線管その他の活性化ガラスから生ずるガラスのくず

    H6.1 毒性(急性)
    えん下し、吸入し又は皮膚接触した場合に、死若しくは重大な傷害を引き起こし又は人の健康を害しやすい物質又は廃棄物
    H11 毒性(遅発性又は慢性)
    吸入し若しくは摂取し又は皮膚に浸透した場合に、発がん性を含む遅発性又は慢性の影響を及ぼすことのある物質又は廃棄物
    H12 生態毒性
    放出された場合に、生物濃縮により又は生物系に対する毒性作用により、環境に対し即時又は遅発性の悪影響を及ぼし又は及ぼすおそれのある物質又は廃棄物 H13 処分の後、何らかの方法により、この表に掲げる特性を有する他の物(例えば、浸出液)を生成することが可能な物

  • ニッケル−カドミウム電池で、付属 VIII A1170 に属する(分別されていない電池の廃棄物)。この廃棄物はまた、付属 I のカテゴリー Y26(カドミウム、カドミウム化合物)に属し、有害特性H6.1、 H11、 H12 及び H13 を有するらしい。

  • セレン・ドラムで付属 VIII A1020 に規定される(セレン、セレン化合物)。この廃棄物はまた、付属 I のカテゴリー Y25(セレン、セレン化合物)に属し、有害特性H6.1、 H11、 H12 及び H13 を有するように見える。

    訳注:A1020
    次のいずれかを成分又は汚染物質として含む廃棄物(塊状の金属のものを除く。)
    アンチモン、アンチモン化合物
    ベリリウム、ベリリウム化合物
    カドミウム、カドミウム化合物
    鉛、鉛化合物
    セレン、セレン化合物
    テルル、テルル化合物

  • 電子回路基板で付属 VIII A1180 (・・・電気部品及び電子部品の廃棄物又はそのくず・・・)、及びA1020(ベリリウム、ベリリウム化合物)で規定される。これらのアッセンブリーは難燃剤としての臭素化合物及び酸化アンチモン、銅合金コネクター中のベリリウムや半田中の鉛を含む。これらはまた、付属 I のカテゴリー Y27(アンチモニー及びアンチモニー化合物)、及びY45(この附属書(例えば、Y39及びY41からY44まで)に掲げる物質以外の有機ハロゲン化合物)に属し、有害特性H6.1、 H11、 H12 及び H13 を有するように見える。

  • 水銀を含む蛍光灯及び液晶画面(LCD)用バックライトランプは、付属 VIII A1030 (水銀、水銀化合物)に規定される。この廃棄物はまた、付属 Iのカテゴリー Y29(水銀、水銀化合物)に属し、有害特性H6.1、 H11、 H12 及び H13 の特性を有するらしい。
    訳注:A1030
    次のいずれかを成分又は汚染物質として含む廃棄物
    砒素、砒素化合物
    水銀、水銀化合物
    タリウム、タリウム化合物

  • 臭素化難燃剤(BFRs)を含むプラスチック構成部品は、付属 VIII A3180 に規定される。
    A3180
    ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ポリ塩化テルフェニル(PCT)、ポリ塩化ナフタレン(PCN)又はポリ臭化ビフェニル(PBB)若しくはこれらの化合物に類似のポリ臭化化合物を含み、これらから成り又はこれらにより汚染された廃棄物質及び廃棄物品で、濃度が1キログラムにつき50ミリグラム以上のもの

    この廃棄物はまた、付属 Iのカテゴリー Y45()この附属書(例えば、Y39及びY41からY44まで)に掲げる物質以外の有機ハロゲン化合物)及びカテゴリーY27(アンチモン、アンチモン化合物)に属し、有害特性H6.1、 H11、 H12 及び H13 の特性を有するように見える。

付属 B
故障した電子機器は廃棄物

電子機器は、下記のいずれかに該当する場合には廃棄物として定義される。

  1. 機能に影響を与える部品の欠陥、例えば下記に不具合がある。
    1. 電源導入不具合
    2. BIOS機能、または内部設定機能、自己診断機能の不具合
    3. マザーボードの機能不具合
    4. 上位との通信機能不具合
    5. プリント/スキャン/コピーのテスト印刷、またはテスト印刷が特定できない、読めない、かすんでいる、ラインが入っている、または
    6. 読み込み/書き込み/または記録の不具合
  2. 関連する基準で定義される機能または安全性を損なう物理的なダメージ。 物理的ダメージには下記を含むがそれに限らない。
    1. 画面に焼付け跡がある、破損している、ひどい引っかき傷、または傷跡がある、または画面表示品質が劣る、または
    2. 信号ケーブルが切れているまたはケースを開けないと容易には取り替えることができない
  3. ハードディスクまたはメモリー(RAM)の欠陥、及びビデオカードの欠陥
  4. 鉛、水銀またはカドミウムで作られた電池、または電源を維持するために充電することができない有害な液体電極を含む電池、または
  5. 輸送中、船積み、船降し中のダメージを防ぐのに不十分な包装容器
 更なる情報はフリーコール1800 803 772で環境・自然環境遺産省に連絡するか下記ウェブサイトをご覧ください。
http://www.environment.gov.au/settlements/chemicals/


訳注
 オーストラリアはこの様な使用済み電子機器の輸出入基準を設けている”先進国”であるが、2009年6月現在、国内の使用済み電子機器のリサイクルシステムはなく、埋め立てを行っているようである。
ABC Online, 18 June 2009
Councils give up on e-waste collections
http://www.abc.net.au/news/stories/2009/06/18/2601549.htm?site=news



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